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リハ栄養,ゴール設定,介入,モニタリング|2022.10.7|最終更新:2022.10.7|理学療法士による執筆・監修
リハ栄養ケアプロセス【ゴール設定・介入・モニタリング】
前回はリハ栄養ケアプロセスの中のアセスメントと診断について記載しました。今回はその続きとしてゴール設定、介入、モニタリングについてみていきたいと思います。
✅ ゴール設定ではSMARTの考えが重要 ✅ 介入では、リハからの視点と栄養からの視点の両方を考える ✅ モニタリングは5W1Hを明確にする |
リハ栄養は「SMART」なゴール設定が重要
ゴール設定では、アセスメントや診断を行った結果を元に、この後の介入の目的や目標を明確にしていく必要があります。ゴール設定を行う上で重要な項目をまとめたものに「SMART」というものがあります。それぞれの項目毎にみていきたいと思います。
Sは「具体的(specific)」
Sは「具体的(specific)」を示します。例えば、サルコペニアの患者さんがいて身体機能を改善させたい場合、「身体機能改善」を目標にすると、身体機能のどの機能をどこまで改善させたいのかがわかりません。具体性を持たせるためには「握力を28kgまで上げる」といった具合に「何を」「どれくらい」を明確にすることが大切です。
Mは「測定可能(Measurable)」
Mは「測定可能(Measurable)」を示しています。目標が実際に測定できるものかどうかを検討する必要があります。例えば、筋肉量をサルコペニアの基準値であるSMI:7.0kg/m2を目標とした場合、SMIは機器を用いた方法でしか測定できません。そのため、測定機器がない環境では測定することができません。また、機器があってもマンパワーの問題で測定が難しい場合もあるかと思います。このように、測定できる環境が整っているかの確認が必要になります。
Aは「達成可能(Achievable)」
Aは「達成可能(Achievable)」を示します。立案した目標が達成できる目標かどうかの確認が大切です。例えば、長年車椅子生活のサルコペニア状態の患者さんに対して、1か月で歩行速度1.0m/秒を達成することを目標にすることは、達成可能とは言い難いと思います。その患者さんの状態と介入できる期間などから、目標が達成可能かどうかを考える必要があります。
Rは「関連性がある(Relevant)」
Rは「関連性がある(Relevant)」を示します。立案した目標が、その方の課題解決に関係しているかどうかを考える必要があります。例えば、栄養障害はないサルコペニア患者さんに対して、筋力や身体機能に関しての目標を立案することは関連性があると言えますが、体重や栄養状態に関しての目標を立案することは、その方の課題解決と関連性があるとは言えません。その目標を達成することで、その方の生活機能やQOLが改善できるかという視点が大切になります。
Tは「期限(Time-bound)」
Tは「期限(Time-bound)」を示します。目標を立てる際には、「いつまでに」という期限を設ける必要があります。例えば、低栄養状態の方に対して「体重を1kg増加」という目標を立てた場合、いつまでに達成することを目指すのかが明確でないと、その目標が達成可能なのかどうかも明確になりませんし、ダラダラと時間だけが経過してしまうという事態にもなりかねません。期限をいつに設定するかで介入内容も変わってきますし、モニタリングの内容や頻度にも影響してきますので、期限の設定は大切になります。
SMARTの各項目を確認しながらゴール設定を行うことで、その後の介入やモニタリングの質も向上してきます。
リハから見た栄養、栄養から見たリハ
リハ栄養介入では「リハから見た栄養」と「栄養から見たリハ」という2つの視点から考えていく必要があります。
リハでのエネルギー消費量に見合った栄養量をいかに確保するかという視点と、現在の栄養状態や食事摂取状況に応じたリハプログラムを立案することが大切になります。
例えば、リハが進みADLが向上してきた場合、リハでの運動量に加え日常生活での活動量も増えてくるため、エネルギー消費量が増加します。その際に、増加した消費量に見合った食事内容に調整しなければ栄養状態が悪化してしまいます。
そのため、リハの進行状況に合わせて摂取栄養量の調整をしていく必要があります。
また、栄養状態が不良で食事摂取量がなかなか増えない方に対して、栄養状態を考慮せずにリハでの運動量を増やしてしまうと栄養状態はさらに悪化してしまいます。そのため、食事内容や食形態等の検討をするのと同時に、リハの内容も消費量と摂取量のバランスが取れるように考える必要があります。
リハでの消費量については、METs(代謝等量)を用いて計算されることが多いと思いますが、METsは健常成人を対象として計算された数値なので、高齢者や何かしらの疾患を抱えている方に用いる場合には注意が必要です。消費量と摂取量のバランスが取れているかを確認するには体重の変化を定期的に追っていくことが有用です。ただ、浮腫を伴う疾患を有している方の場合には、浮腫の増減を考慮する必要があります。
リハ栄養モニタリングで効果判定
リハ栄養モニタリングは、リハ栄養介入の効果判定をする上で大切な過程です。
リハ栄養ゴール設定で設定した目標を達成できているか、達成できていなければなぜ達成できなかったのかを考えていきます。
モニタリングを行っていく上で大切なことは、5W1H(誰が、いつ、何を、どこで、どのように、なぜ)を決めておくことです。
これを決めておかないと、測定がもれてしまったり、職種間で押し付け合いになってしまったりと、適切かつ円滑なモニタリングが行えなくなってしまいます。また、モニタリングする項目が設定した目標の達成度を判定するのに適切かどうかも考える必要があります。例えば、「筋力」を指標とした場合、一口に筋力と言っても、握力なのか膝伸展筋力なのか、その他の部位の筋力なのかでモニタリングしていく項目が異なってきます。
以上より、リハ栄養モニタリングをする上では、5W1Hと目標に適した測定項目を設定することが大切になります。
リハ栄養ケアプロセスを身に付けるために
今回はリハ栄養ケアプロセスの後半部分であるゴール設定、介入、モニタリングについてみていきました。
リハ栄養ケアプロセスは慣れないうちは時間がかかってしまいますが、何回もこのプロセスで考えるようにしていくと、徐々にスムーズに考えられるようになっていきます。また、1人で考えるのではなく、他職種と協働して考えていくことで、より質を高めていけると思いますので、ぜひ他職種も巻き込んでリハ栄養ケアプロセスを活用して頂ければと思います。
本記事の執筆・監修・編集者
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地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7
— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022
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