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生活期を支える 社会的フレイル⑨ 嚥下障害

社会的フレイル、嚥下障害、社会的サポート|2024.4.26|最終更新:2024.4.26|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 嚥下障害患者は社会面に問題を抱えていることが多い
  • 嚥下障害患者の介護者も負担を感じている
  • 多方面からの介入が社会性や生活の質改善に有効
3分で読めるよ

序文

前回はパーキンソン病患者の社会面の課題と支援方法についてまとめました。今回は嚥下障害を有する患者の社会面の課題と支援方法についてまとめます。嚥下障害は単に食事の問題に留まらず、患者さんの社会生活にも大きな影響を及ぼします。社交的な場面での食事、家族や友人との集まり、地域社会での活動など、日常生活の中で食事は重要な役割を果たしています。嚥下障害を持つ人々は、食事時の不安や恥ずかしさ、コミュニケーションの困難さから、社会的な孤立感を感じることがあります。また、介護者の負担も大きな問題となり、家族やケアチーム全体に影響を与えます。患者さんが社会的なつながりを維持し、活動的な生活を送るための支援は、リハビリテーションの重要な要素です。

嚥下障害患者の社会面の課題

嚥下障害患者とその介護者を対象に、嚥下障害に関するニーズについて調査したスコーピングレビューでは、嚥下障害患者と介護者の両者において社会的ニーズが最も多いニーズだったことが報告されています[1]。

嚥下障害を有する高齢者の介護負担を調査したシステマティックレビューでは、介護負担を感じている介護者は71%存在し、社会生活への影響やサポートの欠如が介護負担の一因になっていることが報告されています[2]。

頭頚部がん患者19人を対象に、治療後の嚥下障害の影響を調査したところ、嚥下障害は41.3%の患者で認められ、75.6%で社会生活に影響を与えていたことが報告されています[3]。

頭頚部がん患者5404人を対象に、治療後の経過を調査したところ、12か月後に嚥下と社交的な食事に関するスコアが低下していることが報告されています[4]。

嚥下障害のある脳卒中患者75人を対象に、嚥下に関連する生活の質(SWAL-QOL)アンケートを行ったところ、咽頭相の嚥下機能が重度なほどSWAL-QOLの社会的機能が低下していることが報告されています[5]。

外科術後嚥下障害患者73人を対象に、健康状態に関するアンケートを行ったところ、嚥下障害患者はフレイル状態で自信を失い、社会的関係性が制限されていることで孤立する傾向にあったことが報告されています[6]。

嚥下障害患者9人を対象に、嚥下障害と生活の質についてのインタビューを行ったところ、嚥下障害が生活の質を低下させ、身体的安全性、選択と制御、食事時間の経験、社会的関与が低下していたことが報告されています[7]。

地域在住のメディケア受給者4041人を対象に、嚥下障害に関連する社会的決定要因を調査したところ、嚥下障害は食料不安および家に閉じこもることと関連していたことが報告されています[8]。

地域在住高齢者113人を対象に、口腔機能と生活空間との関連性を調査したところ、生活空間の広がりと最大随意舌圧が関連していることが報告されています[9]。

以上をまとめますと、嚥下障害を持つ人々は、多くの場合、社会的な課題に直面していることが明らかになっています。介護者の71%が介護負担を感じ、社会生活への影響やサポートの欠如がその一因となっていることが報告されています。また、頭頚部がん患者の約75.6%が社会生活に影響を受けており、嚥下障害が社交的な食事にも影響を与えていることが示されています。さらに、嚥下障害のある脳卒中患者では、社会的機能の低下が認められ、外科術後の患者は社会的関係性が制限され孤立する傾向にあることが分かっています。地域在住の高齢者の研究では、嚥下障害が食料不安や家に閉じこもることと関連していることが報告されており、これらの課題に対処するためのサポートと介入が必要です。

嚥下障害患者の社会面への介入

頭頚部がん患者の嚥下障害の治療のアドヒアランスに関するレビューでは、社会的サポートが治療継続に重要であることが報告されています[10]。

40歳以上の地域在住一般住民1982人を対象に、社会環境と舌圧との関連性を調査したところ、近所の社会的ネットワークや余暇活動への参加は舌圧の上昇と関連していることが報告されています[11]。

嚥下障害を有する脳卒中患者88人を対象に、学際的なリハビリテーションチームによる身体的、社会的、心理的サポートを行ったところ、従来のリハビリテーションプログラムと比較して、嚥下機能が改善したことが報告されています[12]。

嚥下障害を有するパーキンソン病患者に対するリハビリテーションアプローチの効果を調査したシステマティックレビューでは、リハビリテーションアプローチによって生活の質や社会的関係性が改善することが報告されています[13]。

摂食嚥下に問題を抱える認知症患者17人とその介護者を対象に、飲食に影響する因子に関するインタビューを行ったところ、文化的に馴染みのある食事の提供や食に関する役割を支援することで、社会的交流や飲食の促進につながることが報告されています[14]。

以上をまとめますと、嚥下障害を持つ人々に対する社会面の支援方法として、社会的サポートが治療の継続に重要であるため、家族や友人、地域社会からの支援を強化することが重要です。近所の社会的ネットワークや余暇活動への参加を促進することで、嚥下機能の改善にもつながることが報告されています。また、学際的なリハビリテーションチームによる身体的、社会的、心理的サポートが嚥下機能の改善に効果的であることが示されています。リハビリテーションアプローチによって、生活の質や社会的関係性が改善されることも報告されています。さらに、文化的に馴染みのある食事の提供や食に関する役割を支援することで、社会的交流や飲食の促進につながることが分かっています。これらの支援方法を通じて、嚥下障害を持つ人々の社会的な課題に対処し、生活の質の向上を図ることができることが明らかになっています。

おわりに

今回は嚥下障害を有する患者の社会面の課題についてまとめました。嚥下障害を持つ患者さんが直面する社会的な課題は、単に医学的な問題ではなく、人間としての尊厳や生活の質に深く関わる問題です。患者さんの身体的な健康だけでなく、心理的、社会的な健康を支えることが、QOLの向上に重要だと思います。

参考文献

[1] Ninfa, et al. The care needs of persons with oropharyngeal dysphagia and their informal caregivers: A scoping review. PLoS One. 2021 Sep 23;16(9):e0257683.

[2] Rangira, et al. Understanding Burden in Caregivers of Adults With Dysphagia: A Systematic Review. Am J Speech Lang Pathol. 2022 Jan 18;31(1):486-501.

[3] Pezdirec, et al. Swallowing disorders after treatment for head and neck cancer. Radiol Oncol. 2019 Jun 1;53(2):225-230.

[4] Patterson, et al. Trends in, and predictors of, swallowing and social eating outcomes in head and neck cancer survivors: A longitudinal analysis of head and neck 5000. Oral Oncol. 2021 Jul:118:105344.

[5] Kim, et al. The impact of dysphagia on quality of life in stroke patients. Medicine (Baltimore). 2020 Aug 21;99(34):e21795.

[6] Farri, et al. Social importance of dysphagia: its impact on diagnosis and therapy. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2007 Apr;27(2):83-6.

[7] Smith, et al. The true cost of dysphagia on quality of life: The views of adults with swallowing disability. Int J Lang Commun Disord. 2023 Mar;58(2):451-466.

[8] Jones, et al. Dysphagia in Older Adults is Associated With Food Insecurity and Being Homebound. J Appl Gerontol. 2023 Sep;42(9):1993-2002.

[9] Morishita, et al. Relationship between oral function and life-space mobility or social networks in community-dwelling older people: A cross-sectional study. Clin Exp Dent Res. 2021 Aug;7(4):552-560.

[10] Wells, et al. Patient adherence to swallowing exercises in head and neck cancer. Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg. 2017 Jun;25(3):175-181.

[11] Nagayoshi, et al. Social networks, leisure activities and maximum tongue pressure: cross-sectional associations in the Nagasaki Islands Study. BMJ Open. 2017 Dec 6;7(12):e014878.

[12] Zheng, et al. The individualized rehabilitation interventions for dysphagia: a multidisciplinary case control study of acute stroke patients. Int J Clin Exp Med. 2014 Oct 15;7(10):3789-94.

[13] López-Liria, et al. Treatment of Dysphagia in Parkinson’s Disease: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2020 Jun 9;17(11):4104.

[14] Nair, et al. Experiences of Carers and People with Dementia from Ethnic Minority Groups Managing Eating and Drinking at Home in the United Kingdom. Nutrients. 2022 Jun 9;14(12):2395.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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