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セッティング別リハ栄養② 急性期

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急性期、炎症、PICS|2022.1.6|最終更新:2022.1.6|理学療法士が執筆・監修しています

序文

前回はセッティング別での考え方の概要を見ていきました。今回からは、それぞれのセッティングでの考え方の詳しいところを見ていきたいと思います。

本記事でわかること

✅ 急性期は入院前の状態の影響を受けやすい

✅ 疾患の影響で栄養状態、身体機能の低下が速い

✅ 活動量や栄養量が制限されやすい

入院前の状態の影響を受ける

急性期病院の入院患者さんでは、入院時した時点で、すでに低栄養やサルコペニアの状態になっている方が少なくありません。先行研究では、入院時に低栄養状態だった患者さんは31%[1]、サルコペニアの患者さんは31%[2]、フレイルの患者さんは41%[3]と報告されています。また、急性期病院に入院している患者さんでは、口腔状態や嚥下機能が不良であることも多く、口腔環境不良は91%[4]、嚥下障害は82.4%[5]で認められたということが報告されています。さらに嚥下障害に関しての他の報告では、救急外来入院時に35%の患者さんが嚥下障害を有しており、退院後56週間後まで嚥下障害が残存していた患者さんが25%存在していたことも報告されています[6]。このように、急性期では入院した時点で低栄養やサルコペニア、口腔環境不良、嚥下障害を有している方が多いというのが大きな特徴と言えます。

疾患の影響を受ける

急性期病院に入院する患者さんは、急性感染症、慢性疾患の急性増悪、外傷など全身状態が不安定で炎症反応が強い状態になっています。炎症状態だと異化が亢進するため、筋肉量が減少します。先行研究では、サルコペニアではない患者さんが急性期病院に入院すると、15%の患者さんが入院中に新規にサルコペニアを発症したと報告されています[7]。また、急性期では治療が優先されるため、活動量が大幅に減少します。先行研究では、安静による廃用性筋萎縮は10日以内で大きいことが報告されています[8]。そのため、早い段階で活動量を漸増できるような対策を講じる必要があります。

急性疾患による著しい筋肉量、筋力、身体機能の低下はICU-AWPICSと呼ばれています。ICU-AWは全身炎症による多臓器不全、安静や鎮静による活動量低下、急性ストレスやインスリン抵抗性による高血糖、ステロイドや筋弛緩薬の使用などで生じると言われています。急性疾患に罹患した際には、これらの要因は避けることが難しいため、できる範囲で栄養状態や運動量を確保し、筋肉量、筋力、身体機能の低下を緩やかにしていく必要があります。

 

活動や栄養の影響を受ける

急性期、特に重症な患者さんでは、身体内部に蓄積されている内因性のエネルギーが優先的に利用されます。そのため、外からエネルギーを摂取しても、十分に利用されません。むしろ、外からのエネルギーが身体への負担となり、全身状態を悪化させる要因にもなり得ます。このような背景から、重症の患者さんでは、栄養量を制限して提供されることが多いです。また、重症な患者さんでは、意識レベルが低い方や、人工呼吸器等による全身管理によって鎮静をかけられている患者さんも多くいらっしゃいます。そのような患者さんでは、経口や経鼻による経腸栄養は逆流や嘔吐のリスクになるため、末梢静脈からの輸液のみになることが多いです。末梢輸液のみでは、エネルギーや各栄養素は不足してしまうため、必然的に栄養状態は悪化してしまいます。

活動に関しても、急性期の患者さんでは、治療が優先されるため、安静が強いられることが多いです。また、安静の指示が出ていなくても、ベッド以外に居場所がなければ、ベッド周囲のみでの療養生活となってしまうため、活動量は減少してしまいます。さらに、急性期病院では、療法士の数が患者数に対して少ない施設が多いため、療法士の介入機会も少なくなってしまい、活動量を増やすことが難しい状態にあります。最近ではICU専従の療法士も増えてきています。また、電気刺激など物理療法を用いて筋萎縮を予防しようとする技術も開発されています。いずれもまだ発展途上にあるため、今後研究が進んでいくことを期待しています。

おわりに

今回は、急性期におけるリハ栄養的な視点での考え方を見ていきました。急性期では低栄養やサルコペニアがある一定数生じるのは仕方がない部分もありますので、いかに悪化を緩やかにし、ギアチェンジのタイミングを逃さないようにすることが大切になります。

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参考文献

[1] Pourhassan et al. Appetite. 2021 Jun 14;105470

[2] Hao et al. Australas J Ageing. 2018 Mar;37(1):62-67

[3] Maguet Intensive Care Med. 2014 May;40(5):674-82

[4] Shiraishi et al. J Nutr Health Aging. 2020;24(10):1094-1099

[5] Nozal et al. J Am Med Dir Assoc. 2020 Dec;21(12):2008-2011

[6] Hansen et al. Geriatrics (Basel). 2021 Apr 26;6(2):46

[7] Martone et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2017 Dec;8(6):907-914

[8] Wall et al. Ageing Res Rev. 2013 Sep;12(4):898-906