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セッティング別リハ栄養① 急性期・回復期・生活期

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病期目標設定支援体制|2022.12.30|最終更新:2022.12.30|理学療法士が執筆・監修しています

セッティング別リハ栄養

前回までは、各病態ごとの低栄養、サルコペニアの考え方について見ていきました。今回からは、病期や施設形態などセッティング別での低栄養、サルコペニアの考え方について考えていきたいと思います。

本記事でわかること

✅ 病期や環境が異なれば、対象者の特徴も異なる。

✅ 病期や環境が異なれば、目指すゴールが異なる。

✅ 病期や環境が異なれば、サポート体制が異なる。

対象者の特徴の違い

セッティング別に考えなければいけない理由の1つに、対象者の特徴が異なることが挙げられます。ここでいう対象者の特徴というのは、ベースとなる全身状態の違いのことを指します。

急性期

急性期で対象となるのは、疾患を発症または急性増悪したばかりで、全身状態が不安定な方々です。急性疾患や外傷、慢性疾患の急性増悪した状態では、炎症反応が上昇しているため、エネルギーの消耗が大きくなっています。また、重症例ですと、意識レベルも不安定になるため、食事摂取量が減少しやすくなります。

さらに、内因性のエネルギーを動員してエネルギーを得ようとする反応が生じることや、血流の再配分の影響で消化器系の機能低下が生じることから、エネルギー摂取量の制限を余儀なくされることが多くあります。そのため、急性期では治療過程で低栄養やサルコペニアを発症、増悪しやすい状態となっています。

回復期

回復期で対象となるのは、急性期を脱し、今から身体機能、ADLを向上させていかなければいけない方々です。この時点では、炎症による消耗は改善していますが、急性期で発症、増悪した低栄養、サルコペニアを引き継いでいることが多いです。最近では急性期の入院期間が短縮されてきているため、急性期で改善できていない状態で回復期に移行せざるを得なくなり、この特徴はより顕著になっています。

そのような状態で、回復期では身体機能やADL向上のために、疾患別リハの時間が倍以上に増え、病棟生活でも自分で行動する時間が増えるため、活動量が大幅に増加します。また、自宅や施設への退院に向けて、退院後の生活についても考えていくことが求められます。

生活期

生活期で対象となるのは、要介護状態ではない地域在住高齢者から在宅や施設で介護を受けている方まで、多様な特徴を持つ方々です。要介護状態ではない地域在住高齢者は、日常生活が送れているため、一見すると問題がないように思われますが、潜在的に低栄養やサルコペニアのリスク因子を有している方が少なくありません。そのため、何かきっかけがあれば、容易に低栄養やサルコペニアが生じたり増悪したりする可能性が高い状態と言えます。

在宅で介護を受けている方々は、社会資源の利用状況や周囲の方々の支援体制に大きく影響を受けます。その人の生活に合わせた支援体制が整っていれば、低栄養やサルコペニアのリスクを減らすことができますが、他者との交流を好まなかったり、ケアサービスの利用を拒んだりする例は少なくありません。支援体制が充足しているかどうかは、時系列で刻々と変化するため、適宜評価して見直しをしていく必要があります。

目標の違い

次にセッティング別で考えなければいけないのは、目標とする方向性が異なることです。上述したように、それぞれのセッティングで対象となる方が異なります。対象者が異なれば、自ずと目標地点も変わってきます。

急性期

急性期では、疾患の治療が最優先されます。急性疾患や慢性疾患の増悪などによって炎症反応が高く、エネルギーを思うように取り込むことができない状態に陥りますが、まずは生命を維持するための対応が行われます。この時期には栄養状態やサルコペニアが悪化してしまうことは、生体の反応として仕方がない部分もあります。そのため、改善を目指すことが難しいため、悪化を少しでも緩やかにしていくことが目標となります。

回復期

回復期では、身体機能やADLといった生活機能の改善が目標となります。この時期は、急性期で栄養状態やサルコペニアが悪化した状態で入院してくる場合が多いです。そのため、まずは悪化した部分の改善に向けた対応が求められます。低栄養やサルコペニアの改善は身体機能やADLの改善に必須であるため、早期に取り組み、生活機能の改善に向けた土台作りをしていく必要があります。次の段階として、増加していく活動量に合わせて食事内容を調整していく対応が求められます。入院時に設定した食事内容をそのまま継続していくと、活動量に対して栄養量が不足してしまいます。リハの内容やADLが変わるタイミングなど、適宜食事内容を見直す必要があります。最後の段階として、退院後の生活に向けた対応が求められます。回復期では、退院するまでがゴールではなく、退院後の生活についても考えていきます。食材はどのように入手するか、調理はどうするか、食形態はどうするか、必要な栄養を摂取するにはどうするかなど、退院するまでに調整をしていく必要があります。

生活期

生活期では、生活機能の悪化の予防が主な目標となります。要介護状態ではない地域在住高齢者では、フレイルや介護予防のために、社会参加を増やしていくことが1つの目標となります。社会参加を増やすことで、身体活動量や他者との交流の機会が増えるため、社会性だけでなく、精神心理機能や身体機能、口腔機能、栄養状態の低下を予防する効果も期待できます。在宅で介護を受けている高齢者では、生活機能を維持・改善することが目標になります。介護度の悪化や入院を予防するために、ケアサービスを適切に利用して、例え身体機能が低下してきたとしても、環境を調整することで、自らできることを減らさないようにするサポートが必要になってきます。特に、口腔機能や栄養状態は、低下していても重篤になるまで気づかれないことが少なくないため、早期発見、早期介入が必要になってきます。

支援体制の違い

3つ目に考えなければいけないことは、支援体制の違いです。医療施設では、病棟の種類によって求められている機能が異なり、人員配置の施設基準も異なってきます。また、介護施設においても同様に種類ごとに違いがあります。支援体制が異なることで、それぞれに強みと弱みがあるため、その施設はどのような機能があり、どのような支援が可能なのかを確認しておく必要があります。

急性期

急性期では、主な支援者は医師看護師です。医療的な支援が主となるため、医療資源が豊富であり、様々な検査や治療が可能な環境です。栄養管理も、経口摂取をされる場合には種々の食形態、栄養補助食品の利用が可能な施設が多いです。また、経口摂取が困難な場合でも、経鼻経管栄養や中心静脈栄養といった強制栄養の利用が可能です。いずれの栄養投与方法でも、患者さんの全身状態に合わせた栄養剤や輸液があるため、様々な局面に対応できます。一方で、全身状態が不安定な時期であるため、リハスタッフの関わる時間は限られてきます。そのため、活動量を確保することが難しくなります

回復期

回復期では、主な支援者はリハスタッフや看護師といったコメディカルで、医師の関わりは施設によってバラつきがあります。この時期は生活機能を向上させ、退院後の生活についても考えていかなければいけないため、生活全般のリハ・ケアが必要になります。そのため、療法士や看護師だけでなく、管理栄養士、薬剤師、歯科衛生士、ソーシャルワーカーなど、医療介護関連の多職種による支援体制を整えることが重要となります。また、病院内だけでなく、退院後に在宅や施設でのケアに関わる方々も交えて支援体制を構築していくことで、円滑な退院支援と退院後の生活支援をより充実した内容にできます。家族の支援が望める場合には、回復期に入ってから早い段階で家族も支援体制の輪の中に入っていただけるように、ケアの指導などを行なっていくことが大切になります。栄養に関しては、ただ栄養を摂取するだけでなく、退院後の生活を見据えた栄養管理を、患者さんや家族を交えながら多職種で検討していく必要があります。

生活期

生活期では、主な支援者は家族やケアマネージャー、介護職といった非医療従事者であり、医療従事者の関わりは急性期や回復期と比較して減少します。また、行政や地域の民生委員地域住民自身も支援の輪の中に入っていただく必要があります。在宅や地域では、ヒト、モノ、カネといった資源が限られています。そのため、家族や地域住民といった非公的な方々の支援が重要となってきます。最近では、地域住民が主体となって健康教室などの集会を行う「通いの場」作りを各自治体が積極的に進めており、通いの場の運営のサポートに療法士が関わることが増えてきています。デジタル技術を用いた支援も増えてきており、資源不足を補う新しい方策が、日々検討されています。生活期の課題は、在宅介護を受けている方をどう支援していくかです。2025年問題、2040年問題と、人口減少と高齢者の増加に伴い、在宅で療養する方は増えてくることが予想されます。しかし、老々介護や独居高齢者は増加しており、地域とのつながりを持っていない方も多いため、支援体制が脆弱になってきています。この状況をどうしていくか、各自治体や政治は動き出しているので、今後の動向を追っていくことが大切です。

患者の状況をよく見極める

今回は、セッティング別での考え方についてみてきました。病期や施設形態、地域によってその特性は異なるので、自分が関わる方がどのようなセッティングの方なのかを考えながら関わっていくことが大切だと思います。

本記事の執筆・監修・編集者

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