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低栄養、炎症、リハ栄養|2022.11.18|最終更新:2022.11.18|理学療法士が執筆・監修しています
低栄養分類に関するリハ職種の押さえるポイント
前回は低栄養の国際基準であるGLIM基準についてみていきました。今回は低栄養の分類についてみていきたいと思います。
✅ 軽微な炎症が持続している慢性の内科疾患や膠原病などは炎症を伴う慢性疾患関連低栄養 ✅ 嚥下障害などは炎症を伴わない慢性疾患関連低栄養 ✅ 重症感染症や外傷は炎症を伴う急性疾患または外傷関連低栄養 ✅ 孤食や飢餓などは社会経済的、環境因子に関連する低栄養 |
炎症を伴う慢性疾患関連低栄養
炎症が生じると代謝が亢進するため、体内でのエネルギー消費量が増えて栄養状態が悪化する危険性が高くなります。特に、慢性疾患のように長期に渡り炎症反応が持続していると、視床下部に存在する食欲中枢の機能が低下し、食欲不振が生じます。また、慢性疾患そのものの影響で栄養を十分に摂取することができず、栄養状態が悪化することも関係しています。
慢性心不全・呼吸不全・腎不全患者の場合
例えば、慢性心不全ではうっ血により腸管に浮腫が生じるため、消化吸収機能が低下します。また、慢性呼吸不全では努力性の呼吸や咳嗽によってエネルギー消費が増えたり、呼吸苦によって食事摂取量が減少したりします。
さらに、慢性腎不全では腎機能保護の観点からたんぱく質摂取量が制限されるため、筋肉量が減少する危険性が高くなります。
炎症を伴う慢性疾患関連低栄養には、上述の慢性の心不全、呼吸不全、腎不全に加え、肝不全、関節リウマチなどの膠原病、がんなどが含まれます。
炎症がない・わずかな慢性疾患関連低栄養
炎症がないまたはわずかな慢性疾患は炎症による消耗がないため、栄養状態への影響が軽視されがちですが、食事摂取量に影響を与える疾患が含まれているので栄養状態の悪化を引き起こしやすいので注意が必要です。
嚥下・口腔内の状態評価
例えば、この分類に含まれる嚥下障害は、食べられる食品が限られるため、栄養状態悪化のリスクが高まります。また、歯周病や口内炎などの口腔内の疾患も食事に制限を生じさせるため、栄養状態悪化リスクを高めます。
現時点で炎症がなくても、炎症を伴う疾患を発症するリスクが高い状態でもあるため、炎症を引き起こさないように管理していくことも重要となります。炎症がないまたは軽微なため、生化学検査を用いた栄養評価も可能となります。
含まれる疾患としては、先ほど例示した嚥下障害や口腔関連疾患が挙げられます。他にも炎症がまだ生じていない段階の生活習慣病もこの分類に含まれます。
炎症を伴う急性疾患・外傷関連低栄養
炎症を伴う急性疾患または外傷では、高度の炎症状態にあるため、エネルギーの消耗が大きい状態です。
また、内因性のエネルギーが優先して動員されるため、外からエネルギーを摂取しても利用されにくい状態となっています。さらに、疾患が重度であることが多いので、意識障害によってエネルギー摂取が阻害されることも多いです。
含まれる疾患としては。ICU入室を必要とするような重症感染症、開腹術のような高度侵襲を伴う外科術後、重度の熱傷などが含まれます。
社会経済的/環境因子に関連する飢餓や食糧不足を含む飢餓関連低栄養
社会経済的因子や環境因子による低栄養は、家族や社会的なサポートが十分に得られず、貧困や移動手段がなく買い物に行けないなどによって、十分な食料を手に入れることができない状態です。
独居や孤食も低栄養につながる
また、他者との交流が制限されることによる独居や孤食、抑うつや認知症による食物入手の制限や食思低下によって食事摂取量が減少する状態も含まれます。
この分類には上記の貧困や移動手段の制限、孤独、孤食といった社会的フレイルを示唆する因子、抑うつ、認知症、精神疾患といった精神心理的フレイルを示唆する因子が含まれます。
おわりに
一口の低栄養と言っても、その中身には多様な病態が含まれています。
病態によって低栄養の対策は異なってくるため、GLIM基準で低栄養の診断を行った後には、その方がどのタイプの低栄養で原因となっている病態は何なのかを詳細に評価していく必要があります。
また、低栄養の分類はどれか1つに絞れるものではなく、複数の病態を有している場合もあるため、評価の際には注意が必要となります。
本記事の執筆・監修・編集者
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— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022
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参考文献
[1] Cederholm et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019 Feb;10(1):207-217