TKA術後の症例を担当させて頂いた経験からの学び・悩み・疑問 Part2 新人セラピスト成長記録(回復期)#08

(公開日:2021年4月18日)

前回は入院初期の評価の一部とプログラムを立案する上での負荷量の設定でそれぞれ学んだこと、悩んだことについて執筆しました。今回は姿勢・動作分析から運動機能障害の評価について学び・悩み・疑問を執筆したいと思います。

はじめに

本症例の着目した問題点は歩行動作にて左初期接地(IC)~立脚中期(MSt)でのknee in toe outによる荷重時痛の増強です。これにより、歩行能力向上に難渋しました。

画像所見

身体機能の評価の前に画像所見の確認をします。

K/L分類(Kellgren-Lawrence分類)

Grade0~Ⅳの5段階
関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘の形成など。

FTA(femoro-tibial-angle)

大腿骨と脛骨骨幹部の長軸をなす膝外側角。
正常範囲は男性で175~178°、女性で172~176°です。
K/L分類の進行とともにFTAは増大します。

Mikulicz line

大腿骨頭の中心から足関節中心を結んだ線。下肢機能軸と呼ばれることもあります。
正常では膝の中心を通ります。膝関節が内反しているのか、外反しているのか評価します。

その他

大腿骨や脛骨の湾曲です。一般的に聞かれることは少ない印象ですが、可能であれば(確認できる画像があれば)私は見るようにしています。松下¹らは大腿骨の外弯変形はOAの進行を抑える(関節内荷重を外側へ移動させる)ために生じる生理的変化である可能性があると述べています。(※一部のみ抜粋していますので、ぜひご一読いただければと思います)

理学療法評価

・膝関節内側の疼痛

主に膝関節内反に伴う圧縮ストレス、膝関節外反に伴う伸張ストレスから疼痛が生じます。
今回は伸張ストレスのみ述べさせて頂きます。

・伸張ストレス

①内側側副靭帯(MCL)、②鵞足筋群、③半膜様筋・腓腹筋内側頭に由来する機能障害を疑います。

①MCLは膝関節外反を制動します。その制動力は膝関節軽度屈曲位にてより制動力を高めます。また、下腿の外旋制動機能も有しています。MCLの機能障害に対しては外反ストレステストやダイアルテストにて評価します。

②鵞足筋群(縫工筋、薄筋、半腱様筋)はその構造上、膝関節外反や下腿外旋のアライメントを呈することで鵞足付着部に伸張ストレスが生じます。また、摩擦ストレスから鵞足部滑液包に疼痛がみられることもあります。鵞足筋群の伸張痛や鵞足炎は鵞足の疼痛誘発テストにて評価します。

③半膜様筋の停止腱は膝関節後内側を下行し、5束に分岐します。2束は脛骨の後内側の関節裂隙直下、3束は後斜靭帯、斜膝窩靭帯、膝窩筋の筋膜に停止します。このように半膜様筋の停止部は膝窩部で広く分岐し、安定性に関わる靭帯などに付着するため、MCL・後斜靭帯・斜膝窩靭帯など、靭帯の損傷から不安定性が生じると安定性を補填するために過剰な筋収縮が起こる可能性があります。また、後斜靭帯の線維が半月板に付着していることから半膜様筋が収縮することで半月板を後方へ移動させる働きがあります。そのため、半膜様筋の収縮不全により半月板の後方移動が制限され、膝関節屈曲時に半月板に対して圧縮ストレスが加わると考えられています。

腓腹筋内側頭の起始部は半膜様筋に覆われるように深層に存在しています。そのため、半膜様筋や腓腹筋の筋緊張の異常や短縮などが存在すると両筋の筋間で滑走不全が生じ、筋スパズムなどが起こると考えられています。また、腓腹筋内側頭の滑走性低下は関節包の伸張性低下や膝関節屈曲拘縮が生じると考えられています。

MCL、鵞足、半膜様筋・腓腹筋内側頭は下腿外旋の制動作用を有しています。そのため、下腿外旋アライメントを呈しているとこれらの組織への伸張ストレス増大が示唆されます。下腿の回旋異常はQ-angleにて評価することもできます。

Q-angleは上前腸骨棘~膝蓋骨中央を結ぶ線と脛骨粗面~膝蓋骨中央を結ぶ線のなす角であり、正常範囲は男性で11.2±3.0°、女性で15.8±4.5°です。

まとめ

今回の内容では画像所見から分かること、膝関節内側の疼痛について述べさせて頂きました。

本症例では術前FTA184°、術後FTA174°、術後1か月(入院日)FTA170°と術後に膝外反増強を認めていました。

本症例は術前まで膝内反位で長期経過を辿っており股関節外転、外旋筋の筋力低下、腸脛靭帯(ITT)の伸張、鵞足筋群の短縮が示唆され、術後は膝外反位に整復したことで歩行動作では左IC~MStでのknee in toe outにより鵞足筋群への伸張ストレス増加や膝外側裂隙への圧縮ストレス増加から荷重時痛が生じていると考えました。

次回は今回の続き(膝関節内側に疼痛が生じる要因)と膝関節外側の疼痛や股関節の機能障害について述べたいと思います。

【引用文献】
1)松下 任彦, 橋本 伸朗, 福元 哲也, 前田 智, 中馬 東彦, 平井 奉博, 坂本 圭:Mikulicz lineとFTAの関係-OAの要因-, 整形外科と災害外科, 2017, 66: (2)262-266