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セッティング別リハ栄養③ 回復期

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回復期, 活動量, 栄養|2022.1.13|最終更新:2022.1.13|理学療法士が執筆・監修しています

序文

前回は急性期のセッティングでのリハ栄養の視点について見ていきました。今回は回復期でのリハ栄養の視点について見ていきたいと思います。

本記事でわかること

✅ 急性期で低栄養、サルコペニアが改善しきれていない患者が多い

✅ リハの進行に伴い、必要栄養量が増える

✅ 退院後のことも考えてリハと栄養を考える必要がある

回復期入院時の低栄養、サルコペニアの状態

急性期のところでも書きましたが、急性期では治療が優先されるために活動量や栄養量が制限されること、疾患の影響で異化が亢進することで筋肉量が減少してしまうことから、急性期で低栄養やサルコペニアが進行してしまうのは、ある程度仕方がない部分があります。急性期に入院している中で改善まで持っていけるようにフォローできれば良いのですが、急性期の入院日数は短縮される傾向にあるため、改善しきれずに退院を余儀なくされるケースは少なくありません。その受け皿が回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟といった、いわゆる「回復期」に分類される病棟機能になります。本来であれば、回復期に移った直後から積極的にリハビリテーションを進めていきたいところですが、急性期で低栄養やサルコペニアが改善できずに入院してくる患者さんが少なくありません。先行研究では、回復期リハビリテーション病棟入院患者さんで中等度以上の栄養障害を有していた人の割合は43.5%[1]、サルコペニアを有していた人の割合は50.6%[2]という報告があります。

低栄養、サルコペニアともに、ADL改善の阻害因子となるため、早期改善に向けて取り組む必要があります。入院してから早い段階で医師を交えた多職種で話し合う場を設け、発症前〜急性期入院時〜回復期入院時までの経過を確認し、リハ栄養ケアプロセスに基づいて、評価、診断、目標設定、介入方法、モニタリングの方法について方向性を決めていくことが大切です。例えば、発症前から低栄養、サルコペニアの状態だったのか、発症してから低栄養、サルコペニアに陥ったのかによって、改善の可否、改善に要する期間、介入方法は異なってきます。また、今回の主病因以外にどのような基礎疾患を有しているのか、その治療経過はどうなっているのかも、リハの進行に影響を及ぼします。患者さんのストーリーを網羅的に情報収集し、予後予測、目標設定を行うことが大切です。

活動量と栄養量の変化

回復期に移行すると、疾患別リハビリテーションの時間が大幅に増加します。急性期では2単位(40分)/日前後のところが多いと思いますが、回復期リハビリテーション病棟では最大9単位(180分)/日まで疾患別リハビリテーション料が算定可能となります。さらに、身体機能、ADL能力向上に伴い、排泄がベッド上オムツ対応からトイレでの排泄になったり、病棟内の移動が車椅子介助から車椅子自走や歩行になったりと、リハ時間以外の活動量も増加します。

活動量が増えるということは、必要な栄養量も増加します。この時に、栄養摂取量が活動量に見合った量になっていないと、栄養状態が悪化し、低栄養、サルコペニアのリスクが高くなってしまいます。そのため、ADLが拡大し、活動量が増加するのに合わせて、栄養摂取量の確認と適宜食事内容の修正を行っていく必要があります。特に、入院時に低栄養、サルコペニアを有している患者さんでは、ADL拡大を見据えて、栄養蓄積量を考慮した食事内容にしていくことが大切です。具体的には、計算式等で算出した栄養必要量に体重や筋肉量増加に必要な栄養量を加えていきます。1ヶ月で体重1kg増加を目指すのであれば、概ね200−300kcal/日程度加える必要があります。

リハ栄養の視点を持った退院支援

急性期のところでも書きましたが、入院する高齢患者さんの多くは、元々低栄養やサルコペニアを有している、もしくはハイリスク状態の方々です。そのため、退院に向けた調整をする際には、元の生活状況の確認が大切になります。例えば、元々食事を準備するのが難しくなってきており、食事量が減少していた場合には、宅配食の利用やヘルパーさんに食事の準備をしてもらうなど、食事を調達する手段を確立する必要があります。

また、外出頻度や家庭内での役割の減少から活動量が低下したことでサルコペニア状態になってしまった場合には、デイサービスや地域の通いの場への参加、家庭内でできる役割を見つけるなど、活動量を増やすためにどうすれば良いか検討し、対策を講じていく必要があります。

嚥下障害がある患者さんが施設に退院する場合には、退院先の施設でどのような食形態が準備できるのか、食事介助はどれくらい人と時間をかけられるのかなど、施設でどの程度の対応が可能なのか確認する必要があります。病院で提供していた食形態とは異なる形態で提供される、時間をかければ全量摂取可能なのに、人と時間が足りないために半量程度しか食べさせてもらえない、その結果として状態が再び悪化して再入院するといったことも少なくありません。退院支援を進める中では、リハ栄養的な視点で退院後の生活を確認し、必要があれば対策を検討することが大切です。

おわりに

今回は回復期におけるリハ栄養的な視点での考え方について見ていきました。回復期は身体機能や活動量が大きく変化する時期ですので、多職種で連携してタイムリーに対応できるようにしていく必要があります。

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参考文献

[1] 西岡他. 日本静脈経腸栄養学会雑誌. 2015; 30巻5号. P1145-1151

[2] Yoshimura et al. Nutrition. 2019 May;61:111-118