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筋トレの基礎 スクワット⑦ 膝蓋腱、半月板、腸脛靭帯

スクワット、膝蓋腱、半月板、腸脛靭帯|2024.1.19|最終更新:2024.1.19|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 膝蓋腱に対しては遠心性スクワットが有効
  • 半月板損傷ではスクワットは過負荷になる可能性がある
  • 腸脛靭帯には、殿筋の筋力強化目的でスクワットは有効
3分で読めるよ

序文

前回はスクワット動作時の前十字靭帯や膝蓋大腿関節への負荷、傷害予防、スクワットの効果などについてまとめました。今回は膝蓋腱、半月板、腸脛靭帯に着目して、スクワットの注意点をまとめます。いずれも膝関節疾患の原因組織として頻度が高い組織なので、スクワットを行う際にこれらの組織にどのような負荷がかかっているか、どうすれば安全にスクワットが行えるかを考えてスクワットを行うことが大切です。

膝蓋腱

スクワットを行う際には大腿四頭筋が収縮し、膝蓋腱を介して膝関節に力を伝えます。そのため、膝蓋腱に負荷をかけ、膝蓋腱が強化される可能性があります。しかし、スクワット動作時の膝の位置や動き方が不適切だと、膝蓋腱に過度なストレスがかかり、膝の痛みや膝蓋腱炎などの怪我のリスクが高まる可能性があります。

健常成人20人を対象に、35の運動様式の膝蓋腱への負荷指数を算出したところ、片脚スクワットおよび両脚スクワットはともに膝蓋腱への負荷が高い運動様式であることが報告されています[1]。

健常成人8人を対象に、スクワット動作時の大腿骨と脛骨の回旋回転角度を変化させて膝蓋腱への負荷の変化を調査したところ、大腿骨と脛骨の内外旋が4度以上、内外転が10度だと、膝蓋腱の負荷が増加することが報告されています[2]。

バレーボールまたはバスケットボール選手192人を対象に、股関節内旋ROMが40.76度以下、脛骨-前足部アライメント16.95以上、股関節外旋トルク0.31Nm/kg以下が、膝蓋腱障害の予測因子であり、このモデルは感度71.2%、特異度74.4%、AUC0.77だったことが報告されています[3]。

筋トレを行っている男性10人を対象に、スクワット動作の速度を変化させて膝蓋腱への負荷を調査したところ、動作速度が速いほど膝蓋腱への負荷が高くなることが報告されています[4]。

膝蓋腱障害を有するバレーボール選手17人と健常者18人を対象に、膝蓋腱障害を有する人では、健常者と比較して、膝蓋腱の剛性および弾性が低下していることが報告されています[5]。

16歳以上のバレーボールまたはバスケットボール選手20人を対象に、週4回×4週間の膝屈曲 60 度での等尺性脚伸展運動(最大自発的等尺性収縮の 80%)を行うと、鎮痛効果が得られることが報告されています[6]。

膝蓋腱障害に対する有効な治療法に関するシステマティックレビュー論文では、膝蓋腱障害患者に対する遠心性スクワットトレーニングは痛みの軽減に有効であることが報告されています[7]。

3か月以上膝蓋腱障害を有する男性アスリート34人を対象に、12週間の25度前方傾斜台での遠心性スクワットトレーニングを行うと、膝蓋腱の硬さが減少、膝蓋腱の張力が増加し、痛みや機能障害が軽減したことが報告されています[8]。

膝蓋腱障害を有するアスリート97人を対象に、膝蓋骨ストラップまたはスポーツテープを使用すると、スクワット動作の痛みが軽減することが報告されています[9]。

以上より、膝蓋腱障害の予防、症状軽減のために、以下のような点を考慮することが大切です。

  • 膝蓋腱への負荷が高く、股関節、大腿骨、脛骨、足部のアライメント、動作速度で負荷量が変化するため、適切な姿勢や動作方法で負荷量の増加を防ぐ必要がある。
  • 膝蓋腱障害を持つ人では膝蓋腱の剛性や弾性が低下しているため、スクワットトレーニングの前に非荷重下での運動などで剛性や弾性を改善させることが傷害予防につながる可能性がある。
  • 荷重下・膝屈曲位での等尺性膝伸展運動や遠心性スクワットトレーニングが膝蓋腱の構造や機能、症状の改善に有効な可能性があるため、これらの方法を取り入れる。
  • 痛みの軽減のために、膝蓋骨ストラップやスポーツテープも併用する。

半月板

スクワット動作は半月板に対して圧縮力や剪断力を生じさせるため、損傷のリスクを高める可能性があります。しかし、スクワットの方法を工夫することで半月板への負荷を軽減させられる可能性もあります。

9体のご遺体の膝関節を用い、膝関節への負荷シミュレーションによるスクワット動作時の半月板に対する負荷を調査したところ、スクワット動作は前方半月板付着部で最大308%、前方半月板周囲で最大276%の負荷が生じていたことが報告されています[10]。

整形外科で治療を受けた運動選手ではない女性120人を対象に、半月板損傷の主な原因を調査したところ、しゃがみ姿勢での作業が半月板損傷の42%を占めていたことが報告されています[11]。

内側半月板後根断裂(MMPRT)患者100人を対象に、MMPRTの受傷原因を調査したところ、スクワット動作が3番目に多い(13%)損傷原因であったことが報告されています[12]。

膝関節鏡半月板手術を受けた患者641人を対象に、術後1年の症状や機能制限の状態を調査したところ、術後1年で98%の人がスクワット動作に制限が生じていたことが報告されています[13]。

健常成人15人を対象に、フロントスクワットとバックスクワットを行っているときの脛骨大腿関節の動態と筋肉活動を調査したところ、重りを体の前方で担ぐフロントスクワットは、後方で担ぐバックスクワットよりも膝関節の圧縮力と伸筋モーメントが減少することが報告されています[14]。

以上より、半月板損傷、術後の患者さんにスクワットを指導する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • スクワットは半月板への負荷が大きく、半月板損傷のリスクが高い動作であるため、半月板を損傷している患者へのスクワットは避けた方が良い。
  • 半月板術後1年でもスクワットは制限を生じている動作であるため、半月板への負荷を減らす動作や生活環境調整の指導を行う。
  • スクワット動作による半月板損傷を予防するため、半月板損傷リスクが高い人に対してはフロントスクワットを指導する。

腸脛靭帯

スクワット動作時に腸脛靭帯は膝の動きをサポートし、膝関節の正しい位置を維持するのに役立ちます。しかし、フォームが不適切な場合や過度な負荷で行うと、腸脛靭帯にストレスがかかり、炎症や痛みを引き起こす可能性があります。そのため、動作方法や負荷のかけ方に注意が必要です。

健常成人14人を対象に、骨盤の位置を変化させて片脚立位を行った際の腸脛靭帯へのストレスを調査したところ、骨盤後傾、対側骨盤下降、対側骨盤後方回旋は、腸脛靭帯のストレスを増加させることが報告されています[15]。

4体のご遺体を用い、スクワット動作中の生体力学的負荷を調査したところ、スクワット動作時の腸脛靭帯の活性化は、膝関節の伸展時の弛緩幅の減少、大腿骨の後方移動の減少を誘発し、膝関節の安定性向上に寄与することが報告されています[16]。

腸脛靭帯症候群の股関節の運動学的特徴を調査したメタ解析では、、ピーク股関節内旋角が小さく、等尺性股関節外転筋力が低いことが報告されています[17]。

健常成人20人を対象に、11種類のエクササイズ中の中殿筋、大殿筋、大腿筋膜張筋の筋活動を調査したところ、スクワットは大腿筋膜張筋の活動を抑えて中殿筋、大殿筋を活性化させることができる運動である[18]。

腸脛靱帯症候群を有する女性ランナー24人を対象に、8週間のストレッチング、従来の運動方法、片脚スクワットを含む股関節強化プログラムそれぞれの効果を調査したところ、片脚スクワットを含む股関節強化プログラムは痛みや機能障害の改善に有効だったことが報告されています[19]。

以上より、腸脛靭帯症候群の患者さんにスクワットを指導する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 骨盤後傾、対側骨盤の下降、後方回旋は腸脛靭帯のストレスを増加させるため、骨盤の位置を適切に保つ。
  • 腸脛靭帯への負荷軽減を目的に、スクワットを用いた股関節外転筋の筋力強化を行う。
  • 腸脛靭帯症候群患者さんに対しては、片脚スクワットを含む股関節強化に重点を置いた運動プログラムを実施する。

おわりに

今回は膝蓋腱、半月板、腸脛靭帯に着目し、スクワット動作の注意点についてまとめました。これらの組織の損傷を避けるために、正しいフォームと適切な負荷の管理が重要です。運動前のウォームアップ、適切なストレッチ、専門家の指導の下でのトレーニングが、怪我のリスクを最小限に抑え、効果的な結果を生み出すために大切です。

参考文献

[1] Silva, et al. Patellar Tendon Load Progression during Rehabilitation Exercises: Implications for the Treatment of Patellar Tendon Injuries. Med Sci Sports Exerc. 2023 Oct 17.

[2] Park, et al. The influence of isolated femur and tibia rotations on patellar tendon stress: A sensitivity analysis using finite element analysis. J Orthop Res. 2023 Feb;41(2):271-277.

[3] Mendonça, et al. Association of Hip and Foot Factors With Patellar Tendinopathy (Jumper’s Knee) in Athletes. J Orthop Sports Phys Ther. 2018 Sep;48(9):676-684.

[4] Earp, et al. Faster Movement Speed Results in Greater Tendon Strain during the Loaded Squat Exercise. Front Physiol. 2016 Aug 31:7:366.

[5] Helland, et al. Mechanical properties of the patellar tendon in elite volleyball players with and without patellar tendinopathy. Br J Sports Med. 2013 Sep;47(13):862-8.

[6] Rio, et al. Isometric Contractions Are More Analgesic Than Isotonic Contractions for Patellar Tendon Pain: An In-Season Randomized Clinical Trial. Clin J Sport Med. 2017 May;27(3):253-259.

[7] Everhart, et al. Treatment Options for Patellar Tendinopathy: A Systematic Review. Arthroscopy. 2017 Apr;33(4):861-872.

[8] Lee, et al. Changes on Tendon Stiffness and Clinical Outcomes in Athletes Are Associated With Patellar Tendinopathy After Eccentric Exercise. Clin J Sport Med. 2020 Jan;30(1):25-32.

[9] Vries, et al. Effect of patellar strap and sports tape on pain in patellar tendinopathy: A randomized controlled trial. Scand J Med Sci Sports. 2016 Oct;26(10):1217-24.

[10] Seitz, et al. Forces at the Anterior Meniscus Attachments Strongly Increase Under Dynamic Knee Joint Loading. Am J Sports Med. 2021 Mar;49(4):994-1004.

[11] Kamal, et al. Squat Winnowing: Cause of Meniscus Injuries in Non-Athletic Females. Trauma Mon. 2016 Feb 6;21(1):e19178.

[12] Furumatsu, et al. Injury patterns of medial meniscus posterior root tears. Orthop Traumatol Surg Res. 2019 Feb;105(1):107-111.

[13] Skou, et al. Patient-reported symptoms and changes up to 1 year after meniscal surgery. Acta Orthop. 2018 Jun;89(3):336-344.

[14] Gullett, et al. A biomechanical comparison of back and front squats in healthy trained individuals. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):284-92.

[15] Tateuchi, et al. The effect of three-dimensional postural change on shear elastic modulus of the iliotibial band. J Electromyogr Kinesiol. 2016 Jun:28:137-42.

[16] Chevalier, et al. Effect of iliotibial band and gastrocnemius activation on knee kinematics. Knee. 2023 Jan:40:238-244.

[17] Foch, et al. Lower extremity kinematics during running and hip abductor strength in iliotibial band syndrome: A systematic review and meta-analysis. Gait Posture. 2023 Mar:101:73-81.

[18] Selkowitz, et al. Which exercises target the gluteal muscles while minimizing activation of the tensor fascia lata? Electromyographic assessment using fine-wire electrodes. J Orthop Sports Phys Ther. 2013 Feb;43(2):54-64.

[19] McKay, et al. Iliotibial band syndrome rehabilitation in female runners: a pilot randomized study. J Orthop Surg Res. 2020 May 24;15(1):188.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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