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【心不全と栄養】水分、塩分制限に本当に効果はある?

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心不全, 水分, 栄養|2020.11.21|最終更新:2022.03.12|理学療法士が監修・執筆しています

本記事の結論

  • 心不全患者に対する塩分制限には体重減少に軽微な効果を認める。
  • 心不全=水分制限・塩分制限ではない。

✅本記事を読む前に…

・対象は成人も含める。心不全患者に当てはめるのはよく考える必要がある。

・塩分、水分ともに摂取量が記載されていない=あくまで推定量にしかならない。

今回は以上の点を踏まえて、論文をみていきます。

はじめに

心不全は全世界で約2300万人が罹患していると言われており、心不全患者の46%が栄養不良状態であることが報告されています[1]。

 

心不全患者の栄養不良には全身の鬱血(消化管浮腫、肝腫大)による吸収不良、薬物療法の副作用慢性炎症カテコールアミン濃度の上昇などが関連しており、食欲不振、早期の満腹感、味覚の変化、吐き気などの症状を生じさせることで栄養不良を誘発します[2]。

 

心不全患者の栄養不良の原因の1つであるうっ血症状に対しては、水分やナトリウムの摂取量を減らすことが有効と考えられていますが、その効果については相反する報告がされており、コンセンサスが得られていませんでした[3]

 

今回紹介する論文は「心不全患者に対する水分、ナトリウム制限の効果は?」という疑問に応えてくれる論文です[4]

 

研究概要

2021年にブラジルのSimãoらの研究チームは、2020年6月までに登録されている22本の論文を解析しています。

 

対象

対象者数:10~410人。
介入期間:6〜336日間。

 

介入内容

ナトリウム制限:800~2300mg。
水分制限:800~1500mL/日。
対照群:通常ケア(水分、ナトリウム制限に関する一般的な指導)

結果

水分制限のみ vs 通常ケア

影響あり 影響不明
  • 口渇感
  • 体重増加

水分制限&ナトリウム制限 vs 通常ケア

影響あり 影響不明
  • エネルギー摂取量減少
  • 口渇感
  • 体重変動
  • 血清ナトリウム濃度

塩分制限 vs 通常ケア

影響あり 影響不明
  • 体重減少

ただし、対象者や介入内容にバラつきがあるため、更なる研究が必要と述べられています。

 

まとめ

[4]の論文では、塩分制限は軽微な効果がありそうですが、
水分制限は体重の増加やエネルギー摂取量の減少のつながる可能性があるので、指導する際には注意が必要ということですね。

 

心不全=水分制限、塩分制限と考える方はまだ多いと思います。

食事のアドバイスをする際には、
アドバイスをする内容が最新のエビデンスに基づいているかの確認が必要です。

現役心リハ指導士からの一言メモ 


本記事冒頭にもあるように、日本の心不全ガイドラインでは

塩分制限に関して明確なエビデンスは明記されていません。

 

しかし、実際には塩分6g/日以下での栄養指導はよく行われます。
塩分制限することで食事摂取量が低下することもありますので、その場合は通常食に戻すこともあります(特に元々痩せ型だったりstageDの末期に近い方など)。

 

体重の減少が食事摂取量低下によるものか利尿によるものかという判断は、
心不全症状(うっ血症状)が改善しているかどうかになってくると思います。

 

水分制限はトルバプタン(薬名:サムスカ)などのおかげで、
以前と比べて制限をしない病院が多いと思います。

 

結局のところ、体重観察が簡易的です。
例えば3L程度の水分を摂取して、翌日に体重増加なければよし。といった感じです。

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参考文献

[1]Lv, et al. PLoS One. 2021 Oct 28;16(10):e0259300.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34710169/

[2] Rahman, et al. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2016 May;40(4):475-86.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25634161/

[3]牧田 他. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版). 2021年3月27日発行.
https://www.jacr.jp/medical_personnel/guidline/

[4] Simão, et al. Clin Nutr ESPEN. 2021 Oct;45:33-44.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34620336/

 

この記事のライター
宇野勲先生