社会的フレイル、呼吸器疾患、社会的サポート|2024.3.29|最終更新:2024.3.29|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- COPD患者では、社会性に関するサポートのニーズがある
- 社会性は転帰や自己管理を関連している
- 社会的サポートはCOPD患者の転帰や自己管理を改善する可能性がある
序文
前回は心疾患患者の社会性の課題と介入方法についてまとめました。今回は呼吸器疾患の代表的な疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の社会性についてまとめます。COPDは、慢性的な呼吸器疾患であり、世界中で多くの人々が苦しんでいます。この疾患は、患者の身体的健康だけでなく、メンタルヘルスや社会性にも深刻な影響を及ぼします。COPD患者の社会性への理解とサポートは、総合的な治療アプローチの重要な側面です。ここでは、COPD患者を例に社会性の特徴、影響を受ける要因、および医療従事者が患者の社会的健康をサポートするための介入方法についてまとめていきます。
呼吸器疾患患者の社会性
COPD患者のサポートニーズを調査したシステマティックレビューでは、COPD患者さんのサポートニーズには1) COPD の理解、2) 症状と投薬の管理、3) 健康的なライフスタイル、4) 感情と心配の管理 、5) COPDとともに前向きに生きる、6) 将来について考える、7) 不安とうつ病、8) 現実的なサポート、9) 仕事と住宅の資金調達、10) 家族と親密な関係、11) 社会生活とレクリエーション生活、12) 自立 、13) ナビゲーションサービスが含まれていたことが報告されています[1]。
COPD患者の社会経済的状況と予後との関連性を調査したシステマティックレビューでは、社会経済的状況が不良なほどCOPDの転帰が不良であることが報告されています[2]。
COPD患者10384人を対象に、社会的孤立と孤独の有病率を調査したところ、社会的孤立は12%、孤独は12%、両者の併存は3%存在していたことが報告されています[3]。
COPD患者75479人を対象に、社会的脆弱性指数(社会経済、世帯構成と障害、少数民族の地位と言語、住居の種類と交通手段)のレベルを調査したところ、社会経済、世帯構成と障害の脆弱性指数が高いことが報告されています[4]。
縦断的老化研究に登録されている4478人を対象に、社会的孤立や孤独と呼吸器疾患による入院リスクとの関連性を調査したところ、社会参加がなく一人暮らしの人は呼吸器疾患による入院リスクが高かったことが報告されています[5]。
COPD患者455人を対象に、外来呼吸リハビリテーションのアドヒアランスに影響する因子を調査したところ、近隣地域の社会経済的状況とアドヒアランスが関連していることが報告されています[6]。
COPD患者452人を対象に、不安と社会的サポートの関連性を調査したところ、手段的サポートを受ける、他人が必要なサポートを提供しなかったことへの失望、他人からの無愛想な態度や無神経な言動が、COPD患者の不安レベルの増加と関連していることが報告されています[7]。
COPD患者627人を対象に、社会的サポートとセルフマネジメントの関連を調査したところ、社会的サポートは直接的にセルフマネジメントの予測効果があることが報告されています[8]。
以上をまとめますと、
COPD患者の社会性の特徴には、社会的孤立や孤独が一定割合で見られ、社会経済的状況が悪いほどCOPDの転帰が不良である。
社会的サポートの有無がCOPD患者のセルフマネジメントや不安レベルに影響を与える。
これらの特徴は、COPD患者のサポートニーズの理解に重要であり、社会生活やレクリエーション活動への参加、家族や親密な関係の維持がCOPD患者の生活の質向上に寄与する可能性がある。
呼吸器疾患患者の社会性介入
COPD患者の社会的支援、社会的ネットワークと健康効果の関連性を調査したスコーピングレビューでは、社会的支援がエンタルヘルスや自己効力感に有効だったことが報告されています[9]。
COPD患者1831人を対象に、社会的サポートとCOPDの転帰との関連性を調査したところ、社会的サポートは生活の質、幸福度、徒歩距離が6分、呼吸困難軽減と関連していたことが報告されています[10]。
COPD患者1811人を対象に、健康の社会的決定要因(SDOH)のニーズと退院後の生活状況を調査したところ、SDOHニーズが充足していないとCOPDの自己管理が困難であり、入院回数が多い人の74%でSDOHニーズが満たされていませんでしたが、看護実践者/地域医療従事者の介入により対処できることが報告されています[11]。
COPD患者の介護者201人を対象に、介護負担と生活の質の関連因子を調査したところ、適切な社会的サポートとネガティブな対処スタイルの軽減が介護負担を軽減し、生活の質の改善に有効な可能性があることが報告されています[12]。
COPD患者282人を対象に、社会的サポートとセルフケア行動との関連を調査したところ、構造的社会的サポート(他者との同居、介護者の存在)は身体活動レベルの向上や呼吸リハビリテーションへのより多くの参加と関連していたことが報告されています[13]。
COPD患者160人を対象に、生活満足度に影響する因子を調査したところ、社会的サポートを充実させることが生活満足度を高めることが報告されています[14]。
以上をまとめますと、
COPD患者の社会性への介入方法として、社会的支援の提供が有効であり、メンタルヘルスや自己効力感、生活の質の向上に有効である。
看護実践者/地域医療従事者の介入や社会的サポート介入によって健康の社会的決定要因や介護負担の軽減を図ることができ、COPD患者の社会性にも良い影響を与える可能性がある。
構造的社会的サポートの強化が身体活動レベルや呼吸リハビリテーションへの参加を促進するため、COPD患者の社会性の向上と全体的な健康状態の改善につながる可能性がある。
おわりに
今回はCOPD患者の社会性について、特徴と介入についてまとめました。COPD患者の社会性に対する理解と支援は、患者の全体的な健康と生活の質の向上に不可欠なため、身体的健康だけでなく、患者の社会的健康にも着目することが重要です。適切な社会的支援、介護負担の軽減、および健康の社会的決定要因への対応は、COPD患者のセルフマネジメントの向上と総合的なウェルビーイングの促進に寄与します。COPD患者がより充実した生活を送るために、患者の社会性をサポートすることが大切です。
参考文献
[1]
Gardener, et al. Support needs of patients with COPD: a systematic literature search and narrative review. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Mar 26:13:1021-1035.
[2]
Gershon, et al. Chronic obstructive pulmonary disease and socioeconomic status: a systematic review. COPD. 2012 Jun;9(3):216-26.
[3]
Suen. et al. National Prevalence of Social Isolation and Loneliness in Adults with Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Ann Am Thorac Soc. 2023 Dec;20(12):1709-1717.
[4]
Carlson, et al. Linking Local-Level Chronic Disease and Social Vulnerability Measures to Inform Planning Efforts: A COPD Example. Prev Chronic Dis. 2023 Aug 31:20:E76.
[5]
Bu, et al. Social isolation and loneliness as risk factors for hospital admissions for respiratory disease among older adults. Thorax. 2020 Jul;75(7):597-599.
[6]
Oates, et al. Social Determinants of Adherence to Pulmonary Rehabilitation for Chronic Obstructive Pulmonary Disease. COPD. 2017 Dec;14(6):610-617.
[7]
Dinicola, et al. The role of social support in anxiety for persons with COPD. J Psychosom Res. 2013 Feb;74(2):110-5.
[8]
Zhao, et al. Unraveling the mediation role of frailty and depression in the relationship between social support and self-management among Chinese elderly COPD patients: a cross-sectional study. BMC Pulm Med. 2024 Feb 1;24(1):66.
[9]
Barton, et al. Social Support and Social Networks in COPD: A Scoping Review. COPD. 2015;12(6):690-702.
[10]
Turnier, et al. The influence of social support on COPD outcomes mediated by depression. PLoS One. 2021 Mar 17;16(3):e0245478.
[11]
Kearney, et al. A mixed methods study to inform and evaluate a longitudinal nurse practitioner/community health worker intervention to address social determinants of health and chronic obstructive pulmonary disease self-management. BMC Pulm Med. 2022 Mar 1;22(1):74.
[12]
Yi, et al. Impact of Caregiving Burden on Quality of Life of Caregivers of COPD Patients: The Chain Mediating Role of Social Support and Negative Coping Styles. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2021 Aug 4:16:2245-2255.
[13]
Chen, et al. Association between Social Support and Self-Care Behaviors in Adults with Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Ann Am Thorac Soc. 2017 Sep;14(9):1419-1427.
[14]
Lee, et al. Social support is a strong determinant of life satisfaction among older adults with chronic obstructive pulmonary disease. Clin Respir J. 2020 Feb;14(2):85-91.
関連記事
リハビリテーションに関連する疫学 認知症②
リハビリテーションに関連する疫学 認知症①
リハビリテーションに関連する疫学 高齢者骨折④
リハビリテーションに関連する疫学 高齢者骨折③
リハビリテーションに関連する疫学 高齢者骨折②
リハビリテーションに関連する疫学 高齢者骨折①
リハビリテーションに関連する疫学 脳卒中③
リハビリテーションに関連する疫学 脳卒中②
リハビリテーションに関連する疫学 脳卒中①
痛みを再考する⑪ 手関節、手指痛
痛みを再考する⑩ 肩痛
痛みを再考する⑨ 股関節痛
痛みを再考する⑧ 膝痛
痛みを再考する⑦ 頸部痛
痛みを再考する⑥ 腰痛
痛みを再考する⑤ 薬物療法
痛みを再考する④ 非薬物療法・運動療法
痛みを再考する③ 神経生理学的メカニズム・化学的メディエーター
痛みを再考する② 痛みの主観的・客観的評価
痛みを再考する① 痛みの定義・分類
執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
月額550円(税込) / 年額5,500円(税込)