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リハ栄養、生活機能、QOL|2022.9.23|最終更新:2022.9.23|理学療法士が執筆・監修しています
リハビリテーション栄養の基本的な考え方とは?
前回までは、栄養の重要性について、簡単ではありますがご紹介いたしました。今回からはリハビリテーション栄養(以下、リハ栄養)について記載していきます。今回はリハ栄養の基本的な考え方について見ていきたいと思います。
✅ リハ栄養は機能、活動、参加、QOLを最大限に高めることが目標 ✅ リハ栄養は病期によって求められるものが変化する ✅ リハ栄養を様々な環境で求められている |
リハ栄養の目標は「機能、活動、参加、QOLを最大限に高める」こと
リハ栄養と聞くと「リハビリの時に栄養補助食品を摂ればいいんでしょう」や「たんぱく質を多く摂ればいいんでしょう」といった意見を聞くことが少なくありません。
リハ栄養には
「ICFによる全人間的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価、リハ栄養診断・ゴール設定を行ったうえで、障がい者やフレイル高齢者の栄養状態、サルコペニア・フレイルを改善し、機能・活動・参加、QOLを最大限高める「リハから見た栄養管理」や「栄養から見たリハ」である。」
という定義があります。
こちらの定義を見て頂ければわかるように、リハ栄養ではICFに基づいた評価とアウトカム設定が求められています。単純に栄養補助食品やたんぱく質を加えるだけでなく、その人の何が栄養状態やサルコペニアを悪化させているのか、栄養不良やサルコペニアに対して介入することで、その人の生活やQOLにどのような効果を与えるのかなどといった視点が重要となります。
リハ栄養に求められることは時期によって変化する
先ほどのリハ栄養の定義の中で「機能・活動・参加、QOLを最大限高める「リハから見た栄養管理」や「栄養から見たリハ」」とあります。一文でまとめられていますが、その中身は多岐に渡っており、様々な場面で多くのことが求められます。
リハ栄養介入を行う際には、まずは低栄養やサルコペニア状態を早期に発見することが大切です。早期に発見し、その原因に基づいて早期に対応していくことで、低栄養やサルコペニアの進行を抑制することができます。早期発見、早期介入を行うことで、改善する確率も高くなります。
また、急性期のように、疾患の治療のために栄養状態やサルコペニアの悪化が防げない場合も少なくありません。その場合には、悪化を少しでも緩やかにできるようなリスク管理が求められます。具体的な方法については、後日改めてご説明いたします。
急性期を脱し、身体機能やADLの改善を目指したリハビリテーションにシフトしてくると、その活動量に合わせた栄養摂取量を確保することが求められます。通常の食事で充足することが望ましいですが、食事が十分に摂取できない方は少なくありません。そのような時には、栄養補助食品や嗜好品などで必要栄養量を確保できるように工夫していく必要があります。
このように、簡単な流れで見ただけでも、リハ栄養は時期によって様々な視点から考えていかなければいけません。
多くの場面でリハ栄養介入が必要な人は多い
先行研究では、急性期から地域に至るまで低栄養やサルコペニア状態の方が多く存在していることが明らかになってきています。
急性期では40%の患者さんが低栄養状態で(1)、15%の患者さんが入院中にサルコペニアを新規に発症することが報告されています(2)。回復期では軽度者も含めると64.4%の患者さんが低栄養状態(3)、53%の患者さんがサルコペニアという報告があります(4)。地域在住高齢者では23.5%が低栄養状態(5)、約8%がサルコペニア状態という報告があります(6)。
今回紹介した数値はあくまで一部の調査報告ですが、他の調査でも同程度の割合というものが多いです。どのような環境であっても低栄養やサルコペニア状態の方は多く存在しているため、リハ栄養介入は様々な場面で求められます。
おわりに
今回はリハ栄養の定義や求められるものなど、概要について記載してきました。リハ栄養介入の中身は対象となる方によって求められるものが変わってきます。ICFに基づいた評価を行い、その方にどんなリハ栄養介入が必要なのか考えていく必要があります。次回からは、リハ栄養介入の流れについて記載していく予定です。
本記事の執筆・監修・編集者
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地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7
— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022
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参考文献
- Barker et al. Int J Environ Res Public Health. 2011 Feb;8(2):514-27.
- Martone et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2017 Dec;8(6):907-914.
- 西岡 他. 日本静脈経腸栄養学会誌. 2015; 30: 1145-1151.
- Yoshimura et al. Clin Nutr. 2018 Dec;37(6):2022-2028.
- Su et al. Nutrients. 2020 Jan 5;12(1):151.
- サルコペニア診療ガイドライン2017: 12.