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理学療法で用いる評価の方法と結果の妥当性 バランス① Berg Balance Scale

Berg Balance Scale、転倒、MCID|2023.9.8|最終更新:2023.9.8|理学療法士が執筆・監修しています

序文

 前回までは歩行に関連する評価について、測定方法とMCIDいついてまとめてきました。今回からは、バランス評価について見ていきます。バランス評価は転倒や歩行自立度といった活動の指標として必要な評価項目ですが、評価方法が複数存在し、それぞれに特徴があります。そのため、各評価方法の特徴を把握した上で、患者さんに適応できるか確認する必要があります。今回はその中でも目にする機会が多いBerg Balance Scale(BBS)について見ていきます。

本記事でわかること

✅ BBSは転倒予測に有用だが、単独使用には注意が必要

✅ BBSは様々な動作を広く評価できる

✅ BBSのMCIDは疾患によってバラつきがある

BBSと予後

 BBSはバランス能力を評価する指標であり、転倒リスクなどとの関連性が調査されています。高齢者の転倒を予測するツールの有用性を調査したメタ解析では、BBSは転倒予測に対して高い特異性を有していたことが報告されています[1]。別のメタ解析では、BBSの転倒予測の精度は感度0.72、特異度0.73だったことが報告されています[2]。一方で、高齢者の転倒予測に対するBBSの有用性を調査したシステマティックレビューでは、研究間の異質性が高く、BBSの転倒予測の有用性を裏付けるデータは不十分であり、単独で使用すべきではないことが報告されています[3]。転倒以外の関連因子は、生活期の脳卒中患者を対象とした調査で、屋外歩行の予測指標としてBBSの感度は0.66、特異度は0.77だったことが報告されています[4]。

 以上のように、BBSは転倒や生活範囲と関連していますが、その予測精度は決して高いとは言えないため、他のツールと併用していく必要があります。

BBSの測定方法[5]

準備物

  • ストップウォッチ
  • 肘掛け付きの椅子(18-20インチ(約45-50㎝))
  • 肘掛けがない椅子(18-20インチ(約45-50㎝))
  • 踏み台またはステップ(7.75-9インチ(約20-23㎝))
  • 定規
  • スリッパまたは靴

測定方法

動作 指示 判定
椅子からの立ち上がり 手を使わずに椅子から立ち上がってください。
  • 0点:立ち上がりに中等度〜高度の介助が必要。
  • 1点:立ち上がり、立位保持に最小限の介助が必要。
  • 2点:何度か試みれば、手を使って立てる。
  • 3点:手を使えば1人で立てる。
  • 4点:手を使わずに1人で立てる。
立位保持 つかまらずに2分間立っていてください。
  • 0点:介助なしで30秒立てない。
  • 1点:何度か試みれば30秒間立てる。
  • 2点:介助なしで30秒間立位保持ができる。
  • 3点:見守りがあれば2分間立位保持できる。
  • 4点:安全に2分間立位保持できる。
座位保持 背もたれを使わず、両踵を床につけた状態で、手を使わず2分間座っていてください。
  • 0点:介助なしで10秒間座位保持できない。
  • 1点:10秒間座位保持できる。
  • 2点:30秒間座位保持できる。
  • 3点:見守りがあれば2分間座位保持できる。
  • 4点:安全に2分間座位保持できる。
立位から椅子座位 座ってください。
  • 0点:着座に介助が必要。
  • 1点:独りで座れるが、着座が制御できない。
  • 2点:両下肢後面を椅子につけて、着座を制御している。
  • 3点:手を使って着座を制御している。
  • 4点:ほとんど手を使わずに安全に座ることができる。
移乗動作車いす(椅子)-ベッド間

または

椅子-椅子間

車椅子からベッドへ移ってください。ベッドから車椅子に移ってください。

(椅子-椅子間も同様)

  • 0点:安全確保のために2名の介助者を要する。
  • 1点:介助者1名を要する。
  • 2点:口頭指示もしくは見守りがあれば移乗できる。
  • 3点:手をしっかり使えば安全に移乗できる。
  • 4点:手をわずかに使うだけで安全に移乗できる。
閉眼での立位保持 目を閉じて10秒間立っていてください。
  • 0点:転倒しないように介助が必要。
  • 1点:3秒間閉眼していられないが、安定して立位が保持できる。
  • 2点:3秒間の閉眼立位が保持できる。
  • 3点:見守りがあれば、10秒間閉眼立位が保持できる。
  • 4点:安全に10秒間閉眼立位が保持できる。
閉脚立位保持 足を揃えて、何もつかまらずに立っていてください。
  • 0点:両足を揃えての立位保持に介助を要し、15秒間保てない。
  • 1点:両足を揃えての立位保持には介助を要するが、15秒間可能。
  • 2点:両足を揃えて独りで立位が保持できるが、30秒保てない。
  • 3点:両足を揃えて、見守りの下で1分間立位が保持できる。
  • 4点:両足を揃えて、独りで1分間安全に立位が保持できる。
両手前方リーチ 片腕を90°挙げてください。指を伸ばした状態でできるだけ前方に手を伸ばしてください。※検査者は伸ばした指 の先に定規をあて、測定用メジャーで最も前方へ傾いた距離を記録。

可能なら、体幹の回旋を防ぐため両腕で行う。

必ずしも壁側で評価を行う必要はない。

  • 0点:行おうとするとバランスを崩すか、かなりの介助を要する。
  • 1点:前方へ出せるが、見守りが必要。
  • 2点:前方に5cm届く。
  • 3点:前方に12cm届く。
  • 4点:自信を持って前方に25cmに届く。
床の物の拾い上げ 足の前に置いた靴(またはスリッパ)を拾ってください。
  • 0点:行えないか、もしくはバランスを崩したり転倒しないように介助を要する。
  • 1点:拾うことができず、検査を行うには見守りが必要。
  • 2点:拾うことはできないが、2〜5cm手前まで手を伸ばす事はできる。
  • 3点:拾うことはできるが、見守りが必要。
  • 4点:安全にかつ簡単に拾うことができる。
振り返り動作 左の肩越しに後ろを見てください。右でも繰り返します。
  • 0点:バランスを失ったり転倒しないように、介助を要する。
  • 1点:回旋には見守りを要する。
  • 2点:横向きまでなら回旋でき、バランスは維持できる。
  • 3点:片方からなら後方を見る事ができるが、もう一方では体重移動が少ない。
  • 4点:両側から後方を見る事ができ、うまく体重移動もできる。
360度方向転換 完全に一回転まわってください。その後、逆方向にも一回転まわってください。
  • 0点:回る際に介助を要する。
  • 1点:近接の見守りか口頭指示が必要。
  • 2点:ゆっくりと360°回る事ができる。
  • 3点:片方にのみ4秒以内に安全に360°回る事ができる。
  • 4点:4秒以内に安全に360°回る事ができる。
段差交互踏みかえ それぞれの足を交互に段差にのせてください。それぞれ4回続けてください。
  • 0点:転倒しないためには介助を要する、もしくは行えない。
  • 1点:少しの補助があれば、完全に3回以上踏み換えできる。
  • 2点:見守りのみで、完全に4回踏み換えできる。
  • 3点:独りで8回踏み換える事ができるが、20秒を超える。
  • 4点:20秒間に独りで8回完全に踏み換える事ができる
タンデム立位 片方の足を、もう一方の足のすぐ前に接地してください。それが難しい場合は、もう一方の足のつま先よりも出来るだけ遠くに踵を接地してください。
  • 0点:足を出す際、もしくは立っている時にバランスを崩してしまう。
  • 1点:足を出すには介助を要するが、15秒保持できる。
  • 2点:独りで前方に小さく足を出し、30秒保持できる。
  • 3点:独りで前方に足を出し、30秒保持できる。
  • 4点 独りで継ぎ足を行い、30秒保持できる。
片脚立位 つかまらずに、出来るだけ長く片脚で立ってください。
  • 0点:転倒を防ぐには介助を要する。
  • 1点:独りで片脚できるが、3秒まで保持できない。
  • 2点:独りで片脚を上げて、3秒以上保持できない。
  • 3点:独りで片脚を上げて、5〜10秒保持できる。
  • 4点:独りで片脚を上げて、10秒超保持できる。¥

BBSのMCID

運動器疾患

 大腿骨近位部骨折患者を対象とした調査では、functional ambulation categories (FAC)をアンカーとした時のMCIDは11.5点だったことが報告されています[6]。

脳血管障害

 亜急性期脳卒中患者を対象とした調査では、FACをアンカーとした時のMCIDは5点だったことが報告されています[7]。

 急性期脳卒中患者を対象とした調査では、患者が変化したと感じたMCIDは6.5〜12.5点だったことが報告されています[8]。

 太極拳運動介入を行った脳卒中患者を対象としたメタ解析では、BBSのMCIDは4点だったことが報告されています[9]。

呼吸器疾患

 呼吸リハビリテーションを受けているCOPD患者を対象とした調査では、患者が変化したと感じたMCIDは3.5〜7.1点だったことが報告されています[10]。

おわりに

 今回はバランス評価の中でも比較的使用頻度が高いBBSについてまとめました。BBSは網羅的に評価でき、慣れてくれば20分弱で終えることができるため有用ではないかと思います。一方で、BBS単独で使用することに注意を促す報告も散見されますので、他のバランス評価と併用して使用する必要があるかもしれません。

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参考文献

[1] Park, et al. Tools for assessing fall risk in the elderly: a systematic review and meta-analysis. Aging Clin Exp Res. 2018 Jan;30(1):1-16.

[2] Park, et al. The Diagnostic Accuracy of the Berg Balance Scale in Predicting Falls. West J Nurs Res. 2017 Nov;39(11):1502-1525.

[3] Lima, et al. The Berg Balance Scale as a clinical screening tool to predict fall risk in older adults: a systematic review. Physiotherapy. 2018 Dec;104(4):383-394.

[4] Fulk, et al. Predicting Home and Community Walking Activity Poststroke. Stroke. 2017 Feb;48(2):406-411.

[5] Moore, et al. A Core Set of Outcome Measures for Adults With Neurologic Conditions Undergoing Rehabilitation: A CLINICAL PRACTICE GUIDELINE. J Neurol Phys Ther. 2018 Jul;42(3):174-220.

[6] Tamura, et al. Minimal clinically important difference of the Berg Balance Scale score in older adults with hip fractures. Disabil Rehabil. 2022 Oct;44(21):6432-6437.

[7] Tamura, et al. The minimal clinically important difference in Berg Balance Scale scores among patients with early subacute stroke: a multicenter, retrospective, observational study. Top Stroke Rehabil. 2022 Sep;29(6):423-429.

[8] Hayashi, et al. Minimal clinically important difference of the Berg Balance Scale and comfortable walking speed in patients with acute stroke: A multicenter, prospective, longitudinal study. Clin Rehabil. 2022 Nov;36(11):1512-1523.

[9] Feng, et al. Effects of Tai Chi Yunshou on upper-limb function and balance in stroke survivors: A systematic review and meta-analysis. Complement Ther Clin Pract. 2023 May;51:101741.

[10] Beauchamp, et al. Interpretability of Change Scores in Measures of Balance in People With COPD. Chest. 2016 Mar;149(3):696-703.