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理学療法で用いる評価の方法と結果の妥当性 関節可動域① 肩関節

ROM、肩、MDC|2023.11.24|最終更新:2023.11.24|理学療法士が執筆・監修しています

序文

 前回は下肢機能を全般的に評価することができる検査バッテリーであるSPPBについてまとめました。今回からは関節可動域について見ていきます。初回は肩関節の可動域についてです。肩関節の詳細な機能解剖についてはここでは省略しますが、肩関節の可動域は日常生活やスポーツ場面で重要な機能の1つです。肩関節の可動域が持つ意味を理解することで、患者さんの生活や活動を意識した介入が行えると思います。

本記事でわかること

✅ 肩関節可動域は日常生活、傷害予防に重要

✅ オーバーヘッドスポーツでは、回旋可動域が大切

✅ 肩関節可動域のMDCは研究によってバラつきがある

肩関節可動域とADL、障害発生

日常生活

 ADLにおいて、どれくらいの肩関節可動域が必要かを調査したシステマティックレビューでは、ADLを制限されない可動域として、以下の報告がされています[1]。

屈曲

  • 約140度:肩関節よりも高い位置へのリーチを伴う動作(棚の物を取るなど)、髪をとかす
  • 約125度:頸部に触れる
  • 約110度:後頭部に触れる
  • 約85度:グラスで飲水する、電話を使う、歯を磨く
  • 約80度:スプーンで食べる、鼻に触れる
  • 約65度:口に触れる、髪を洗う
  • 約50度:ドアを開ける、顔を洗う、おぼんを持つ
  • 約35度:フォークで食べる、ストローで飲水する

伸展

  • 約60度:背中を洗う
  • 約50度:臀部に触れる
  • 約45度:シャツを着る
  • 約15度:臀部の清拭

外転

  • 約130度:対側の頭部に手を伸ばす
  • 約125度:髪をとかす
  • 約80度:電話を使う
  • 約70度:歯を磨く
  • 約50度:肩の高さに物を持ち上げる
  • 約40度:フォークで食べる、頭頂部に触れる
  • 約30度:グラスで飲水する、スプーンで食べる

内転

  • 116度:対側の腋窩を洗う

障害発生

 8-18歳の投手を対象に、シーズン前の肩関節可動域と障害発生に関する調査では、水平内転15度以上、内旋13度以上の左右差があると、障害発生がそれぞれ4倍と6倍高くなることが報告されています[2]。17歳以下のバドミントン選手を対象とした調査では、12か月後の肩関節痛に対して、肩関節内旋55度以下がカットオフ値だったことが報告されています[3]。オーバーヘッドスポーツ選手を対象としたメタ解析では、水泳選手のシーズン前の肩関節外旋可動域93度未満または100度以上で障害発生リスクが高くなることが報告されています[4]。一方、バレーボール選手を対象としたシステマティックレビューでは、肩甲上腕関節内旋可動域は、肩関節痛や肩関節の傷害とは関連していなかったことが報告されています[5]。

肩関節可動域の測定方法

基本軸、移動軸は以下のサイトをご参照ください。

https://www.jarm.or.jp/member/kadou03.html

測定方法には、他動的に上肢を動かしてゴニオメーターをあてる方法以外にも、写真を撮って静止画から測定する方法、画像解析アプリを使用して測定する方法、水準器アプリを用いて測定する方法など、様々なデバイスを用いた方法があります。

肩関節可動域のMDC

 健常成人を対象とした調査では、静止画を用いて測定した肩関節屈曲可動域のMDCは、検査者内で5.5-8.3度、検査者間で2.0度だったことが報告されています[6]。

 健常成人を対象とした調査では、スマートフォンのスマートデジタル傾斜計を用いて測定した肩関節屈曲、外転、外旋それぞれのMDCは1.9度、2度、0.3度だったことが報告されています[7]。

 男子水泳選手を対象とした調査では、肩関節外旋のMDCは6.61度だったことが報告されています[8]。

 慢性の肩関節痛を有する18-45歳の患者を対象とした調査では、fleximetryを用いた肩関節可動域のMDCは、検査者内では15.80~25.18度、検査者間では13.82~31.97度だったことが報告されています[9]。

 腱板関連の肩関節痛を有する患者を対象とした調査では、肩関節外転のMDCは、痛みが誘発されるROMでは17.5度、最大ROMでは11.2度だったことが報告されています[10]。

 乳がんサバイバーを対象とした調査では、肩関節可動域のMDCは屈曲10.2度、水平屈曲8.4度、水平伸展13.6度、外転20.8度、内旋9.2度、外旋20.1度だったことが報告されています[11]。

おわりに

 今回は肩関節の可動域についてまとめました。肩関節は可動範囲が大きいために、様々な動作に重要な関節です。ただ、肩関節の動きには胸郭や脊椎の可動域も複合的に関係していますので、肩関節だけでなく、周辺の筋骨格系の可動性も確認する必要があります。冒頭でも述べましたが、肩関節の可動域は生活や活動に影響しやすい因子なので、肩関節自体に疾患がなかったとしても、可動域が制限されていないか評価し、必要があれば介入していくことが大切です。

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参考文献

[1]  Oosterwijk, et al. Shoulder and elbow range of motion for the performance of activities of daily living: A systematic review. Physiother Theory Pract. 2018 Jul;34(7):505-528.

[2] Shanley, et al. Preseason shoulder range of motion screening as a predictor of injury among youth and adolescent baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg. 2015 Jul;24(7):1005-13.

[3] Cejudo, et al. Risk Factors for, and Prediction of, Shoulder Pain in Young Badminton Players: A Prospective Cohort Study. Int J Environ Res Public Health. 2022 Oct 12;19(20):13095.

[4] Pozzi, et al. Preseason shoulder range of motion screening and in-season risk of shoulder and elbow injuries in overhead athletes: systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2020 Sep;54(17):1019-1027.

[5] Challoumas, et al. The volleyball athlete’s shoulder: biomechanical adaptations and injury associations. Sports Biomech. 2017 Jun;16(2):220-237.

[6] Beshara, et al. The Intra- and Inter-Rater Reliability of a Variety of Testing Methods to Measure Shoulder Range of Motion, Hand-behind-Back and External Rotation Strength in Healthy Participants. Int J Environ Res Public Health. 2022 Nov 4;19(21):14442.

[7] Boissy, et al. Trueness and Minimal Detectable Change of Smartphone Inclinometer Measurements of Shoulder Range of Motion. Telemed J E Health. 2017 Jun;23(6):503-506.

[8] Yoma, et al. The Effects Of Differing Density Of Swim-Training Sessions On Shoulder Range Of Motion and Isometric Force Production In National and University Level Swimmers. Int J Sports Phys Ther. 2023 Apr 1;18(2):375-387.

[9] Silva, et al. Intra- and inter-reliability of fleximetry in individuals with chronic shoulder pain. Phys Ther Sport. 2018 Jul:32:115-120.

[10] Wang, et al. Test-retest reliability of movement-evoked pain and sensitivity to movement-evoked pain in patients with rotator cuff-related shoulder pain. Braz J Phys Ther. 2023 Jul-Aug;27(4):100535.

[11] Rasmussen, Absolute and relative reliability of pain sensitivity and functional outcomes of the affected shoulder among women with pain after breast cancer treatment. PLoS One. 2020 Jun 3;15(6):e0234118.