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筋トレの基礎 スクワット⑤ 変形性膝関節症、人工膝関節置換術後

スクワット、変形性膝関節症、人工膝関節置換術後|2023.1.5|最終更新:2023.1.5|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 膝OA患者のスクワットは、運動学的に健常者と異なる
  • 膝OA患者でも、スクワットトレーニングは有効
  • TKA患者もスクワット動作には特別な配慮が必要
3分で読めるよ

序文

前回はスクワットの一般的な効果についてまとめました。今回は、変形性膝関節症(膝OA)と人工膝関節置換術後(TKA)患者のスクワットの特徴についてまとめていきます。スクワットは筋力、身体機能の向上に有効な運動ですが、膝関節への負担が大きい運動です。膝OAやTKA患者ではスクワット動作時に健常者と異なる運動学的特徴を有しているため、実施方法については配慮が必要です。

膝OA

膝OA患者のスクワット動作の特徴

膝の痛みに関するレビュー論文では、スクワット中の膝前部の痛みの存在は、膝蓋大腿部の痛みに対して感度91%、特異度50%であることが報告されています[1]。

膝OA30人、健常ボランティア30人を対象とした調査では、KOA群の方がスクワット動作の下降期に内側腓腹筋と前脛骨筋の筋活動が増加しており、上昇期には内側腓腹筋と中殿筋の筋活動が増加していたことが報告されています[2]。

膝OA30人と健常者30人を対象とした調査では、膝OA女性はスクワット中、大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋の筋肉の活性化が最も高かったが、膝OAの男性は健常な男性と比較して外側広筋と内側腓腹筋の活性化が増加していたことが報告されています[3]。

膝OA患者99人を対象とした調査では、スクワット動作時の大腿骨に対する脛骨の外旋角は、グレード 0/1 の膝よりもグレード 3/4 の膝の方が大きく脛骨の後方移動はグレード 0-2 の膝よりもグレード 3/4 の膝の方が大きかったことが報告されています[4]。

グレード1-2の膝OA8人を対象とした調査では、膝OA群はスクワット動作時の外側接触点が前方に大きく移動しており、内側接触点は前後方向の移動量が小さくなっていたことが報告されています[5]。

グレード1-2の膝OA18人と健常者18人を対象とした調査では、軽度膝OA患者では、スクワット動作時に大腿骨と脛骨の軟骨の体積が内側、外側ともに約3-4%減少し、スクワット終了後に体積回復までに15分必要だったことが報告されています[6]。

以上のことから、膝OA患者には以下のような点を考慮してスクワットを行うことが大切です。

  • 膝前部の痛みがある場合は膝蓋大腿部の障害が存在している可能性があるため、動作を中止し、専門家に相談する。
  • 膝OA患者は特定の筋肉群(内側腓腹筋、前脛骨筋、中殿筋など)の活動が増加する傾向にあります。そのため、これらの筋肉に過度な負担がかからないように注意し、全体的な筋力バランスを考慮する。
  • 膝OAの女性と男性では、活性化する筋肉に違いがある可能性があります。女性は大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋の活動が高く、男性は外側広筋と内側腓腹筋の活動が増加する傾向にあるため、性別に応じた指導が必要
  • 膝OAの進行度によって、大腿骨と脛骨の相互作用が異なります。特に、膝の重度のOAがある場合は、脛骨の外旋角と後方移動が大きくなるため、これらの運動学的特徴を考慮した動作指導が必要
  • 膝OA患者では外側接触点が前方に大きく移動し、内側接触点の移動量が小さくなる傾向があるため、膝の安定性を保つための指導が大切です。
  • 軽度の膝OA患者では、スクワット後の軟骨の体積回復に15分程度が必要なため、適切な休息と回復時間の確保が必要です。

膝OA患者へのスクワット介入の効果

膝OA患者40人を対象とした調査では、週3回×8週間にわたってスクワットトレーニングを行うと、対照群と比較して、膝屈曲における他動運動感覚は有意に改善したことが報告されています[7]。

膝OA患者41人を対象とした調査では、週3回×8週間にわたって1回12分から39分まで漸増させるスクワットトレーニングを行うと、TUG、6分間歩行距離、膝伸展筋力が向上したことが報告されています[8]。

高齢の膝OA患者23人を対象とした調査では、週3回×12週間のスクワットトレーニングを行うと、BBS、6分間歩行距離、WOMACの自己申告の疼痛が改善することが報告されています[9]。

膝OA患者10人と健常者10人を対象とした調査では、スクワット動作時に膝蓋腱ストラップを装着すると、体重負荷の非対称性が改善することが報告されています[10]。

以上より、膝OA患者に対してのスクワットトレーニングに関して、介入頻度では、週3回のスクワットトレーニングが有効であることが示されています。介入期間では、8週間のトレーニングは、他動運動感覚、歩行能力、膝伸展筋力の向上に寄与し、12週間のトレーニングではバランス、歩行距離、疼痛の自己申告が改善されるようです。また、スクワット時の膝蓋腱ストラップの使用は体重負荷の非対称性を改善する効果がある可能性があります。

TKA

TKA患者22人と健常者12人を対象とした調査では、膝関節形成術を受けた患者はスクワット時の膝の最大屈曲が少なく、下降および上昇時の垂直速度が減少しており、全体の動作時間が長く足圧中心の移動距離が長くなっていたことが報告されています[11]。

TKA患者40人と健常者40人を対象とした調査では、対照群と比較して、スクワット動作時に膝関節屈曲角度が20-30%少なく、実際の他動的可動域よりも68-77%しか使用できていなかったことが報告されています[12]。

TKA患者40人を対象とした調査では、スクワット動作時に大腿骨外旋が安定していると、安静時や歩行開始時の痛みが少なかったことが報告されています[13]。

TKAデザイン別で、スクワット動作をシミュレーションした時の脛骨大腿骨(TF)の運動学的変化を測定した調査では、スクワット動作時のTFの運動学的変化はインプラントの位置や解剖学的要因によって左右されることが報告されています[14]。

TKA患者154人を対象とした調査では、平均追跡期間12か月のスクワット能力別の分類では、26人がハーフスクワット、75 人がパラレルスクワット、53 人がディープスクワットに分類され、患者満足度はスクワット能力向上に伴い改善していたことが報告されています[15]。

TKA術後4-8週間の患者24人を対象とした調査では、スクワットはマシンを使用したレッグプレスよりも、大腿四頭筋の筋活動が高かったことが報告されています[16]。

以上より、TKA患者ではスクワット動作時に以下のような点に注意が必要です。

  • ・健常者と比較して膝の最大屈曲角度が少なく、動作の速度が遅いことが多いため、過度の屈曲を避け、患者の快適な範囲内でスクワットを行う。
  • ・大腿骨の外旋を安定させることで安静時や歩行時の痛みを軽減できることから、適切な姿勢と動作の安定性に重点を置く。
  • ・スクワット時の膝の動きはインプラントの位置や解剖学的要因によって異なるため、個々の患者に合わせた指導を行う。
  • ・ハーフスクワットから始め、徐々にパラレルスクワット、ディープスクワットへと進行させることで安全に負荷を段階的に増加させる。
  • ・より高い大腿四頭筋の筋活動を得るため、筋力向上のためにレッグプレスよりもスクワットを優先して検討する。

おわりに

今回は膝OAとTKA患者のスクワット動作の特徴と注意点についてまとめました。膝関節疾患があるとスクワットは敬遠されがちですが、適切な運動方法と負荷量で行えば効果的な運動方法なので、患者さんの状態を評価して、適切なスクワットを指導することが大切です。

本記事の執筆・監修・編集者

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地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7

— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022

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参考文献

[1] Duong, et al. Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review. JAMA. 2023 Oct 24;330(16):1568-1580.

[2] Costa, et al. Biomechanical analysis during single-leg squat in individuals with knee osteoarthritis. Knee. 2021 Jan:28:362-370.

[3] Zajdman, et al. Females with knee osteoarthritis use a detrimental knee loading strategy when squatting. Knee. 2022 Oct:38:9-18.

[4] Ikuta, et al. Knee kinematics of severe medial knee osteoarthritis showed tibial posterior translation and external rotation: a cross-sectional study. Aging Clin Exp Res. 2020 Sep;32(9):1767-1775.

[5] Matsuki, et al. In vivo kinematics of early-stage osteoarthritic knees during pivot and squat activities. Gait Posture. 2017 Oct:58:214-219.

[6] Ginckel, et al. Acute cartilage loading responses after an in vivo squatting exercise in people with doubtful to mild knee osteoarthritis: a case-control study. Phys Ther. 2013 Aug;93(8):1049-60.

[7] Lai, et al. Effects of strength exercise on the knee and ankle proprioception of individuals with knee osteoarthritis. Res Sports Med. 2018 Apr-Jun;26(2):138-146.

[8] Lai, et al. Effect of adding whole-body vibration training to squat training on physical function and muscle strength in individuals with knee osteoarthritis. J Musculoskelet Neuronal Interact. 2019 Sep 1;19(3):333-341.

[9] Avelar, et al. The effect of adding whole-body vibration to squat training on the functional performance and self-report of disease status in elderly patients with knee osteoarthritis: a randomized, controlled clinical study. J Altern Complement Med. 2011 Dec;17(12):1149-55.

[10] Demirbüken, et al. The immediate effect of patellar tendon strap on weight-bearing asymmetry during squatting in patients with unilateral knee osteoarthritis: A pilot study. Prosthet Orthot Int. 2016 Dec;40(6):682-688.

[11] Verdini, et al. Assessment of patient functional performance in different knee arthroplasty designs during unconstrained squat. Muscles Ligaments Tendons J. 2018 Jan 10;7(3):514-523.

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[16:] Jakobsen, et al. Quadriceps muscle activity during commonly used strength training exercises shortly after total knee arthroplasty: implications for home-based exercise-selection. J Exp Orthop. 2019 Jul 2;6(1):29.