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高齢者の低栄養には、口腔環境のどの要素が関連しているの?

はじめに

低栄養は高齢者に良く見られる問題で、地域在住高齢者では24.6%[1]、急性期病院では31%[2]、リハビリ病院では43.5%[3]と、有病率が高くなっています。
また、高齢者では口腔環境が悪化しやすく、リハビリ病院では53.1%口腔環境不良だったと報告されています[4]。
口腔環境が悪いと、口腔内の痛み、咀嚼運動の障害、歯周病、歯の喪失などの原因となり、栄養摂取に悪影響を及ぼすため、低栄養のリスクとなります。
しかし、口腔環境のどの要素が低栄養と関連しているかについては明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「高齢者の低栄養には、口腔環境のどの要素が関連しているの?」という疑問に応えてくれる論文です[5]。

 

研究概要

 

2021年にオランダのAlgraらの研究チームは、2020年5月までに登録されている10本の論文を解析しています。

 

対象者

 

対象者の属性:
老人ホーム、歯科医院、地域在住高齢者、急性期病院、リハビリ病院。

低栄養の割合:
11.7%~60%。

栄養評価方法:
MNA、MNA-SF、SGA、BMIと体重減少の組み合わせ。

口腔環境評価方法:
ROAG、OHAT、義歯使用状況、虫歯/欠損/埋伏歯、機能的歯単位、残歯数、GOHAI、OHIP、口腔乾燥、咀嚼障害、痛みなど。

 

結果

 

低栄養との関連性が認められた因子:

  • 歯の機能的単位が少ない
  • 口腔内軟部組織の状態が不良。
  • 唾液分泌量が少ない。
  • 口腔内が乾燥している。
  • 主観的な口腔状態が不良。

※歯の機能的単位:上下の対合する天然歯、取り外し可能または固定式の義歯の人工歯のペア。
※口腔内軟部組織:舌、口唇、歯茎。

ただし、対象者や評価方法にバラつきがあり、更なる研究が必要だそうです。

まとめ

今回は、調査された口腔環境の要素全てが低栄養と関連しているという結果でした。
低栄養はリハビリテーションを進めていく上で阻害因子となりますので、その低栄養を誘発する可能性がある口腔環境に関する知識も、セラピストに必要な知識だと思います。

参考文献

[1] Takeuchi, et al. J Nutr Health Aging. 2014 Apr;18(4):352-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24676314/

[2] Pourhassan et al. Appetite. 2021 Jun 14;105470.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34139296/

[3] 西岡他. 日本静脈経腸栄養学会雑誌. 2015; 30巻5号. P1145-1151.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/30/5/30_1145/_article/-char/ja/

[4] Nomoto, et al. Gerodontology. 2021 Oct 22.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34687077/

[5] Algra, et al. Nutrients. 2021 Oct 13;13(10):3584.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34684584/

 

この記事のライター
宇野勲先生