人工膝関節(以下、TKA)の術後のリハビリテーションは、入院や通院で行うのと、在宅で行うのとどちらが良いかという議論があります。
医療費のことを考えると在宅の方が良いでしょうし、より専門的な理学療法が行えたりリスク管理が行えたりする点では医療機関で行う方が良いように思います。
2017年にオーストラリアのニューサウスウェールズ大学のBuhagiarらは、TKA術後患者165人を対象にRCTを行っています。
10日間の入院リハ+8週間の専門家がモニターしている在宅リハプログラムと、8週間の在宅リハのみで比較しており、6分間歩行速度や疼痛、QOLに差はなかったと報告しています。
今回紹介する論文は、上記のRCTを行ったニューサウスウェールズ大学のBuhagiarらが、「TKA術後は医療機関でリハするのと、家でリハするのはどっちが良いの?」という疑問を検証するために行ったシステマティックレビュー論文です。
2015年6月から2018年6月までの期間に発表された5本のRCT論文が抽出されています。
対象者は、術後6週間以内に医療機関でのリハまたは在宅でのリハを行っています、
結果として、
10週後
- 6分間歩行試験は、入院リハ>在宅リハ>通院リハ(群間差 在宅対入院:3.6m、在宅対通院:11.89m)の順で向上していたが、臨床的な有効な差ではなかった。
- 疼痛と機能障害は、入院リハ>在宅リハ>通院リハ(群間差 在宅対入院:1.21点、在宅対通院:0.15点)の順で改善していたが、臨床的な有効な差ではなかった。
52週後
- 6分間歩行試験は、在宅リハ>入院リハ>通院リハ(群間差 在宅対入院:13.5m、在宅対通院:25.37m)での順で向上していたが、臨床的に有効な差ではなかった。
- 疼痛と機能障害は、通院リハ>在宅リハ>入院リハ(群間差 在宅対通院:0.1点、在宅対通院:0.55点)の順で改善していたが、臨床的な有効な差ではなかった。
だそうです。
ただし、研究に偏りがあること、研究数が少ないこと、合併症について考慮していないことから、今後更なる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- TKA術後は、医療機関でリハをしようが、在宅でリハをしようが、効果の差はほぼない。
ということになります。
日本とは医療システムが異なるので、日本でも当てはまるかどうかは不明ですが、状態が安定しているTKA術後患者は医療機関でリハをしなくても良いのかもしれませんね。