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COPD患者に対する呼吸リハビリテーションの費用対効果は?

はじめに

慢性閉塞閉塞性肺疾患(COPD)は気流制限を特徴とする呼吸器疾患で、大規模疫学調査によると40歳以上のCOPDの有病率は8.6%、厚生労働省の統計によると2019年のCOPDによる死亡者数は17836で、日本人男性の死因の第8位と報告されています(1)。
また、COPDにかかる年間の医療費は1447億円と報告されています(2)。
COPDにかかる医療費の多くは増悪による入院や投薬ですが、呼吸リハビリテーションは両者を減少させる効果が期待されています。
しかし、COPD患者に対する呼吸リハビリテーションの費用対効果については、まだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「COPD患者に対する呼吸リハビリテーションの費用対効果は?」という疑問に応えてくれる論文です(3)。

結果

研究概要

2021年にベルギーのLeemansらの研究チームは、2020年3月までに登録されている11本の論文を解析した。
調査された国はオランダ、イギリス、オーストラリア、アイルランド、カナダが含まれていた。
調査期間は3か月から2年で、8本の研究では1~2年の調査期間を設けていた。
介入期間は7日から24か月であった。
介入内容は運動、カウンセリング、患者教育、気道クリアランス手技など様々だった。
参加者全体の平均年齢は67.1歳で、いずれの研究もほぼ同程度であった。

解析結果

5つの研究でQOLおよび健康状態の改善を認めた。
4つの研究で費用対効果が高いこと、2つの研究で費用対効果が低いことが認められ、5つの研究では費用対効果は不明でした。
医療的視点の増分費用効果比(ICER)は、20%介入群の方が優れているという結果であった。
社会的視点のICERは、24%介入群の方が優れているという結果であった。
ただし、対象者や介入方法、評価方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要とされています。

※ICER:QOLと生存年数から算出される質調整生存年(QALY)という指標を「1」獲得するのにかかるコストの指標。

※QALY:完全な健康状態を「1」、死亡を「ゼロ」としてQOLを数値化し、そこに生存年を掛けて算出する指標。費用対効果評価では、このQALYが高いほど「効果が高い」ということになる。

まとめ

COPD患者さんに対する呼吸リハビリテーションは、効果はありますが、費用対効果が高いかについてはまだはっきりとはわからないようです。
COPD患者さんは、その背景が多種多様であるため、一口に「呼吸リハビリテーション」と言っても、その介入内容は個別性が高く、費用対効果についてもバラつきが大きいのかもしれません。
COPD患者さんの呼吸リハビリテーションを行う際には、それぞれの患者さんに合ったプログラムを作成することで、費用対効果を良くすることができるかもしれません。

 

参考資料

(1)一般社団法人GOLD日本委員会 COPD情報サイト

http://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/

(2)厚生労働省 平成29年度 国民医療費の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/17/index.html

(3) Leemans, et al. J Physiother. 2021 Oct;67(4):271-283.

 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34538589/

 

 

 

この記事のライター
宇野勲先生