理学療法で用いる評価の方法と結果の妥当性　バランス⑤　片脚立位保持時間

片脚立位、バランス、MDC|2023.10.6|最終更新:2023.10.6|理学療法士が執筆・監修しています

序文

　前回はFuctional Reach Testについてまとめました。今回は片脚立ち時間について見ていきます。片脚立ちは地域から病院まで対象は幅広く、場所を選ばずに実施できるため、有用な検査です。カットオフ値については様々な報告がありますが、どれくらい変化すれば「変化した」と言えるかについては、あまり知られていないのではないかと思います。普段よく使っている検査だと、周りも使っているから何となく検査している、ということに陥っていることも少なくないと思います。使いやすい検査だからこそ、その検査からわかることの意義を考えることは大切だと思います。

本記事でわかること

✅　片脚立ち時間は転倒や骨折、死亡リスクと関連している

✅　時間が計れればどこでも実施できる

✅　MCIDを調査した報告はなく、MDCの調査も少ない

片脚立ち時間と予後

　転倒リスクに関しては、地域在住高齢者を対象とした調査では、1年間の転倒予測の片脚立位時間のカットオフ値は5秒以下で、感度33%、特異度71%だったことが報告されています[1]。別の地域在住高齢者を対象とした調査では、過去6か月間の転倒歴の有無を分けるカットオフ値は23秒で、感度90.91%、特異度78.05%だったことが報告されています[2]。パーキンソン病患者を対象とした調査では、1回以上の転倒歴を予測するカットオフ値は10秒で、感度75%、特異度75%だったことが報告されています[3]。

　他のリスクについては、地域在住高齢者を対象とした調査では、片脚立ちが10秒間保持できないと、平均追跡期間18.3年間に大腿骨近位部骨折を受傷するハザード比が4.3だったことが報告されています[4]。別の地域在住高齢者を対象とした調査では、片脚立ち時間が10秒未満だと、中央値7年の追跡期間中の死亡のハザード比が1.84だったことが報告されています[5]。

　以上のように、片脚立ち時間は転倒予測として有用であり、骨折リスクや死亡リスクとの関連性も示唆されています。

片脚立ち時間の評価方法

準備物

ストップウォッチ
ふらついた時に支えることができる支持物

測定方法

開眼立位で腰に手をあてる。
片方の足を上げる。
上げた時点から時間の計測を開始する。
足が地面に着く、支持脚の位置がずれる、手が腰から離れるのいずれかで終了。

注意点

評価自体が転倒リスクとなる場合があるため、評価中の転倒に注意が必要。

片脚立ち時間のMDC

地域在住高齢者

　60-89歳までの地域在住高齢者を対象とした調査では、片脚立ち時間のMDCは24.1秒だったことが報告されています[6]。

　50歳以上の地域在住高齢者を対象とした調査では、片脚立ち時間のMDCは22.8～26.2秒だったことが報告されています[7]。

腎疾患

　21-90歳の血液透析患者を対象とした調査では、片脚立ち時間のMDCは11.3秒だったことが報告されています[8]。

おわりに

　今回は片脚立ち時間についてまとめました。片脚立ち時間は、用いられることが多い評価ですが、MDCやMCIDについてはまだまだ研究が少ない状況です。カットオフ値だけでなく、MDCやMCIDの研究が進むことで、より有用性が高い評価になるのではないかと思います。

本記事の執筆・監修・編集者

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地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7

— Isao Uno（宇野勲）@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022

✅記事監修（幸）✅編集（てろろぐ）

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参考文献

[1] Omaña, et al. Functional Reach Test, Single-Leg Stance Test, and Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment for the Prediction of Falls in Older Adults: A Systematic Review. Phys Ther. 2021 Oct 1;101(10):pzab173.

[2] Poncumhak, et al. Comparison of the Ability of Static and Dynamic Balance Tests to Determine the Risk of Falls among Older Community-Dwelling Individuals. J Funct Morphol Kinesiol. 2023 Apr 7;8(2):43.

[3] Jacobs, et al. Multiple balance tests improve the assessment of postural stability in subjects with Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2006 Mar;77(3):322-6.

[4] Rikkonen, et al. Long-term effects of functional impairment on fracture risk and mortality in postmenopausal women. Osteoporos Int. 2018 Sep 29(9):2111-2120.

[5] Araujo, et al. Successful 10-second one-legged stance performance predicts survival in middle-aged and older individuals. Br J Sports Med. 2022 Sep;56(17):975-980.

[6] Goldberg, et al. Minimum detectable change for single-leg-stance-time in older adults. Gait Posture. 2011 Apr;33(4):737-9.

[7] Beauchamp, et al.Reliability and Minimal Detectable Change Values for Performance-Based Measures of Physical Functioning in the Canadian Longitudinal Study on Aging. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2021 Oct 13;76(11):2030-2038.

[8] Villar, et al. Test-retest reliability and minimal detectable change scores for the short physical performance battery, one-legged standing test and timed up and go test in patients undergoing hemodialysis. PLoS One. 2018 Aug 22;13(8):e0201035.