左室拡張不全(HFpEF)は、左室収縮不全(HFrEF)よりも有病率が高く、特に高齢者に多いとされています。
HFrEFに対する運動療法は有効だとする報告はありますが(こちら)、HFpEFに対しての運動療法の有効性は明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「HFpEFに運動療法は有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にイタリアのLeggioらの研究チームは、2018年までに登録されている9本の論文を解析しています。
結果として、
- 介入期間:12-16週間、頻度:2-3回/週、時間:20-60分/セッションだった。
- 最高酸素摂取量、6分間歩行距離、換気閾値は、全ての論文で改善した。
- QOLは3本の論文で改善が認められた。
- 心エコーパラメータは2本の論文で改善が認められた。
- 血管内皮機能、動脈スティッフネスは、全ての論文で改善が認められなかった。
だそうです。
ただし、介入方法にバラつきがあり、対象者も少ないため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- HFpEFに対する運動療法は、運動機能を改善させるが、血管機能は変化させなかった。
ということになります。
心不全に対する運動療法の効果を検証した先行研究でも、運動機能は改善させていますが、QOLなど他の因子については改善したりしなかったりと結果にバラつきが出ています。
運動機能以外は個人因子や環境因子が複雑に絡み合っているので、明確な効果を示すことは難しいのかもしれませんね。