社会的フレイル、パーキンソン病、社会的サポート|2024.4.19|最終更新:2024.4.19|理学療法士が執筆・監修しています
序文
前回は大腿骨近位部骨折患者の社会性についてまとめました。今回はパーキンソン病患者の社会性についてまとめます。パーキンソン病は、運動障害を主な症状とする神経変性疾患です。しかし、この病気の影響は身体的な側面にとどまらず、患者の社会生活にも深刻な影響を及ぼします。社会的引きこもり、孤立、社会的サポートの欠如は、パーキンソン病患者の生活の質を著しく低下させる要因となります。社会的側面への支援は、パーキンソン病患者の総合的なケアにおいて不可欠な要素です。
パーキンソン病患者の社会性
パーキンソン病患者の社会性に関するスコーピングレビューでは、パーキンソン病患者は自発的または非自発的に社会活動を減少させており、社会的引きこもりは身体的、認知的、精神心理的な症状と関連していることが報告されています[1]。
パーキンソン病患者324人を対象に、前向きに生活するために必要な因子を調査したところ、社会的サポート、生活満足度、家庭経済状況が生活をする上で重要な因子だったことが報告されています[2]。
パーキンソン病患者100人と健常者100人を対象に、健康関連QOL(HRQOL)の決定要因を調査したところ、社会的サポートはHRQOLの決定要因の1つであることが報告されています[3]。
パーキンソン病患者の社会的認知機能に関する記述的レビューでは、パーキンソン病の初期段階から心の理論、意思決定、感情的な顔認識などの社会的認知が障害されていることが報告されています[4]。
パーキンソン病患者16人を対象に、社会性とテクノロジーの使用に関するアンケートを行ったところ、疲労、精神状態、社会的偏見、薬剤の副作用によって社会生活が制限されており、情報通信技術を使用したくても、PD に関連した身体的および認知的制限により、キーボードとマウスの使用、パスワードの記憶、複雑なアプリケーションの操作に困難を抱えていることが報告されています[5]。
認知機能が低下しているパーキンソン病患者19人、認知機能が保たれているパーキンソン病患者27人、健常対照者29人を対象に、社会的認知機能と認知機能の関連性を調査したところ、認知機能が低下しているパーキンソン病患者は他の群よりも社会的認知機能(表情認識、心の理論)の成績が悪かったことが報告されています[6]。
パーキンソン病患者124人を対象に、社会的サポートと精神症状との関連性を調査したところ、若年のパーキンソン病患者では社会的サポートが不十分であることが不安症状と関連しており、高齢のパーキンソン病患者では社会的サポートが不十分であることが抑うつ症状と関連していたことが報告されています[7]。
以上をまとめますと、パーキンソン病患者の社会性に関する研究では、患者が社会活動を自発的または非自発的に減少させ、社会的引きこもりが身体的、認知的、精神心理的な症状と関連していることが示されています。社会的サポート、生活満足度、家庭経済状況は、前向きな生活をする上で重要な因子であり、社会的サポートが患者の健康関連QOL(HRQOL)に影響を与えることが確認されています。また、社会的認知機能の障害はパーキンソン病の初期段階から見られ、心の理論、意思決定、感情的な顔認識などが影響を受けます。技術の使用に関する研究では、疲労、精神状態、社会的偏見、薬剤の副作用が社会生活を制限し、身体的および認知的制限により情報通信技術の使用が困難であることが報告されています。認知機能が低下している患者は、社会的認知機能の成績が悪いことも明らかになっています。若年の患者では社会的サポートが不十分なことが不安症状と関連し、高齢の患者では抑うつ症状と関連していることが分かっています。これらの知見は、パーキンソン病患者の社会性の理解と支援に重要な意味を持ちます。
パーキンソン病患者への社会的介入
パーキンソン病患者7人を対象に、身体活動量アップに対する社会的サポートの効果をアンケート形式で調査したところ、手段的、感情的、情報サポートを受けることで、身体活動への参加にプラスの効果があったことが報告されています[8]。
パーキンソン病患者のピアサポート介入の効果を調査したシステマティックレビューでは、ピュアサポートの手段にはWEBでのディスカッションフォーラムや仮想現実などが含まれており、社会的サポートや個人的な経験の共有に有効なことが報告されています[9]。
パーkんソン病患者90人を対象に、社会的な活動への参加の程度と健康状態との関連性を調査したところ、健康リソースの利用、家庭やコミュニティでの活動、社会的サポートに関わっている人は、健康上の問題が少なく健康的だったことが報告されています[10]。
パーキンソン病患者、介護者、社会的ケア提供者43人を対象に、社会的ケアの有効性についてアンケート調査を行ったところ、質の高い社会的ケアは健康にプラスの影響を与え、感染症、症状の悪化、精神的健康の悪化などの有害事象を予防する効果があったことが報告されています[11]。
パーキンソン病患者285人を対象に、身体活動の決定要因を調査したところ、社会的サポートは身体活動レベルの決定要因の1つであることが報告されています[12]。
以上をまとめますと、パーキンソン病患者に対する社会的サポート介入の効果についての研究では、身体活動量の増加や健康状態の改善が報告されています。手段的、感情的、情報サポートの受け取りは、身体活動への参加にプラスの効果があることが示されています。ピアサポート介入、特にWEBでのディスカッションフォーラムや仮想現実を用いたものは、社会的サポートや個人的な経験の共有に有効であるとされています。また、社会的な活動への参加や質の高い社会的ケアは、健康上の問題が少なく、感染症や症状の悪化、精神的健康の悪化などの有害事象を予防する効果があることが示されています。これらの結果から、パーキンソン病患者に対する社会的サポート介入が、身体的および精神的健康の向上に寄与する可能性があります。
おわりに
今回はパーキンソン病患者の社会性についてまとめました。パーキンソン病患者の社会性に関する理解は、患者のQOLを向上させるために不可欠です。社会的な活動への参加や適切なサポートが、身体的および精神的健康にプラスの影響を与えることが多くの研究で示されています。パーキンソン病患者の社会性への理解を深め、支援していくことが、パーキンソン病患者のQOLの向上に重要です。