はじめに
慢性腰痛は世界的に中高年者に多く発症しており、機能障害、生活の質の低下、社会的コストの増加など、様々な問題を生じます(1)。[no_toc]
特に60歳以上の高齢者では慢性腰痛の発症率が21~75%と多いことが報告されており(2)、今後世界的に高齢化が進んでいく中で、慢性腰痛は高齢者の生活に影響する可能性があります。
しかし、高齢者の慢性腰痛について調査された報告はまだ少なく、関連因子についても明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「高齢者の慢性腰痛に関連する因子は?」という疑問に応えてくれる論文です(3)。
研究概要
2021年に香港のWongらの研究チームは、2020年11月までに登録されている10本の論文を解析しています。
結果
対象
フランス、日本、ノルウェー、スペイン、タイ、アメリカと複数の国に分布していた。
慢性腰痛の定義は「6か月以上痛みが持続する」とする報告と「12か月以上痛みが持続する」としている報告が混在していた。
慢性腰痛の評価方法については、質問紙を用いたものが一般的であった。
有病率
全体の慢性腰痛の有病率は20.6%~36.1%だった。
慢性腰痛の関連因子
リスク増加 | リスク減少 |
自己認識の健康状態の悪さ BMI>30 不安 抑うつ 精神障害 喫煙 広汎性疼痛症候群 下肢痛の有無 下肢痛の強さ 機能に対する痛みの影響の大きさ 鎮痛剤の使用 回復に対する自己期待の低さ 女性 健康上の理由による退職または障害 変形性膝関節症 重度の椎間関節の変形 COPD Quan Comorbidity Indexのスコアが高い 20年以上運転する職業に就いている 10年以上曲げたりねじったりする職業に就いている |
中程度(1~3メッツ/日)の余暇時間の身体活動 |
ただし、調査方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要と述べられています。
まとめ
高齢者の慢性腰痛は活動量を減少させる危険因子にもなるので、フレイルや介護予防の観点からも重要な課題だと思います。
対象者の方が慢性腰痛の危険因子を有しているかを評価し、介入することは、フレイルや介護予防に有用な可能性があるかもしれません。
参考文献
(1) Hoy, et al. Arthritis Rheum. 2012 Jun;64(6):2028-37. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22231424/
(2) Souza, et al. Clinics (Sao Paulo). 2019 Oct 28;74:e789. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31664424/
(3) Wong, et al. J Pain. 2021 Aug 24;S1526-5900(21)00316-3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34450274/