[no_toc]
歩数、活動量、MCID|2023.9.1|最終更新:2023.9.1|理学療法士が執筆・監修しています
序文
前回はtime up and goテストについて、測定方法とMCIDについてまとめました。今回は歩数について見ていきます。歩数は地域や外来では活動量の指標として用いられています。しかし、病院や施設で用いられていることはあまり多くないのではないでしょうか。実際に入院や入所されている方を対象とした調査は限られているため、今後研究をしたいという方がいらっしゃいましたら、新規性のある領域として社会に貢献できるのではないかと思います。
✅ 歩数は健康維持の指標 ✅ 測定に使うデバイスの特徴を知っておく ✅ 歩数のMCIDはまだ少ない |
歩数と予後
歩数は様々な健康リスクとの関連が報告されています。一般成人を対象とした研究を適格基準としたシステマティックレビューでは、1日当たりの歩数が1000歩多くなるごとに、全ての原因による死亡、心血管疾患発症リスクが減少することが報告されています[1]。アメリカの国民健康栄養調査に登録されている40歳以上の一般成人では、歩数が多いほど、平均追跡期間10.1年の死亡リスクが低いことが報告されています[2]。イギリスのバイオバンクに登録されている40-79歳の一般成人を対象とした調査では、1日の歩数が9826歩だと、追跡期間6.9年の間に認知症を新たに発症するリスクが最も低かったことが報告されています[3]。亜急性期の入院している脳卒中患者さんを対象とした調査では、1日の歩数が多いことが歩行自立度の予測因子であり、自立歩行を予測するための 1 日の歩数のカットオフ値は4286歩だったことが報告されています[4]。心臓手術を受けた患者を対象とした調査では、入院中の歩数は心疾患による再入院の予測因子であり、心疾患による再入院を予測するカットオフ値は1308歩だったことが報告されています[5]。
以上のように、歩数は死亡や疾患リスク、歩行自立度など様々な予後と関連しており、重要な予後予測指標であることが明らかになっています。
歩数の測定方法
準備物
- 計測機器(歩数計、活動量計、3次元加速度計など)
- 行動記録(必要があれば)
測定方法
- 起床時に計測機器を身体の所定の位置に取り付ける(機器によって取り付ける場所が異なるので注意)。
- 入浴以外は計測機器を装着した状態で日常生活を送る。
- 就寝時に取り外す。
- 1週間の歩数を記録し、平均値を1日の歩数として記録する(最大値と最小値を除いた5日間の平均値を1日の歩数とする方法もある)。
注意点
- 歩数計や活動量計といったデバイスは、その製品によって取り付ける部位や測定の制度が異なるので、実際に測定する前に、使用するデバイスの特徴を把握しておく。
- ちゃんと装着できていなかったり、自転車や車椅子を自走で移動する方では、活動量の過小評価につながる可能性がある。
歩数とMCID
呼吸器疾患
呼吸リハビリテーションを行っているCOPD患者を対象とした調査では、患者が改善したと感じた歩数の変化は+427歩で、悪化したと感じた歩数の変化は-456歩だったことが報告されています[6]。
歩数計装着とWEBサイトでの身体活動促進介入を行ったCOPD患者を対象とした調査では、医療イベント発生に対するMCIDは1日当たり350〜1100歩だったことが報告されています[7]。
循環器疾患
12週間の運動プログラムを行った末梢動脈疾患患者を対象とした調査では、健康関連QOLの改善に対するMCIDは1211歩だったことが報告されています[8]。
神経筋疾患
多発性硬化症患者を対象とした調査では、歩行に関連する制限(MSWS-12またはPDDS)の変化を捉えることができるMCIDは1日当たり779歩、臨床または健康アウトカムに対するMCIDは1日当たり1455歩だったことが報告されています[9]。
おわりに
今回は歩数のMCIDについてまとめました。歩数のMCIDについての調査はまだ一部の疾患に限られており、MDCについてもpubmedに収載されている報告を調べる限りでは報告がほとんどありません。デバイスや環境条件など複数の要因が影響していることが考えられますが、今後研究が進み、MCIDが明らかになっていくことを期待しています。
本記事の執筆・監修・編集者
✅記事執筆者(宇野先生)のTwitterはこちら↓↓
地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7
— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022
関連する記事
✅ 前回記事はこちら
✅ 栄養に関する人気記事はこちら
あなたにおすすめの記事
参考文献
[1] Hall, et al. Systematic review of the prospective association of daily step counts with risk of mortality, cardiovascular disease, and dysglycemia. Int J Behav Nutr Phys Act. 2020 Jun 20;17(1):78.
[2] Saint-Maurice, et al. Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. JAMA. 2020 Mar 24;323(12):1151-1160.
[3] Cruz, et al. Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia in 78 430 Adults Living in the UK. JAMA Neurol. 2022 Oct 1;79(10):1059-1063.
[4] Kubo, et al. Daily steps are associated with walking ability in hospitalized patients with sub-acute stroke. Sci Rep. 2022 Jul 17;12(1):12217.
[5] Takahashi, et al. In-patient step count predicts re-hospitalization after cardiac surgery. J Cardiol. 2015 Oct;66(4):286-91.
[6] Polgar, et al. Minimal clinically important difference for daily pedometer step count in COPD. ERJ Open Res. 2021 Mar 22;7(1):00823-2020.
[7] Teylan, et al. Physical activity in COPD: Minimal clinically important difference for medical events. Chron Respir Dis. 2019 Jan-Dec;16:1479973118816424.
[8] Gardner, et al. Minimal clinically important differences in daily physical activity outcomes following supervised and home-based exercise in peripheral artery disease. Vasc Med. 2022 Apr;27(2):142-149.
[9] Motl, et al. Clinical importance of steps taken per day among persons with multiple sclerosis. PLoS One. 2013 Sep 4;8(9):e73247.