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リハ栄養概論②運動が逆効果?低栄養・栄養不足と筋肉・身体への影響

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低栄養予後筋肉|2022.9.16|最終更新:2022.9.16|理学療法士が執筆・監修しています

低栄養・栄養不足と身体機能との関係

前回は栄養がなぜ大事なのかについて、概要をご説明しました。今回は栄養状態が不良になるとなぜいけないのか、体がどんな反応を示すのかについてご説明いたします。

 

本記事でわかること

✅ 低栄養は様々な予後を悪化させる。

✅ 栄養が不足すると、筋肉を削ってエネルギーを得ようとする。

✅ 筋肉が削られていくと、免疫力が低下する。

低栄養・栄養不足は予後を悪化させる要因

 栄養状態と様々な予後との関連性を調査した報告は年々増加しています。研究の対象となる集団も、地域在住高齢者から急性期、回復期、療養施設、在宅ケアなど幅広くなっています。そして、どの集団においても、栄養評価の方法やアウトカムの項目に違いはあるものの、予後が悪化することを報告しています。

 例えば、高齢患者さんが退院時に栄養状態が不良だと、退院後6か月の死亡率、再入院率、施設入所率が高くなるという報告があります(1)。また、地域在住高齢者を対象とした調査では、質問紙を用いて評価した栄養状態が不良だと、1000日後までの死亡率が高くなることが報告されています(2)。

 このように、高齢者では栄養状態が不良になると、その後の健康状態悪化のリスクが高くなります。

低栄養状態では筋肉が削られる

 栄養が身体外部から供給されなくなると、人の体内ではまず貯蔵されている糖質を利用してエネルギーを産生しようとします。糖質は主に筋肉や肝臓に貯蔵されています。しかし、この貯蔵量はあまし多くなく、1~2日の飢餓状態で使い切ってしまいます。

 

 貯蔵されている糖質がなくなる頃からは、次は筋肉脂肪を分解してエネルギーを得ようとする反応が生じます。始めは筋肉の分解の方がやや多くなりますが、4日目ころからは心臓や内臓、免疫系などの生命維持に必要な筋肉を残そうとする反応に変化するため、脂肪の分解が多くなります。

 

 脂肪は体内に多く貯蔵されているため、長い時には数週間は脂肪から得られるエネルギーで何とか生命を維持することはできます。しかし、体内に貯蔵されている脂肪が枯渇すると、最終的には生命維持のために保持していた筋肉も分解され、エネルギーを得ようとする反応が生じます。ここまで飢餓状態が進行すると生命維持が困難になり死に至ります(3)。

※それぞれの期間はあくまで一般論です。患者さんの状態や治療内容等で変化します。

筋肉は免疫のエネルギー源

骨格筋からは様々な種類の「マイオカイン」と呼ばれる物質が放出されており、全身の臓器に良い影響を与えているといわれています(4)。筋肉が分解されることで分泌されるマイオカインも減少することで、全身の代謝に影響を与える可能性があります。

 

また、筋肉を構成しているたんぱく質は、緊急時にはアミノ酸に分解され、一部のアミノ酸は免疫細胞のエネルギー源となります(5)。先ほど、飢餓状態が進行すると生命維持が難しくなると述べましたが、その1つの要因として、筋肉が減少することによって免疫力が低下してしまうことが考えられています。

 

免疫力が低下すると、通常であれば排除できるウイルスや菌などに侵されてしまいます。免疫が働かないことで侵襲に対する抵抗力が働かないため、重症化してしまい、最終的に死に至ってしまいます。

低栄養・栄養不足が何に対して悪影響なのかを知る

今回は、栄養状態が不良だと何が良くないのか、身体ではどんな反応が生じているのかに着目して記載しました。

栄養状態不良時の生体反応については、まだまだ不明な点が多く、今回記載した内容も一部の説の範囲を出ないものも含まれています。また、栄養状態以外の全身状態にも影響を受けますので、個人個人で生体反応には違いが生じます。実際の現場では、対象者の状態を考慮して、現在の状態や今後の予想などを考えていく必要があると思います。

 

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参考文献

  1. Dent, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2014;23(3):394-9.
  2. Kagansky, et al. Am J Clin Nutr. 2005 Oct;82(4):784-91; quiz 913-4.
  3. 日本静脈経腸栄養学会編. 静脈経腸栄養テキストブック. 2017.
  4. Severinsen, et al. Endocr Rev. 2020 Aug 1;41(4):594-609.
  5. Li, et al. Br J Nutr. 2007 Aug;98(2):237-52.