目次
はじめに
心不全患者は高齢化とともに増加しており、65歳以上の29.1%が心不全を有している可能性があると言われています[1]。
心不全の中でも駆出率維持型心不全(HFpEF)は高齢化とともに増加しており、約半数はHFpEFという報告があります[2]。
駆出率が低下した心不全(HErEF)は心筋障害を主要因とした病態であるのに対し、HFpEFは肥満、糖尿病、高血圧など炎症を誘発する要因が背景にあり、炎症により血管内皮障害や心筋の線維化などが生じて拡張不全となることが考えられています[3]。
心不全患者の運動耐容能に対する介入は様々な方法が検討されていますが、HFpEF患者の運動耐容能に対する有効な介入方法についてはまだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「HFpEF患者に有効な運動方法は?」という疑問に応えてくれる論文です[4]。
研究概要
2021年にギリシャのBoulmpouらの研究チームは、2020年12月までに登録されている11本の論文を解析しています。
介入期間:4週間~4か月
介入内容:有酸素運動、吸気筋トレーニング、複合運動、レジスタンストレーニング、高強度インターバルトレーニング
結果
効果が認められた運動方法
peakVO2 | 6分間歩行試験 | 健康関連QOL(MLHFQ) |
有酸素運動(WMD:2.14 ml/kg/min)
吸気筋トレーニング(WMD:2.46 ml/kg/min) 複合運動(WMD:2.27 ml/kg/min) 高強度インターバルトレーニング(WMD:1.62 ml/kg/min) |
有酸素運動(31.27m)
吸気筋トレーニング(WMD:2.46 ml/kg/min) 複合運動(6.67m) 高強度インターバルトレーニング(40.61m) |
吸気筋トレーニング(-11.26) |
ただし、研究数が少ないため、更なる調査が必要と述べられています。
まとめ
HFpEF患者の運動耐容能に対しては、どの運動方法でも効果が望めそうですね。
一方健康関連QOLに対しては、一部の運動しか効果が認められていないので、QOLに対しては運動以外の介入方法を検討する必要があるかもしれません。
参考文献
[1] Shimokawa, et al. Eur J Heart Fail. 2015 Sep;17(9):884-92.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26222508/
[2] Upadhya, et al. Circ Heart Fail. 2021 Nov 26;CIRCHEARTFAILURE121008322.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34823375/
[3] Paulus, et al. J Am Coll Cardiol. 2013 Jul 23;62(4):263-71.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23684677/
[4] Boulmpou, et al. Hellenic J Cardiol. 2021 Nov 30;S1109-9666(21)00184-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34861401/