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筋トレの基礎 スクワット⑥ 前十字靭帯、膝蓋大腿関節

スクワット、前十字靭帯、膝蓋大腿関節|2024.1.12|最終更新:2024.1.12|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • スクワット動作時の膝関節屈曲角度でACLへの負担は変化する
  • ACL再建後では、スクワット動作時の関節モーメントに変化が生じる
  • PFPS患者のスクワット動作では、テーピングが痛みの軽減に有効
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序文

前回は変形性膝関節症と人工膝関節置換術後のスクワットの特徴についてまとめました。今回は前十字靭帯(ACL)と膝蓋大腿関節痛症候群(PFPS)に着目して、それぞれのスクワットの特徴についてまとめます。ACL損傷はスポーツ選手に多く見られる重大な怪我であり、適切な運動方法と予防策が重要です。PFPSは膝の痛みの一般的な原因であり、日常生活に影響を与えることがあります。これらの状態は、スクワットの方法によっては状態を悪化させる危険性があるため、今回まとめる特徴を考慮して指導を行うことが大切です。

ACL

スクワット動作中の膝関節のバイオメカニクス的特徴に関するレビュー論文では、ACLによって抑制される前方せん断力の減少は、膝屈曲0~60度の間で発生していることが報告されています[1]。

男性重量挙げ選手10人を対象とした調査では、スクワット動作のスタンスの広さを変化させても、ACLの張力は生じなかったことが報告されています[2]。

健常成人18人を対象とした調査では、片脚スクワット中にACLにかかる負荷は膝角度0度から40度の間で発生し、膝角度30度でピークに達していたことが報告されています[3]。

体重負荷運動と非体重負荷運動における前十字靱帯の緊張と張力に関するレビュー論文では、体重負荷時の膝屈曲10度~50度の間 (ピーク:10度~30度)でACLへの負荷が大きくなり、膝をつま先よりも前方に過度に動かし、かかとを地面から離してしゃがむと、ACL への負荷が増加することが報告されています[4]。また、体幹を前傾させてスクワットを行うとハムストリングスの活動が増加するため、ACL の負荷が軽減されることも報告されています。

片側ACL断裂患者16人を対象とした調査では、ACL断裂側は健側と比較して、スクワット動作時の大腿四頭筋/ハムストリングス比および脛骨筋/腓腹筋比が低かったことが報告されています[5]。

ACL再建術を受けた患者33人を対象とした調査では、ACL再建後6か月でも片脚スクワットのパフォーマンスが不良の人は45%存在し、パフォーマンスが不良の人は股関節外転筋力が低かったことが報告されています[6]。

一側のACL再建術を受けた患者8人を対象とした調査では、術側は健側と比較して、ピーク膝伸筋モーメントに対するピーク股関節伸筋モーメントの比が46.5%大きかったことが報告されています[7]。

ACL損傷患者32人と健常者10人を対象とした調査では、ACL損傷群は健常群と比較して、片脚スクワット動作時の脛骨位置は内側に偏位しており、ACL再建術の術式に関わらず、術後平均追跡期間は21.7±4.5か月も持続していたことが報告されています[8]。

ACL再建術を受けた大学生アスリート17人を対象とした調査では、ACL再建後の両脚スクワット動作時の肩関節および股関節の内外側位置偏位は、両脚スクワット中の垂直地面反力 (VGRF)の非対称性と関連しており、VGRFの非対称性は膝伸展モーメントの非対称性と関連していたことが報告されています[9]。

ACL再建術を受けた患者24人を対象とした調査では、再建後約9か月時点でスクワット動作時の膝関節と足関節の屈曲モーメントの非対称性が大きく、その後軽減するものの、約13カ月後のスポーツ復帰時点でもスクワット動作時の股関節、膝関節、足関節の屈曲モーメントの非対称性が認められたことが報告されています[10]。

以上より、ACLを考慮してスクワットを行う際には以下の点に注意して行うと、スクワットを安全に効率良く行うことができる可能性があります。

  • 膝が前方に出過ぎるとACLへの負荷が増加するため、膝がつま先より前方に過度に出ないように注意する。
  • 0度から60度の範囲ではACLによって前方剪断力が抑制されるため、ACL損傷している際にはこの角度での運動は注意する。
  • 片脚スクワットは特にACLに負担がかかりやすいため、膝角度0度から40度の間での負荷を意識する。
  • スタンスの広さを調整しても、ACLの張力には大きな影響がないことから、快適でバランスの取れたスタンスを選ぶ。
  • 体幹を前傾させるとハムストリングスの活動が増え、ACLへの負荷が軽減されるため、ACLへの負担軽減のために体幹前傾姿勢でのスクワットは有用な可能性がある。
  • ACL損傷や再建術後の患者では、膝関節と足関節の屈曲モーメントの非対称性に注意し、バランスを調整する練習を行う必要がある。
  • ACL再建術後の患者には、股関節外転筋の強化を促す必要がある。

PFPS

PFPSに関連する可能性のある因子についてのシステマティックレビュー論文では、PFPS患者は健常者と比較して、股関節外転筋力、膝伸展ピークトルク、股関節外旋筋力が低下していることが報告されています[11]。

PFPS を引き起こしたり悪化させたりする可能性のあるスクワットのやり方についてのシステマティックレビュー論文では、膝関節60度から90度の屈曲で膝関節に張力の過負荷を引き起こす可能性があり、膝関節屈曲時の膝のつま先前方への偏位と、大腿筋間の筋肉の不均衡がPFPS発症および悪化のリスク因子だったことが報告されています[12]。

PFPS女性20人と慢性股関節痛女性14人を対象とした調査では、片脚スクワット動作時の膝関節の外旋が膝関節の痛みの増加と関連していることが報告されています[13]。

PFPS患者40人と健常者40人を対象とした調査では、PFPS患者は健常者と比較して、同側の体幹の傾き、対側の骨盤の低下、股関節内転、膝関節外転が大きく、股関節外転筋力が18%、外旋筋力が17%低かったことが報告されています[14]。

PFPS患者24人と健常者24人を対象とした調査では、PFPS患者は健常者と比較して、片脚スクワット中の中殿筋の活動のタイミングが遅れることが報告されています[15]。

PFPS患者15人を対象とした調査では、脛骨を内旋または外旋方向に誘導するテーピングは、スクワット動作時の痛みの軽減に有効であり、特に外旋テーピングの方が痛みが減少していたことが報告されています[16]。

PFPS患者20人を対象とした調査では、視覚的フィードバックを行いながらスクワットを行うと、スクワット時の膝関節屈曲角度、膝伸展モーメント、大腿四頭筋筋活動が減少し、膝蓋大腿関節の負荷が14.4%減少したことが報告されています[17]。

PFPS患者44人を対象とした調査では、2週間の膝蓋骨テーピングを行うと、内側広筋斜頭と外側広筋の筋活動のタイミングが改善することが報告されています[18]。

以上より、PFPS患者のスクワット動作では以下のような点に注意して行うと、スクワットを安全に効率良く行うことができる可能性があります。

  • PFPS患者は股関節の外転筋力や外旋筋力が低下しているため、これらの筋力強化が必要。
  • PFPS患者では膝関節が60度から90度に屈曲するときに過度の張力が発生する可能性があるため、この角度範囲でのスクワットは慎重に行う。
  • スクワット時に膝がつま先よりも前に出過ぎないようにし、膝の外側への偏位を避ける。
  • PFPS患者は体幹の傾きや骨盤の位置が影響を及ぼすことがあるため、正しい姿勢を保つ。
  • スクワット時の膝の動きを視覚的に確認し、正しい位置に保つ。
  • 脛骨の外旋テーピングや膝蓋骨テーピングを行うことで、痛みの軽減と筋活動の改善を図る。

おわりに

今回はACLとPFPS患者のスクワット動作の特徴についてまとめました。スクワットはACLの損傷やPFPSといった膝の問題を抱えている人にとって、特に注意が必要な運動です。障害の予防、復帰のために、スクワットの適切な方法と予防策を理解し、安全かつ効果的にスクワットを行うことが大切です。

参考文献

[1] Escamilla. Knee biomechanics of the dynamic squat exercise. Med Sci Sports Exerc. 2001 Jan;33(1):127-41.

[2] Escamilla, et al. Effects of technique variations on knee biomechanics during the squat and leg press. Med Sci Sports Exerc. 2001 Sep;33(9):1552-66.

[3] Escamilla, et al. Cruciate ligament force during the wall squat and the one-leg squat. Med Sci Sports Exerc. 2009 Feb;41(2):408-17.

[4] Escamilla, et al. Anterior cruciate ligament strain and tensile forces for weight-bearing and non-weight-bearing exercises: a guide to exercise selection. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Mar;42(3):208-20.

[5] Trulsson, et al. Altered movement patterns and muscular activity during single and double leg squats in individuals with anterior cruciate ligament injury. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Feb 13:16:28.

[6] Hall, et al. Neuromuscular Evaluation With Single-Leg Squat Test at 6 Months After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction. Orthop J Sports Med. 2015 Mar 16;3(3):2325967115575900.

[7] Salem, et al. Bilateral kinematic and kinetic analysis of the squat exercise after anterior cruciate ligament reconstruction. Arch Phys Med Rehabil. 2003 Aug;84(8):1211-6.

[8] Paolo, et al. Dynamic Radiostereometry Evaluation of 2 Different Anterior Cruciate Ligament Reconstruction Techniques During a Single-Leg Squat. Orthop J Sports Med. 2021 Jul 15;9(7):23259671211011940.

[9] Song, et al. Medial-lateral hip positions predicted kinetic asymmetries during double-leg squats in collegiate athletes following anterior cruciate ligament reconstruction. J Biomech. 2021 Nov 9:128:110787.

[10] Strong, et al. Asymmetric loading strategies during squats following anterior cruciate ligament reconstruction: A longitudinal investigation with curve analyses throughout and after rehabilitation. Scand J Med Sci Sports. 2023 Oct 18.

[11] Lankhorst, et al. Factors associated with patellofemoral pain syndrome: a systematic review. Br J Sports Med. 2013 Mar;47(4):193-206.

[12] Pereira, et al. Patellofemoral Pain Syndrome Risk Associated with Squats: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2022 Jul 28;19(15):9241.

[13] Schmidt, et al. Dynamic knee valgus kinematics and their relationship to pain in women with patellofemoral pain compared to women with chronic hip joint pain. J Sport Health Sci. 2019 Sep;8(5):486-493.

[14] Nakagawa, et al. Trunk, pelvis, hip, and knee kinematics, hip strength, and gluteal muscle activation during a single-leg squat in males and females with and without patellofemoral pain syndrome. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Jun;42(6):491-501.

[15] Ignacio Orozco-Chavez, et al. Effect of squatting velocity on hip muscle latency in women with patellofemoral pain syndrome. J Phys Ther Sci. 2018 Mar;30(3):381-386.

[16] Deng, et al. Tibial internal and external rotation taping for improving pain in patients with patellofemoral pain syndrome. J Sci Med Sport. 2022 Aug;25(8):644-648.

[17] Kernozek, et al. Real-time visual feedback reduces patellofemoral joint forces during squatting in individuals with patellofemoral pain. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2020 Jul:77:105050.

[18] Paoloni, et al. Long-term efficacy of a short period of taping followed by an exercise program in a cohort of patients with patellofemoral pain syndrome. Clin Rheumatol. 2012 Mar;31(3):535-9.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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