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呼吸器機能による摂食嚥下障害の評価方法3選【嚥下理学療法⑨】

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肺機能咳嗽発声|2023.4.14|最終更新:2023.4.14|理学療法士が執筆・監修しています

嚥下に関連する呼吸機能評価

前回は、嚥下に関連する身体機能のうち、喉頭や頸部についてみていきました。今回は、嚥下に関連する呼吸機能についてまとめていきます。

本記事でわかること

✅ 誤嚥予防には肺機能が保たれていることが大切

✅ 咳嗽力が低いと、誤嚥をしても吐き出せない

✅ 発声も重要な呼吸機能の指標

 

呼吸機能検査(スパイロメトリー)

 

摂食嚥下における呼吸機能の役割は、喉頭の開閉を制御することです。喉頭は、食物や液体が気道に入らないように保護するために、食べ物や飲み物が喉を通過する際に閉じられます。

この時、短時間の呼吸停止(嚥下性無呼吸)が起こります。

そして、食べ物や飲み物が喉を通過した後、呼吸が再開されます。呼吸機能が正常に働かない場合、喉頭を閉鎖して呼吸を止めていることができないため、食べ物や飲み物が気道に入り込んで誤嚥や窒息の危険が高くなります。

実際に、COPDを始めとした呼吸器疾患患者さんでは、誤嚥リスクが高いことが明らかになっています[1]。したがって、摂食嚥下障害や呼吸器疾患などの状態では、摂食嚥下における呼吸機能の役割がより重要になります。

 

使用機材

スパイロメトリー

 

測定肢位

座位

測定方法

  1. マウスピースに唇をしっかりあてて、隙間がないようにくわえてもらう。
  2. 通常の呼吸をしてもらう。
  3. 吸えなくなるまで最大限に息を吸う。
  4. 息をとめて、一気に強く速く息を吐き出す。
  5. 肺が空っぽになったと感じる最大限まで呼出する
  6. 通常の呼吸に戻す。

主な測定項目

  • 肺活量(VC):最大まで吸い込み吐き出したときの空気の量。
  • %肺活量(%VC):予測される肺活量に対しての比率(正常:80%)。
  • 努力性肺活量(FVC):空気を最大まで吸い込み、一気に吐き出した空気の量。
  • 1秒量(FEV1.0):努力性肺活量の最初の1秒間に吐き出された吸気の量。
  • 1秒率(FEV1.0%):努力性肺活量に対する1秒量の比率(正常:70%)。
  • %1秒量(%FEV1.0):性別や体格による標準値に対する1秒量の比率。

咳嗽力

摂食嚥下における咳嗽力の役割は、食べ物や液体などが誤って気管や肺に入り込んだ際に、それを排除するために重要な役割を果たします。

咳嗽反射は、気管や肺に異物が入り込んだ場合に自動的に起こる反応で、気管や肺を刺激して異物を追い出すことで、窒息を防ぐための防御反応です。咳嗽反射は、通常は自動的に起こりますが、嚥下機能障害や神経筋疾患、呼吸器疾患などによって咳嗽力が低下していると、誤嚥や窒息のリスクが高くなります。

咳嗽力が弱くなっている場合には、食事や飲み物の量や形態を調整したり、飲み込む速度や嚥下の方法を工夫をしたりするなどの対策が必要となる場合があります。

誤嚥や窒息を予防するために、咳嗽力の評価および適切な管理が必要となります。

使用機材

ピークフローメーター

測定肢位

座位

測定方法

  1. 空気漏れ のないようフェイスマスクを顔面に密着させる。
  2. 最大吸気位から随意的な咳嗽を全力で行うように指示する。
  3. 2−3回練習を行う。
  4. 3回測定し、最高値を採用する。

参考値[2]

  • 誤嚥性肺炎の咳嗽力のカットオフ値:240L/min以上
  • 吸引が必要なカットオフ値:100L/min以上

最長発声持続時間(MPT:Maximum Phonation Time)[3]

最大発声持続時間(MPT)は、発声を行うことができる最大時間を示します。

発声には、発声に必要な呼吸機能と適切な呼吸パターンの調節が必要です。そのため、MPTは呼吸筋、声帯、喉頭などの嚥下に関連する呼吸器系の筋肉の機能を評価することができます。

また、咳嗽の第3相(圧縮期)に求められる声門閉鎖の指標になるとも言われており、咳嗽力の評価にも有用な可能性があります。

嚥下機能が正常に機能するためには、正常な呼吸機能と呼吸パターンの調節が必要です。呼吸筋がタイミング良く協調して働くことで、食物や液体が喉頭を通過する際に、誤嚥を防止するために必要な呼吸パターンの制御が行われます。

そのため、MPTが長いことは、誤嚥リスクの評価に有用です。
MPTの向上は、呼吸筋の強化によって、嚥下筋の筋力を改善することにつながる可能性があります。

ただし、MPTは嚥下機能の評価に役立ちますが、治療に必要な詳細な嚥下機能の評価は、MPTだけでは不十分です。

使用機材

ストップウォッチ

測定肢位

座位(ADLが低い被験者はリクライニング座位30度)

測定方法

  1. 最大吸気位まで息を吸う。
  2. 被験者の自然な発声量で「ア」をできるだけ長く発声し、その時間を測る。
  3. 3回測定し、最高値を採用する。

参考値[3]

  • 自己排痰不可能群:3.3秒
  • 自己排痰可能群:8.8秒

おわりに

今回は、嚥下に関連する呼吸機能についてまとめました。飲食物は必ず喉を通るので、嚥下と呼吸は切っても切り離せない関係にあります。

今回紹介した指標が低下している場合には、誤嚥や窒息といった命に関わる有害事象が生じる危険性が高くなります。

肺炎や窒息予防のための適切な関わりが行えるように、評価からリスクはを判断することが大切です。

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✅記事監修(✅編集(てろろぐ

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参考文献

[1] Wenyan Li, et al. Expert Rev Respir Med. 2022 May;16(5):567-574.

[2] 山川 梨絵, 他:排痰能力を判別する cough peak flowの水準 中高齢患者における検討.人 工呼吸.2010;27:260-266.

[3] 垣内優芳: 排痰能力と最大発声持続時間との関係性. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2019; 27: 206-209.