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嚥下理学療法② 解剖(舌骨上下筋群、舌筋)

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舌骨上筋群, 舌骨下筋群, 舌筋|2022.2.03|最終更新:2022.2.03|理学療法士が執筆・監修しています

嚥下理学療法

前回は、嚥下理学療法についての概要に触れました。今回は、嚥下理学療法に必要な嚥下関連筋群の解剖を見ていきたいと思います。

本記事でわかること

✅ 頸部には複数の細かい筋肉が存在している

✅ 舌骨上筋群、舌骨下筋群は体幹との関係が深い

✅ 舌も重要な筋肉

 

嚥下に関連する筋肉

摂食嚥下には、顔面や頸部にある複数の細かい筋肉が関与しています。大まかに分類すると、口腔周囲筋群、咀嚼筋群、舌筋群、舌骨筋群、咽頭筋群があります。それぞれの筋の走行や作用の詳細については清書をご参照ください。いずれの筋肉も姿勢や体幹・四肢の運動機能の影響を受けるため、理学療法士の介入によって機能改善を図ることができる可能性があります。

 

口腔周囲筋

口を開閉する

  • 口輪筋
  • 頬筋
  • 表情筋
顔面神経
咀嚼筋(開口)

下顎を引き下げる

  • 顎二腹筋
  • 顎舌骨筋
  • 外側翼突筋
三叉神経、顔面神経

三叉神経

三叉神経

咀嚼筋(閉口)

下顎を引き上げる

  • 側頭筋
  • 咬筋
  • 内側翼突筋
三叉神経
舌筋(内舌筋)

舌の形を変える

  • 上縦舌筋
  • 下縦舌筋
  • 横舌筋
  • 垂直舌筋
舌下神経
舌筋(外舌筋)

舌の位置を変える

  • オトガイ舌筋
  • 舌骨舌筋
  • 茎突舌筋
舌下神経
咽頭筋

舌骨、咽頭、喉頭を引き上げる

  • 上・中・下咽頭収縮筋
  • 甲状咽頭筋
  • 輪状咽頭筋
  • 咽頭挙筋
  • 口蓋帆張筋
  • 口蓋帆挙筋
迷走神経(一部舌咽神経)

舌咽神経

三叉神経(下顎神経)

 

 

舌骨上筋群、舌骨下筋群の働き

摂食嚥下に関係する筋肉の中でも、体幹や四肢の機能との関係が深いのが舌骨上筋群舌骨下筋群です。これらの筋群は、舌骨と喉頭の運動に作用しています。

舌骨と喉頭は、舌骨上筋群と下筋群がお互いに引っ張り合うことでその位置が調整されています。舌骨の下部に付着している舌骨下筋群は、肩甲骨、鎖骨、胸骨といった、体幹の骨に付着しています。

そのため、体幹機能が低く姿勢コントロールがうまくできないような方では、舌骨下筋群の筋の長さや筋緊張が変化するため、正常な運動が妨げられてしまいます。

舌骨下筋群が機能不全に陥れば、舌骨上筋群が舌骨と喉頭を引き上げようとしても、下筋群と綱引き状態になるため、正常な挙上が妨げられてしまいます。

舌骨、喉頭の挙上が妨げられると、嚥下の際に舌圧を高めることができず、喉頭も閉鎖できないため、誤嚥のリスクが高くなってしまいます。姿勢と摂食嚥下機能の関係性については、別の機会で詳しく記載いたします。

 

舌骨上筋群

舌骨、喉頭を引き上げる

  • 顎ニ腹筋
  • 茎突舌筋
  • 顎舌骨筋
  • オトガイ舌筋
舌骨下筋群

舌骨、喉頭を引き下げる

  • 胸骨舌骨筋
  • 肩甲舌骨筋
  • 胸骨甲状筋
  • 甲状舌筋

 

舌の働き

舌の筋肉と聞くと、理学療法とは関係ないと思われる方は少なくないかと思います。しかし、舌の筋肉も全身機能と関係しているため、理学療法士にとっても必要な知識です。

舌は、摂食嚥下において食塊形成食物移送といった重要な役割を持っています。舌には上述のように、舌の位置を変える外舌筋と舌の形態を変える内舌筋があります。

舌は味覚を感じる感覚器として捉えている方が少なくないと思いますが、摂食嚥下においては、運動器としても捉えて考える必要があります。例えば、舌を全く動かさないようにして唾液を飲み込むことはできますでしょうか?

動かさないように頑張ってみても、動きを制御するのは難しいと思います。何かを飲み込もうとするとき、舌は口蓋に押し付けられ、食物を送り込むために必要な圧力を発生させます

この圧力が弱くなると、飲み込もうとした物が送り込めなくなり、嚥下しきれなかった物が気管に入って誤嚥してしまう危険性が高くなります。

また、固形物を食べる際に舌をできるだけ動かさないようにして食べることができるでしょうか?恐らく、切歯や犬歯で咀嚼した物を奥の臼歯に運ぼうとして、自然に動いてしまうと思います。

また、臼歯ですり潰した食物を飲み込みやすい形状に変えようとして、自然に舌が動いてしまうと思います。このように、舌はその運動性によって、摂食嚥下に貢献しています。

 

この舌の運動性ですが、全身の筋力と関連していることが知られています。近年では、全身の筋肉量、筋力、身体機能の低下を示す疾患である「サルコペニア」の状態では、舌の筋力の指標である舌圧も低下していることが明らかとなっています[1]。

 

いわゆる「サルコペニアの摂食嚥下障害」と呼ばれる状態です。サルコペニアの摂食嚥下障害が生じると、食べられる物に制限が生じたり、食べる時間が長くなることで途中で疲労してしまったりするため、栄養状態が悪化する危険性があります。栄養状態が悪化すれば、サルコペニアも悪化するため、負の連鎖が生じてしまいます。

 

この負の連鎖を断ち切るためには、舌筋のトレーニングはもちろんですが、全身の身体活動も効果的です。体が動けば、姿勢調節のために舌筋を含めた頭頸部の筋群が活動します。また、ベッドから離れて活動すれば、会話をする機会も増えるので、発声によっても舌の活動性が高まります。このように、舌は理学療法とは無縁のように感じられるかもしれませんが、全身との関係性があるため、舌についても考えられるようにしておく必要があります。

おわりに

今回は、摂食嚥下に関係する筋肉、特に舌骨上下筋群と舌筋についてみてきました。理学療法士にとってはあまり馴染みがない部分ではありますが、全身との関係性は深いため、知識として持っておく必要があると思います。

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✅記事監修(✅編集(てろろぐ

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参考文献

[1] Fujishima, et al. Geriatr Gerontol Int. 2019 Feb;19(2):91-97.

[2] 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 eラーニングテキスト