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冠動脈疾患患者への心理学的介入は有効なの?

はじめに

冠動脈疾患は高齢者の30%が罹患していると言われており、うつ病などの精神心理的因子が関連しています[1]。
不安感や抑うつなどネガティブな感情は交感神経活動を活性化させ、アドレナリンや副腎皮質ホルモンの分泌が増加し、心拍数の上昇や不整脈を誘発させます。
アドレナリンが過剰に分泌されると、血管収縮、血圧上昇、心筋の酸素消費量の増加などを引き起こし、狭心症や心筋梗塞を誘発するリスクが高くなります。
冠動脈疾患患者さんに対して、心理学的介入が有効である可能性が考えられていますが、先行研究では研究間のバラつきがあり、その有効性についてはまだ明らかになっていませんでした[2]。
今回紹介する論文は「冠動脈疾患患者への心理学的介入は有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です[3]。

研究概要

2021年に中国のZhangらの研究チームは、2021年4月までに登録されている17本の論文を解析。

対象

対象国:アメリカ、ドイツ、カナダ、スウェーデン、ポルトガル、オーストラリア、イタリア、イラン、中国
対象者:4198人(介入群2107人、通常ケア群2091人)

結果

効果あり 効果なし
・不安スコア
・抑うつスコア
・ストレススコア
・総死亡率

 

ただし、介入内容の詳細が十分でない論文が複数存在したことで、介入内容による検討ができていないため、更なる研究が必要と述べられています。

まとめ

心理学的介入は死亡率には効果は認められませんでしたが、不安や抑うつ、ストレスなど精神心理的因子には効果が認められました。
心臓リハビリテーションは運動だけでなく、栄養や薬剤、患者教育などを含めた包括的な介入が有効と言われていますので、包括的介入の一つとして心理学的介入を加えることは有用ではないかと思います。

 

参考文献

[1] Strodl, et al. Br J Health Psychol. 2013 Nov;18(4):687-706.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23217000/
[2] Richards, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr 28;4(4):CD002902.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28452408/
[3] Zhang, et al. Ann Palliat Med. 2021 Aug;10(8):8848-8857.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34328010/

 

 

この記事のライター
宇野勲先生