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食事内容は中高年期のうつ病発症に関連しているの?

はじめに

うつ病は中高年者の精神的苦痛の中でも頻度が高く、加齢とともに生活の質を著しく低下させるとされています[1]。
中高年者のうつ病には、加齢に伴う生理学的変化(炎症など)、慢性疾患加齢に伴うストレスフルなライフイベントの発生(死別など)などが複雑に絡み合っていると言われています[2]。
高齢者のうつ病の予防には食事内容が関連している可能性が考えられており、複数の調査が行われています。
しかし、調査結果にはバラつきがあり、食事による中高年期のうつ病の予防効果については明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「食事内容は中高年期のうつ病発症に関連しているの?」という疑問に応えてくれる論文です[3]。

研究概要

2021年にオーストラリアのMatisonらの研究チームは、2020年12月までに登録されている33本の論文を解析。

 

対象

 

対象国:北米11件、オーストラリア9件、ヨーロッパ8件、アジア5件
対象者:45歳以上の547,606人。
研究期間:3年~12年

評価方法

食事内容:食物摂取頻度調査票27件、24時間の食事記録4件、食事歴2件。
うつ状態:標準化されたツール、臨床診断の自己申告、精神医学的検査、医療保険や医薬品の給付請求や抗うつ剤の使用状況など。

 

結果

リスク低下因子 リスク増加因子 関連なし
野菜摂取量が多い。

果物摂取量が多い

ビタミンB12、Dの摂取量が多い

食事の炎症レベルが高い

西洋的な食事パターンの頻度が高い

地中海食パターン

健康的な食事

魚摂取量

 

 

 

※地中海食パターン:果物、野菜、魚、オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物が多く、適量の赤ワインを飲む。
※食事の炎症レベル:赤肉、加工肉、精製穀物、加糖飲料、加工食品など
※西洋的な食事:脂質、糖質が多い食事パターン。

ただし、評価方法にバラつきがあり、異質性が高い論文も含まれているため、さらなる研究が必要とされています。

まとめ

うつ状態は精神心理的フレイルに含まれており、身体的フレイルや要介護のリスク因子にもなっていますので、中年期から食事内容を見直すことが、将来のフレイル予防、介護予防に有効かもしれません。

文献

[1] Blazer, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2003 Mar;58(3):249-65.

[2] Fiske, et al. Annu Rev Clin Psychol. 2009;5:363-89.

[3] Matison, et al. Ageing Res Rev. 2021 Sep;70:101403.

 

 

この記事のライター
宇野勲先生