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嚥下理学療法⑧ 頸部周囲の評価

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喉頭位置、舌骨上筋群、頭頸部可動域|2023.4.7|最終更新:2023.4.7|理学療法士が執筆・監修しています

序文

 前回は、摂食嚥下で重要となる体幹機能の評価方法についてまとめました。今回は、喉頭位置や舌骨上筋群、頸部可動域といった、主に咽頭期に関わる機能の評価方法をまとめました。

本記事でわかること

✅ 喉頭位置が下がっていると飲み込みにくい

✅ 頭が枕から持ち上がらないときは要注意

✅ 頸の動きは飲み込みやすさに影響する

相対的喉頭位置

 喉頭の位置は加齢に伴い低下します。この位置変化は、舌骨下筋群が短縮することで生じています[1]。相対的喉頭位置は、喉頭が頸椎や顎に対してどのような位置にあるかを示す指標です。一般的に、正常な喉頭位置は頸椎の第3~4椎間孔のレベルにあります。しかし、喉頭が低い位置にある場合、喉頭挙上に時間がかかるため、喉頭蓋閉鎖や食道入口部開大が十分に行えなくなり、誤嚥のリスクが高くなります。喉頭位置の変化を評価することで、嚥下反射の時に喉頭挙上がスムーズに行えるかを推測することができます。

測定方法

測定肢位:側臥位。
測定方法:
①オトガイと甲状軟骨上端の距離(GT)と甲状軟骨上端と胸骨上端との距離(TS)を測定。
②痛みが出ない範囲で頸部を最大伸展位に保ち、舌骨上筋、下筋が伸長されていることを確認。
③テープメジャーで各距離を測定。
④5mm単位のメモリの最も近い値を測定値とする。
GT/(GT+TS)の計算式で算出した数値を小数点第三位で四捨五入した数値を相対的喉頭位置として用いる。

基準値

若年者:0.34
高齢者:0.41

GSグレード(舌骨上筋群の筋力)

 舌骨上筋群の筋力は、喉頭挙上に重要な役割を持っています。舌骨上筋群の筋力が低下すると、喉頭挙上が十分に行えなくなるため、喉頭蓋閉鎖や食道入口部開大が十分に行えなくなり、誤嚥するリスクが高くなります。

測定方法

測定肢位:背臥位
測定方法:
①頸部を他動的に最大前方屈曲位にする。
②下顎を引いて保持するように指示し、検査者は手を離す。
③自力で静止保持できるところまで頭部が落下する程度で判定する。

判定基準[2]

1 完全落下 途中で保持できず、床上まで落下する。
2 重度落下 頸部屈曲可動域の1/2以上落下するが止まる。
3 軽度落下 頸部屈曲可動域の1/2以内で止まる。
4 静止保持 最大屈曲位で落下せずに止まる。

静止保持:正常
完全落下~軽度落下:筋力低下あり

頸部可動域

 頸椎の関節可動域が十分でない場合、摂食嚥下の制限が生じる可能性があります。特に、頸椎の伸展、屈曲、側屈の動きが制限されると、嚥下をするための適切な姿勢をとることができなくなります。また、頸椎の回旋が制限されると、脳血管障害などで片側に麻痺があるような場合に、嚥下するときに代償動作として頭頸部を動かすことが困難になります。
 頸椎の関節可動域が過剰に大きい場合にも、摂食嚥下に悪影響を与えることがあります。例えば、頸椎が過度に伸展すると、嚥下の際に気管に食物が入りやすくなってしまい、誤嚥を引き起こす可能性が高くなります。また、頸椎の過度の屈曲や回旋が生じると、食道や気管を圧迫して、呼吸や嚥下の制限を引き起こすことがあります。
 頸椎の関節可動域が左右差なく均等であることも重要です。片側の可動域が他方に比べて制限されている場合、嚥下時に偏った筋肉の使い方になってしまいます。これは、嚥下時に必要な筋活動のバランスを崩し、嚥下障害を引き起こす可能性があります。
 以上のように、頸椎の関節可動域は、摂食嚥下にとって非常に重要な要素であるといえます。適切な可動域を維持することが、正常な嚥下機能を保つために必要であると考えられています。

測定方法[3]

屈曲ー伸展

測定肢位:座位
基本軸:肩峰を通る床への垂直線
移動軸:外耳孔と頭頂を結ぶ線
参考可動域:屈曲0−60度、伸展0−50度

回旋

測定肢位:座位
基本軸:両側の肩峰を結ぶ線への垂直線
移動軸:鼻梁と後頭結節を結ぶ線
参考可動域:左右0−60度

側屈

測定肢位:座位
基本軸:第7頚椎棘突起と第1仙椎の棘突起を結ぶ線
移動軸:頭頂と第7頚椎棘突起を結ぶ線
参考可動域:左右0−50度

※詳細は日本リハビリテーション医学会が公表している「関節可動域表示ならびに測定法」を参照

おわりに

 今回は、摂食嚥下に関係する身体機能面の評価のうち、喉頭位置、舌骨上筋群の筋力、頭頸部の可動域についてみてきました。いずれも特別な機器を使用せず、ベッドサイドでも測定できる評価方法なので、嚥下機能の指標の1つとして評価してみてください。

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参考文献

[1] 吉田剛、他. 喉頭位置と舌骨上筋群の筋力に関する臨床的評価指標の開発およびその信頼性と有用性. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌(7), p143-150, 2003.

[2] 荒川武士、他. 脳血管障害者の嚥下障害に関連する運動要因の検討. 理学療法学(46), p1-8, 2019.

[3] 日本リハビリテーション医学会, 関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂). https://www.jarm.or.jp/member/kadou.html