会員登録はこちら

まずは14日間無料体験
すべてのコンテンツが利用可能です

リハビリで重要なリスク管理の確認項目【バイタル・合併症・安静度】

[no_toc]

リスク管理, 新人 |2022.03.10|最終更新:2022.03.12|理学療法士が監修・執筆しています

本記事でわかること

✅ 臨床で必要な基本的なリスク管理がわかる。

✅ もしもの時の対応方法がわかる。

 

理学療法士として働き始めてすぐの時、まず先輩からしっかり勉強しなさいと言われたのがリスク管理でした。

急性期だからリスク管理しっかり学ぶ!回復期だからそんなにリスク管理しなくて大丈夫!なんてことはもちろんありません。

今回はそんなリスク管理の方法について紹介していきたいと思います。

なぜリスク管理が必要なのか?

リハビリテーションは本質的にハイリスクの分野である。しかし、転倒や合併症のリスクを恐れてリハビリテーションを実施しないと廃用に陥るリスクがあることも述べられています1)

リハビリテーション(以下リハ)ではリスクと効果を天秤にかけながら、成果を出さないといけないのです。そのためにもリスク管理を学ぶ必要があります。

リスク管理といっても、転倒、血圧の低下、上昇、嘔吐、動悸等本当に多岐に渡るので、今回はその中でも一部について紹介していきます。

 

バイタル

まずリスク管理で皆さんがよく聞くのはAnderson基準の土肥変法2)の中でもバイタルでしょうか?

 

Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合

1)安静時脈拍数120/分以上
2)拡張期血圧120以上
3)収縮期血圧200以上
4)労作性狭心症を現在有するもの
5)新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
6)うっ血性心不全の所見の明らかなもの
7)心房細動以外の著しい不整脈
8)運動前すでに動悸、息切れのあるもの

 

 

 

Ⅱ.途中で運動を中止する場合

1)運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
2)運動中、脈拍が140/分を越えた場合
3)運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
4)運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合

 

 

 

Ⅲ.次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する

1)脈拍数が運動時の30%を超えた場合、ただし、2分間の安静で10%以下にもどらぬ場合は、以後の運動は中止するかまたは極めて軽労作のものに切り替える
2)脈拍数が120/分を越えた場合
3)1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
4)軽い動悸、息切れを訴えた場合

 

患者の安静度に合わせたリハビリ

学生時代はこれを覚えるのにほんとに苦労しました…(笑)

もちろん全て覚えるにこしたことはないのですが、私は小さなサイズに印刷して、常に持ち歩くようにしています。

確認したい時にサッと確認できる状況を作っておくことで、脈拍120って運動中止?それとも一時中断?と慌てずにすみます。

基本的にはこの基準に沿ってリハを行いますが、そうでない場合もあります。

例えば安静時血圧160台、ちょっと高いけど基準を満たしているし大丈夫!と思うかもしれませんが、降圧剤を飲んでいるので、血圧160超えたらリハしないでくださいと医者が指示している場合もあります。

まずは医者に安静度をしっかりと確認しておくのが大切です。

 

起立性低血圧に要注意!

また離床の際に気を付けたいのが起立性低血圧です。

起立性低血圧は,仰臥位または座位から立位への 体位変換にともない,起立 3 分以内に収縮期血圧が 20 mmHg 以上低下するか,または収縮期血圧の絶対 値が 90 mmHg 未満に低下,あるいは拡張期血圧の 10 mmHg 以上の低下が認められた際に診断されます3)

脱水状態なら飲水量の確認、心疾患の有無等、原因によって対処方法は様々なのですが

・まずはベッド上臥位で下肢筋を収縮するように運動→座位で下肢筋の運動

・下肢に弾性包帯や弾性ストッキングを使用する

・リクライニング車椅子を使用する

・急に血圧が下がってもすぐにベッドに戻れるように環境設定をする

等の対応を私はよくやります。

また私は自分だけで判断しないようにしています。何か少しでもおかしいなと思ったら看護師に報告、リハ介入していいかの確認を必ず取るようにしています。

 

合併症、既往歴や投薬状況

 

理学療法対象者の高齢化が進み、主病名が付いたとしても複数の疾患を有し,重複した障害を有する患者が増えています4)

主病名が全人工股関節置換術だから脱臼だけ気を付けよう!ではなく、高血圧、貧血、糖尿病、脳卒中の後遺症等の合併症や既往歴まで確認するのが大切です。

服薬による副作用の確認も忘れないようにしましょう。

認知機能

認知機能の確認もリスク管理として必ず行っておきましょう。

例えば認知機能の低下が見られる方で、禁忌肢位である体幹屈曲をしないでくださいという指導をしても禁忌肢位を取ってしまう方なら、ベッドの近くに体を曲げないように気をつけましょうと写真付きで貼るなどの対応をよくやります。

また基本的には離れたりしないですが、リハ中に物品を取りに行く時なども、周りのセラピストに見ておいてもらう、一緒に取りに行くなどの対応をします。

HDS-RやMMSE、また普段の会話や院内でどのように過ごしているかを他部門から情報収集を行いましょう。

機器の管理

血圧計やパルスオキシメーター、車椅子等の機器の管理もとても大切です。

正しい血圧測定ができなかったり、空気の抜けた車椅子を使うなどはそのままインシデントやアクシデントに繋がる可能性があります。

僕の病院でも最低週に1回、血圧計やパルスオキシメーターのチェック、車椅子や歩行器なども担当者がチェックするのはもちろん、専用の係が院内を回って確認する作業を行なっています。

術式や手術侵襲の確認

全人工股関節置換術などでは後方から侵入しているか、前方かだけで脱臼肢位が変わります。

まずは自分自身がしっかりと脱臼肢位を理解し、指導を行うことがリスク管理となります。

またどの筋を侵襲しているかの確認も忘れずに行いましょう。

もしインシデントを起こしてしまったら?レポートの書き方

リスク管理を徹底していてもインシデントやアクシデントが起こることはあります。その際はレポートというのを書くのが一般的です。

 

5W1Hでのレポートの書き方

書き方は職場によって様々ですが、私のところでは5W1H

 

・いつ(When)
・どこで(Where)
・誰が(Who)
・何を(What)
・なぜ?(Why)
・どのように(How)

 

に沿って書くようになっています。レポートを書いて、蓄積、共有し、次同じような事が起こらないように院内で徹底するのが大切です。

私も初めてインシデントを起こしてレポートを書いたときは怒られる・・・と思っていましたが、先輩がついて一緒に丁寧に書いてくださりました。

インシデントを起こした本人がレポートを書くのは勇気がいることですが、必ず書くようにしましょう!

 

今回はリスク管理についてでした。他にも貧血や嘔吐、栄養状態等まだまだリスク管理については書きたいことがあるので、また機会がありましたら書かせていただきたいと思います。

本記事の執筆・監修・編集者

✅記事執筆者(よーしょー先生)のTwitterはこちら↓↓

 

✅記事監修(幸代表✅編集(てろろぐ

関連する記事 

新人さんにおすすめな記事はこちら

✅人気記事はこちら

✅新人さんにおすすめの動画はこちら

あなたにおすすめの記事

参考文献

  • リハビリテーション医療における安全管理推進のためのガイドライン:https://www.jarm.or.jp/nii/iinkai/sinryo-guide/risk-manage_GL_draft.pdf.
  • 鈴木俊明, 中山恭秀:神経障害理学療法学Ⅰ. 東京:株式会社メジカルビュー社.p85. 2019.
  • 井上博,相澤義房, 他:失神の診断・治療ガイドライン.Circ J 7(1 Suppl IV):pp1049-1101,2007.
  • 高橋哲也:運動療法時のリスク管理の要点ー適切な運動療法によりアクシデントを防ぐー. 理学療法の歩み.32:1, pp3-9,2021,.