ICUに入院すると、退院後も身体的、認知的、精神的な問題を抱えることが多く、「ICU後症候群」と呼ばれています(こちら)。
しかし、ICU後症候群がどのような経過を辿るかについては明確になっていませんでした。
今回紹介する論文は、「ICU退院後の身体機能の経過は?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にアメリカのParryらの研究チームは、2018年2月までの期間に登録されている26本の論文を解析しています。
身体機能の指標として6分間歩行距離を用いている論文を包含基準にしています。
結果として、
6分間歩行距離は、退院後3か月と比較して、12か月時点で有意に増加していた(361m対436m)。
ARDS患者と非ARDS患者との比較では、3か月、6か月、12か月時点でARDS患者の方が6分間歩行距離が少なかった。
6分間歩行距離を低下させる因子は、女性、併存疾患数だった。
だそうです。
ただし、研究方法や対象者にバラつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、ICU退院後12か月まで6分間歩行距離の回復は遷延し、ARDS、女性、併存疾患が多いと回復が阻害される。
ということになります。
ICU入院時や入院前の状態によって回復の程度や期間は異なると思いますが、重度侵襲後は身体機能の回復が遷延するというのは、急性期だけでなくそれ以降に病期を担う人も知っておくべき事項だと思います。
この事実を知っておくことは、予後予測に役立ち、良質な退院支援につなげられると思います。