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咀嚼、喉頭挙上、逆流|2023.5.19|最終更新:2023.5.19|理学療法士が執筆・監修しています
姿勢、体幹の重要性を把握する。
前回は先行期から準備期までの過程で理学療法士が関われるポイントをまとめました。今回は口腔期から食道期までをまとめます。実際の臨床現場では、様々な要因で多種多様な症候が見られます。ここで紹介するポイントはあくまで一部分でありますので、予めご了承ください。
✅ 舌の動きも姿勢と関連している ✅ 飲み込む力を発揮するには体幹の安定性が大切 ✅ 姿勢が悪いと飲み込んだ後も誤嚥の危険性が高い |
口腔期(口に入れた後の食事の状態)
口腔期は、準備期で形成された食塊を口腔から咽頭に運ぶまでの過程です。閉口した状態を維持したままで舌が硬口蓋に密着し、舌筋の運動によって食塊が移送されます。また、この段階では、準備期で形成された食塊をより飲み込みしやすい形態に変化させることで、嚥下が円滑に行えるようになります。この時期で重要となるのが、舌圧、重力、下咽頭の陰圧です。いずれも不良姿勢によって悪影響を受けるため、姿勢調節能力が必要になります。
症候 | 介入例 |
食塊を送り込めない。 | 舌の可動性、舌圧が低下している:
姿勢や舌の動きの改善が難しい場合:
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咽頭期(口の中から飲み込みへ)
咽頭期は、食塊が咽頭を通り、食道の入口まで移動する過程です。この時期に重要なことは、舌骨と喉頭が挙上することで喉頭を閉鎖し、食物が気道に入ることを防ぐことです。以前も記載しましたが、舌骨は固定されておらず、様々な方向から筋肉が付着し、浮遊している状態になっています。
そのため、姿勢の変化や筋緊張の不均衡が生じると、舌骨の位置が変化し、舌骨の円滑な動きが妨げられてしまいます。また、この時期は喉頭が閉鎖されるため「嚥下性無呼吸」と呼ばれる呼吸停止期があります。
呼吸を停止するためには、呼吸機能が保たれていることが必要になります。さらに、嚥下と呼吸のパターンは呼気-嚥下-呼気と、呼気で始まり呼気で終わっているため、嚥下の前に十分な吸気が行えることが大切になります。
呼吸器疾患や心疾患を有している方だけでなく、フレイル高齢者では呼吸機能が低下している方が多いため、嚥下の前後の呼吸状態の変化にも目を向ける必要があります。
症候 | 介入例 |
嚥下をスムーズに開始できない。
(咽頭圧を高めることができない) |
舌圧が弱く、舌を咽頭後壁に押しつけることができない:
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喉仏(甲状軟骨)の動きが悪い。
(喉頭挙上が十分に行えない) |
舌骨、喉頭の可動性が低下している:
頭頸部伸展位になっている:
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嚥下の前、中、後のいずれかで何度もむせる。
咳が弱い。 |
喉頭挙上が不十分:
上記介入を行う。 咳嗽力が弱い:
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食道期(胃までの食事の移動)
食道期は、食塊が食道入口部から胃に到達するまでの過程です。食道を食塊が通過した後は、食道括約筋は収縮し、逆流を防止します。この時に体幹が正中位を保持できないと、胃内圧が上昇したり、逆流防止弁が緩んでしまったりするため、逆流が生じ、逆流した胃内容物を誤嚥することで肺炎を生じるリスクが高くなります。
症候 | 介入例 |
嚥下後に嘔気や胸やけがある。 (逆流がある) |
過度な体幹前傾位になっている:
体幹が側方に傾いている:
|
おわりに
今回は口腔期から食道期までの過程で、理学療法士の視点でのポイントをまとめました。冒頭にも記述しましたが、ここで紹介している症候や介入例はあくまで一部分です。実際の場面では、様々な因子が複雑に絡み合って表出されています。個別性が高いため、エビデンスとしてはまだ十分ではありませんが、患者さん個々に合わせた評価、介入を行う必要があります。
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参考文献
[1] 内田学 他. 姿勢から介入する摂食嚥下 脳卒中患者のリハビリテーション. MEDICAL VIEW, 2017.