スクワット、大腿四頭筋、ハムストリングス|2023.12.15|最終更新:2023.12.15|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- スクワットは大腿四頭筋を鍛えるのに有効
- ハムストリングスの筋活動はあまり高くない
- スクワットのやり方次第で筋活動は異なる
序文
今回はスクワット動作時の筋活動について、主に大腿四頭筋とハムストリングスに着目してまとめていきます。一言でスクワットと言っても、やり方1つで筋活動は変化していきます。目的に合わせて効果的な方法が選択できるように、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。
大腿四頭筋
健常成人32人を対象とした調査では、等尺性膝伸展と比較した等尺性スクワット動作時の筋活動は内側広筋:男性136.7±24.9%、女性157.1±59.8%、外側広筋:男性126.2±38.2%、女性128.1±35.5%だったことが報告されています[1]。
健常成人28人を対象とした調査では、スクワット中の膝関節の位置を前方または内側に変位させた条件では、正常な位置でのスクワットと比較して、外側広筋、内側広筋、大腿直筋の筋活動が減少していたことが報告されています[2]。
重量挙げ選手10人を対象とした調査では、スクワットはレッグプレスよりも大腿四頭筋の筋活動が高かったことが報告されています[3]。
健常成人22人を対象とした調査では、等尺性股関節内転を伴うスクワット動作時では、内側広筋と外側広筋の筋活動比率は1.14:1だったことが報告されています[4]。
女子ソフトボール選手40人を対象とした調査では、キネシオテープを大腿四頭筋各筋の走行に合わせて貼付した条件でスクワットを行うと、筋の走行とは無関係に貼付した条件と比較して、内側広筋、外側広筋、大腿直筋の筋活動が高くなったことが報告されています[5]。
健常成人男性10人を対象とした調査では、足圧中心を30%前方に移動させた条件でスクワットを行うと、通常の足圧位置の条件と比較して、内側広筋の筋活動が減少することが報告されています[6]。
健常成人13人を対象とした調査では、スクワットの相の中で、遠心性収縮中および膝関節屈曲角度が大きいほど、大腿直筋の近位部の筋活動が高くなることが報告されています[7]。
ボディビルダー10人を対象とした調査では、スタンスを広げたスクワットは他のスタンス幅よりも外側広筋の筋活動が高かったことが報告されています[8]。
健常成人20人を対象とした調査では、遠心性スクワット動作での大腿四頭筋の筋活動は、膝関節屈曲角度60-90度の範囲で最大だったことが報告されています[9]。
健常成人19人を対象とした調査では、スクワット中に膝蓋上または膝蓋下ストラップを使用すると、外側広筋の筋活動が遅れ、大腿四頭筋全体の筋活動のタイミングが改善されることが報告されています[10]。
以上より、スクワットは大腿四頭筋を鍛えるのに有効な運動だと言えます。しかし、スクワット中の膝関節の位置、屈曲角度、スタンス、足圧の位置などで大腿四頭筋の筋活動は変化するため、目的に合わせてスクワットのやり方を調整する必要があります。
ハムストリングス
健常成人32人を対象とした調査では、等尺性膝屈曲と比較した等尺性スクワット動作時の筋活動は半腱様筋:男性25.5±13.6%、女性25.2±21.8%、大腿二頭筋:男性46.1±26.0%、女性42.2±24.8%だった[1]。
重量挙げ選手10人を対象とした調査では、スクワットはレッグプレスよりもハムストリングスの筋活動が高く、スタンスを広くとることでハムストリングスの筋活動がより高まることが報告されています[3]。
健常成人28人を対象とした調査では、スクワット中の膝関節の位置を前方または内側に変位させた条件では、正常な位置でのスクワットと比較して、大腿二頭筋の筋活動が活性化していたことが報告されています[2]。
健常成人男性9人を対象とした調査では、スクワット中の加速期よりも減速期の方が、ハムストリングス/大腿四頭筋比が高かったことが報告されています[11]。
健常成人男性17人を対象とした調査では、フルスクワットとハーフスクワットでは、ハムストリングスの筋肥大効果に差はなかったことが報告されています[12]。
健常成人女性9人を対象とした調査では、低下傾斜ウェッジ条件(5.3±2.2)およびウェッジなし条件(6.4±3.2)と比較して、上昇傾斜ウェッジ条件(7.4±1.8)でのスクワット運動では、ハムストリング/大腿四頭筋比が有意に増加したことが報告されています[13]。
以上より、スクワット運動はハムストリングスの筋活動に影響を与えることが示されています。スタンスの幅やスクワットの種類(フルスクワット、ハーフスクワット)、膝の位置、傾斜ウェッジの使用などが筋活動に影響を与えるため、目的に合わせたスクワット方法を選択することが大切です。
おわりに
今回はスクワット動作時の大腿四頭筋とハムストリングスの筋活動についてまとめました。スクワットのやり方でそれぞれの筋活動は変化しますので、目的に合わせてスクワットの方法を調整すると効果的だと思います。
参考文献
[1]
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[3]
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Kim, et al. Effects of Kinesio Taping with Squat Exercise on the Muscle Activity, Muscle Strength, Muscle Tension, and Dynamic Stability of Softball Players in the Lower Extremities: A Randomized Controlled Study. Int J Environ Res Public Health. 2021 Dec 27;19(1):276.
[6]
Kitamura, et al. Muscle Activity Pattern with A Shifted Center of Pressure during the Squat Exercise. J Sports Sci Med. 2019 Jun 1;18(2):248-252.
[7]
Souza, et al. Is myoelectric activity distributed equally within the rectus femoris muscle during loaded, squat exercises? J Electromyogr Kinesiol. 2017 Apr:33:10-19.
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Coratella, et al. The Activation of Gluteal, Thigh, and Lower Back Muscles in Different Squat Variations Performed by Competitive Bodybuilders: Implications for Resistance Training. Int J Environ Res Public Health. 2021 Jan 18;18(2):772.
[9]
Candan, et al. Electromyographic activity of quadriceps muscles during eccentric squat exercises: implications for exercise selection in patellar tendinopathy. Res Sports Med. 2023 Jul-Dec;31(5):517-527.
[10]
Straub, et al. Influence of infrapatellar and suprapatellar straps on quadriceps muscle activity and onset timing during the body-weight squat. J Strength Cond Res. 2012 Jul;26(7):1827-37.
[11]
Yoo, et al. Comparison of hamstring-to-quadriceps ratio between accelerating and decelerating sections during squat exercise. J Phys Ther Sci. 2016 Sep;28(9):2468-2469.
[12]
Kubo, et al. Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes. Eur J Appl Physiol. 2019 Sep;119(9):1933-1942.
[13]
Yoo, et al. Comparison of the hamstring/quadriceps ratio in females during squat exercise using various foot wedges. J Phys Ther Sci. 2016 Aug;28(8):2379-80.
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執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
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