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筋トレの基礎 スクワット④ 障害予防、身体機能

スクワット、障害、身体機能|2023.12.29|最終更新:2023.12.29|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • スクワットの方法やパフォーマンスは障害発生と関連している
  • スクワットは他の運動と組み合わせることで歩行能力を改善できる
  • スクワットは様々な条件で行うことでバランスが向上する
3分で読めるよ

序文

 前回はスクワット動作時の殿筋および下腿三頭筋の筋活動についてまとめました。今回は、スクワット運動に関連するものとして、障害、歩行能力、バランス能力についてまとめます。スクワットはレジスタンストレーニングとして筋力の向上を目的に行われることが多いと思いますが、筋力以外にもスクワットを行うメリットが報告されています。スクワットがどのようにしてこれらの身体能力に影響を与えるかを探り、日々の生活においてスクワットを取り入れることの重要性を掘り下げていきます。

障害予防

 シューズの特性によってスクワット動作時の運動学的、関節負荷、筋活動、地面反力などがどのように変化するかを調査したレビュー論文では、踵を高くしたウェイトリフティングシューズは体幹の傾きを減少さえ、障害予防に有効であることが報告されています[1]。

 大学生アスリート111人を対象とした調査では、スクワットのパフォーマンスが不良だと、1年後の下肢の障害発生率が高かったことが報告されています[2]。

 健常成人女性20人を対象とした調査では、前十字靭帯(ACL)損傷に関連する生体力学パラメータ(体幹側屈、膝と股関節の力率の比率、膝関節外転モーメント、垂直地面反力比、足部圧力中心)に関するフィードバックを与えながら自重スクワットを110回行うと、ACL損傷に関連する生体力学的パラメータが改善することが報告されています[3]。

 女子大生アスリート180人を対象とした調査では、Microsoft Kinect センサーを使用して測定したスクワット動作時の股屈曲、膝屈曲、膝前頭面投影角 (FPPA)、体幹屈曲などの運動学的変数は、シーズン中の下肢障害の発症とは関連していないことが報告されています[4]。

 以上より、
・ウェイトリフティングシューズのような特定の装備が運動の効果を高め、怪我のリスクを減らすこと、
・スクワットを行うには正しいフォームと技術が重要であり、運動の効果を最大化し、怪我のリスクを最小限に抑えるためには、適切な指導と練習が必要であること、
・スクワットが特定の怪我の予防やリハビリテーションに役立つ可能性があること
から、適切なフォームと条件下で行うことで、パフォーマンスの向上、怪我の予防、リハビリテーションに効果的であることが示唆されています。

 一方で、スクワット動作の運動学的変数が下肢障害の発症と関連していないという報告もあることから、スクワットが一概に全ての選手や状況において有効とは限らず、個々の条件や目的に応じたアプローチが必要であります。

歩行能力

 70歳以上の高齢女性54人を対象とした調査では、1回60分×週3回×12週間の有酸素運動+スクワットを中心としたレジスタンストレーニングの組み合わせ介入は、有酸素運動のみと比較して、歩行に関する時間的・空間的パラメータを向上させることが報告されています[5]。

 男子長距離ランナー13人を対象とした調査では、オーバーヘッドスクワットアセスメント(OHSA)による動作分析結果は、OHSA骨盤前傾角度はToe-Off(TO)の股関節伸展と負の相関、OHSA股関節内転角度はMid-Stance(MS)および立脚期最大膝内転角度と正の相関、OHSA足関節背屈はFoot Strike(FS)、MS、立脚期最大背屈角度と正の相関To底屈と負の相関はあったことが報告されています[6]。

 地域在住高齢者75人を対象とした調査では、ハーフスクワットまたはデクラインスクワットによるスクワットテストの結果が高いと、歩行とバランス能力を測定するテストであるTinetti Performance Oriented Mobility Assessment(POMA)の結果がより高いことが報告されています[7]。

 地域在住高齢者25人を対象とした調査では、自重スクワットを毎日100回×4か月間行うと、日常生活活動のみの群と比較して、歩行速度の改善が認められなかったことが報告されています[8]。

 以上より、スクワットのパフォーマンスと歩行能力は関連がありますが、歩行能力を向上させるには、スクワット単独ではなく、他のレジスタンストレーニングや有酸素トレーニングとの組み合わせが有効な可能性が示唆されています。

バランス能力

 地域在住高齢者40人を対象とした調査では、スマートフォンアプリを用いた椅子スクワット運動時の動作速度が速いと、Berg Balance Scaleのスコアが高かったことが報告されています[9]。

 骨量が低下している地域在住高齢者98人を対象とした調査では、スクワットを含むレジスタンストレーニング介入を1回50分×週3回×25週間行うと、重心動揺が減少し、重心動揺の減少はスクワット負荷の増加量と関連していたことが報告されています[10]。

 健常成人38人を対象とした調査では、速度や土台形状の異なる条件でのスクワットを週3回×4週間行うと、不安定な土台で速い速度でスクワットを行うと、その他の条件と比較して、バランステストが改善していたことが報告されています[11]。

 変形性膝関節症や脊椎症を有する高齢外来患者を対象とした調査では、全身振動刺激(20Hz)を4分間とスクワット(20回/分)の組み合わせを週2回×6か月行うと、全身振動刺激のみと比較して、タンデム歩行が改善することが報告されています[12]。

 以上より、スクワットの動作速度や負荷の増加がバランス向上に寄与する可能性があります。また、不安定な土台でのスクワットや全身振動刺激との組み合わせは、特定の健康状態を持つ高齢者にとっても有効であることが示唆されています。しかし、これらの運動は適切な指導と管理のもとで行う必要があり、個々の健康状態や運動能力に合わせた調整が必要です。

おわりに

 今回はスクワットの有効性について、障害予防、歩行、バランス能力の視点でまとめました。スクワットは簡単で導入しやすく、障害予防、歩行能力の向上、そしてバランス能力の強化において非常に有効な運動なので、積極的に取り入れるべき運動の1つだと思います。

本記事の執筆・監修・編集者

✅記事執筆者(宇野先生)のTwitterはこちら↓↓

地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7

— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022

✅記事監修(✅編集(てろろぐ

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参考文献

[1] Pangan, et al. Footwear and Elevated Heel Influence on Barbell Back Squat: A Review. J Biomech Eng. 2021 Sep 1;143(9):090801.

[2] Eckard, et al. Association between double-leg squat and single-leg squat performance and injury incidence among incoming NCAA Division I athletes: A prospective cohort study. Phys Ther Sport. 2018 Nov:34:192-200.

[3] Bonnette, et al. Injury Risk Factors Integrated Into Self-Guided Real-Time Biofeedback Improves High-Risk Biomechanics. J Sport Rehabil. 2019 Nov 1;28(8):831-839.

[4] Lisman, et al. Examination of overhead and single-leg squat kinematics and lower extremity injury in female collegiate athletes. J Sports Med Phys Fitness. 2023 Jul;63(7):787-796.

[5] Choi, et al. 12-Week Exercise Training of Knee Joint and Squat Movement Improves Gait Ability in Older Women. Int J Environ Res Public Health. 2021 Feb 5;18(4):1515.

[6] Sever, et al. Overhead squat assessment reflects treadmill running kinematics. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Sep 22;15(1):118.

[7] Uysal, et al. Assessment of the musculoskeletal performance with squat tests and performance-oriented measurements in older adults. J Back Musculoskelet Rehabil. 2020;33(5):735-741.

[8] Hirono, et al. Effects of home-based bodyweight squat training on neuromuscular properties in community-dwelling older adults. Aging Clin Exp Res. 2023 May;35(5):1043-1053.

[9] Balsalobre-Fernández, et al. Movement velocity in the chair squat is associated with measures of functional capacity and cognition in elderly people at low risk of fall. PeerJ. 2018 Apr 30:6:e4712.

[10] Liu-Ambrose, et al. Resistance and agility training reduce fall risk in women aged 75 to 85 with low bone mass: a 6-month randomized, controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2004 May;52(5):657-65.

[11] Lee, et al. Effect of different speeds and ground environment of squat exercises on lower limb muscle activation and balance ability. Technol Health Care. 2018;26(4):593-603.

[12] Osugi, et al. Effect of a combination of whole body vibration exercise and squat training on body balance, muscle power, and walking ability in the elderly. Ther Clin Risk Manag. 2014 Feb 20:10:131-8.