会員登録はこちら

まずは14日間無料体験
すべてのコンテンツが利用可能です

サルコペニア、フレイルによる摂食嚥下障害の評価方法5選【嚥下理学療法⑩】

[no_toc]

サルコペニア摂食嚥下フレイル|2023.4.21|最終更新:2023.4.21|理学療法士が執筆・監修しています

サルコペニア・フレイルによる摂食嚥下障害の評価方法

前回は摂食嚥下と関連が深い呼吸機能の評価についてまとめました。今回は、口腔機能や嚥下関連筋群と関連しているサルコペニア、フレイルの評価方法について見ていきたいと思います。

本記事でわかること

✅ サルコペニアは特別な機器がなくても評価ができる

✅ サルコペニアによって生じる摂食嚥下障害の評価も必要

✅ フレイルには複数の評価方法がある

サルコペニア

摂食嚥下障害を有する高齢者は、嚥下に対する努力量が増えるため、十分な栄養素を摂取できない可能性があります。その結果、栄養状態が悪化し、筋肉量や筋力の低下が起こり、サルコペニアを引き起こすリスクが高まります。また、サルコペニア高齢者は、筋肉量や筋力の低下により嚥下機能が低下する可能性があるため、摂食嚥下障害のリスクが高くなります。このように、摂食嚥下障害とサルコペニアは相互に関連しており、高齢者の健康維持のためには、両者を同時に管理することが必要です。

 

評価方法①:AWGS2019[1]

 

一般の診療所や地域での評価

①症例の抽出

  • 下腿周囲長:男性<34cm、女性<33cm
  • SARC-F≧4
  • SARC-Calf≧11

②評価

  • 筋力(握力):男性<28kg、女性<18kg
  • 身体機能(5回椅子立ち上がりテスト)≧12秒

③判定

  • 筋力と身体機能いずれか、または両方該当=サルコペニアの可能性あり。

装備の整った種々の医療機関や研究を目的とした評価

①症例の抽出

  • 身体機能低下または制限
  • 意図しない体重減少
  • 抑鬱気分
  • 認知機能障害
  • 繰り返す転倒
  • 栄養障害
  • 慢性疾患(心不全、COPD、糖尿病、CKDなど)
  • 下腿周囲長:男性<34cm、女性<33cm
  • SARC-F≧4
  • SARC-Calf≧11

②評価

  • 筋力(握力):男性<28kg、女性<18kg
  • 身体機能(5回椅子立ち上がりテスト)≧12秒
  • 骨格筋量(DXA):男性<7.0kg/m2、女性<5.4kg/m2
  • 骨格筋量(BIA):男性<7.0kg/m2、女性<5.7kg/m2

③判定

  • 筋肉量低下+筋力低下または身体機能低下=サルコペニア
  • 筋肉量低下+筋力低下+身体機能低下=重度サルコペニア

 

 

評価方法②:SARC-F、SARC-CalF

 

SARC-F

4-5kgの荷物を持ち上げて運ぶのはどれくらい大変ですか?
  • 困難ではない:0点
  • いくらか困難:1点
  • 非常に困難/できない:2点
部屋の中を歩くのはどのくらい大変ですか?
  • 困難ではない:0点
  • いくらか困難:1点
  • 非常に困難/できない:2点
椅子やベッドから移動するのはどのくらい大変ですか?
  • 困難ではない:0点
  • いくらか困難:1点
  • 非常に困難/できない:2点
階段を10段昇るのはどのくらい大変ですか?
  • 困難ではない:0点
  • いくらか困難:1点
  • 非常に困難/できない:2点
この1年で何回転倒しましたか?
  • なし:0点
  • 1−3回:1点
  • 4回以上:2点

SARC-CalF

SARC-Fに下腿周囲長のスコア(カットオフ値(男性<34cm、女性<33cm)以上:0点、未満:10点)を加えたもの。

判定基準:

AWGS2019に準ずる。

 

評価方法③:サルコペニアの摂食嚥下障害[2]

 

摂食嚥下障害がサルコペニアによって生じているかを判断するためには、以下に示す過程で評価を進めていくことが推奨されています。しかし、フローを最後まで進んだとしても、現時点ではサルコペニアの摂食嚥下障害の可能性までしか言及できないという点には注意が必要です。

65歳以上かつ従命可能

握力低下 and/or 歩行速度低下あり

全身の筋力低下あり

摂食嚥下機能の低下あり

明らかな摂食嚥下障害の原因疾患がない

嚥下関連筋群の筋力低下あり

低下なし、または測定不可:サルコペニアの摂食嚥下障害の可能性あり
低下あり:サルコペニアの摂食嚥下障害の可能性が高い

フレイル

フレイルは高齢者によく見られる状態であり、摂食嚥下障害を持つ高齢者ではさらに有病率が高くなります。加齢に伴い筋力低下が進行すると、噛む力や飲み込む力も低下し、口腔機能や嚥下機能が低下します。口腔機能や嚥下機能が低下すると、十分な栄養摂取が困難になるため、さらに筋力が低下しフレイルが悪化していきます。フレイルが進行すると、高齢者の健康状態が急速に悪化する危険性が高くなります。そのため、摂食嚥下においてもフレイルの早期発見と適切な対策が必要となります。

 

評価方法①:J-CHS基準[3]

 

フレイルの中で最も一般的に用いられる評価方法です。Friedが作成したCHS基準[4]を元に、Satakeらによって日本語版として作成されたものです[3]。しかし、多面的な要素を持つフレイルの中でも、身体面を中心に評価していることに注意が必要です。

体重減少 6ヶ月間で2kg以上の意図しない体重減少がある。
筋力低下(握力) 男性28kg未満、女性18kg未満。
疲労感 (ここ2週間)理由もなく疲れたような感じがする。
歩行速度 1.0m/秒未満。
身体活動 ①軽い運動や体操をしている。
②定期的な運動やスポーツをしている。
①、②いずれも「週に1回もしていない」と回答。

判定基準:

  • 5項目のうち3項目以上該当:フレイル
  • 1−2項目に該当:プレフレイル

 

 

評価方法② :基本チェックリスト[5]

 

日本の介護予防事業で用いられることが多い評価ツールです。身体的、社会的、精神心理的全ての側面を包括的に評価することができます。

各質問項目は以下のように分類ができます。

  • 1−5:日常生活関連動作について
  • 6−10:運動器の機能について
  • 11、12:栄養状態について
  • 13−15:口腔機能について
  • 16、17:社会参加について
  • 18−20:認知機能について
  • 21−25:うつ状態について
1 バスや電車で1人で外出していますか? はい:0点

いいえ:1点

2 日用品の買い物をしていますか? はい:0点

いいえ:1点

3 預貯金の出し入れをしていますか? はい:0点

いいえ:1点

4 友人の家を訪ねていますか? はい:0点

いいえ:1点

5 家族や友人の相談にのっていますか? はい:0点

いいえ:1点

6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか? はい:0点

いいえ:1点

7 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか? はい:0点

いいえ:1点

8 15分くらい続けて歩いていますか? はい:0点

いいえ:1点

9 この1年間に転んだことがありますか? はい:1点

いいえ:0点

10 転倒に対する不安は大きいですか? はい:1点

いいえ:0点

11 6ヶ月間で2−3kg以上の体重減少がありましたか? はい:1点

いいえ:0点

12 BMI:18.5未満 はい:1点

いいえ:0点

13 半年前に比べて、固いものが食べにくくなりましたか? はい:1点

いいえ:0点

14 お茶や汁物などでむせることがありますか? はい:1点

いいえ:0点

15 口の渇きが気になりますか? はい:1点

いいえ:0点

16 週に1回以上外出していますか? はい:0点

いいえ:1点

17 昨年と比べて外出の回数は減っていますか? はい:1点

いいえ:0点

18 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われますか? はい:1点

いいえ:0点

19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか? はい:0点

いいえ:1点

20 今日が何月何日かわからない時がありますか? はい:1点

いいえ:0点

21 (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない はい:1点

いいえ:0点

22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった はい:1点

いいえ:0点

23 (ここ2週間)以前は楽にできていたことが、今はおっくうに感じられる はい:1点

いいえ:0点

24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない はい:1点

いいえ:0点

25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする はい:1点

いいえ:0点

判定基準[6]:

  • 運動機能低下:6−10のうち3項目以上該当
  • 低栄養:11、12のうち全てに該当
  • 口腔機能低下:13−15のうち2項目以上該当
  • 閉じこもり状態:16、17のうち1項目以上該当
  • 認知機能低下:18−20のうち1項目以上該当
  • うつ状態:21−25のうち2項目以上該当

評価方法③ :Clinical Frail Scale(CFS)[7]

 高齢者の状態1(非常に健常である)〜9(人生の最終段階)の9段階で評価する評価方法です。CFSmの各段階には記述的な説明が付いているため、誰でも簡便に評価することができます。一方で、評価者の主観が含まれるため、評価者間差が生じる可能性も指摘されています。

1 非常に健常である 頑健、活動的、精力的、意欲的な人々である。これらの人々は通常、定期的に運動を行っている。同年代の中では、最も健常である。
2 健常 活動性の疾患の症状はないものの、カテゴリー1ほど健常ではない。季節などによっては運動をしたり非常に活発だったりする。
3 健康管理がされている 時に症状を訴えることがあっても、医学的な問題はよく管理されている。日常生活での歩行以上の運動を普段は行わない。
4 ごく軽度の虚弱 自立からの移行の初期段階である。日常生活で介護は必要ないが、症状により活動性が制限される。よく「動作が鈍くなった」とか、日中から疲れていると訴える。
5 軽度の虚弱 これらの人々は、動作が明らかに鈍くなり、高度なIADL(金銭管理、交通機関の利用、重い家事)では介助が必要となる。軽度の虚弱のため、買い物や一人で外出すること、食事の準備、服薬管理が徐々に障害され、軽い家事も出来なくなり始めるのが特徴である。
6 中等度の虚弱 屋外での全ての活動や家事では介護が必要である。屋内でも階段で問題が生じ、入浴では介護が必要である。着替えにも僅かな介助(声かけ、見守り)が必要となることがある。
7 重度の虚弱 どのような原因であれ(身体的あるいは知的な)身の回りのケアについて完全に要介護状態である。そのような状態であっても、状態は安定しており(6ヶ月以内で)死亡するリスクは高くない。
8 非常に重度の虚弱 完全に要介護状態であり、人生の最終段階に近づいている。典型的には、軽度の疾患からでさえ回復できない可能性がある。
9 人生の最終段階 死期が近づいている。高度の虚弱に見えなくても、余命は6ヶ月未満であればこのカテゴリーに入る(人生の最終段階にあっても多くの人は死の間際まで運動ができる)。

 

おわりに

今回はサルコペニアとフレイルの評価方法についてまとめました。サルコペニアの評価方法については、日本ではAWGS2019を使用すれば問題ありませんが、フレイルについては評価方法が複数存在するため、それぞれの評価方法の特徴を加味して利用する必要があります。

本記事の執筆・監修・編集者

✅記事執筆者(宇野先生)のTwitterはこちら↓↓

✅記事監修(✅編集(てろろぐ

関連する記事 

✅ 前回記事はこちら

✅ 栄養に関する人気記事はこちら

あなたにおすすめの記事

参考文献

[1] MChen LK, Woo J, Assantachai P, et al:Asian working group for sarcopenia: 2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc 2020; 21: 300-307.

[2] 森隆志. サルコペニアの摂食嚥下障害. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 2016; 31(4): 949-954.

[3] Satake S, Shimada H, Yamada M, et al: Prevalence of frailty among community-dwellers and outpatients in Japan as defined by the Japanese version of the cardiovascular health study criteria. Geriatr Gerontol Int 2017; 17(12): 2629-2634.

[4] Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al: Cardiovascular health study collaborative research group. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56(3): M146-156.

[5] Satake S, Senda K, Hong YJ, et al: Validity of the kihon checklist for assessing frailty status. Geriatr Gerontol Int 2016; 16(6): 709-715.

[6] 厚生労働省, 介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン. P67.

[7] Rockwood K, Song X, MacKnight C, et al: A global clinical measure of fitness and frailty in elderly people. CMAJ 2005; 173(5): 489-495.