姿勢制御, 姿勢定位, 重みづけ|2022.06.08|最終更新:2023.12.21|理学療法士が監修・執筆しています
姿勢定位に関して
前回のPart1では主に「姿勢安定性」について執筆させて頂きました.今回は「姿勢定位」についてお話していきたいと思います.
「姿勢定位」の分野におけるポイント
まずは,今回からの話における,「知っておいて欲しい・覚えてもらいたい」というポイントです.
姿勢定位には,視覚系,前庭迷路系,体性感覚系という3つの入力系が関与することが知られています.
今後の話においても,この3つの感覚系を知っておくことで理解しやすくなると思います.
①視覚
視覚は,バランスを維持するための感覚情報の主要なシステムです.そのため,開眼と閉眼では健常者でも動揺の差が大きいと思います.これらからも,視覚環境の改善によって姿勢安定性は向上すると考えられると思います.
また,眼球運動には,
〇 頭部が動いたり,動いているように見えるときに眼球を安定させるもの
(視線安定化)
〇 視覚対象が変化・移動したときに視覚対象の像を眼球の焦点に合わせ続けるもの
(視線移動:追従眼球運動,輻輳,サッケード)
上記2つの機能分類があります.
②前庭感覚
前庭感覚は,傾斜面に立ったり,凸凹の場所に立ったり,目を閉じた状態で立ったりするなど,様々な環境下で,感覚の方向性と適切な感覚の手がかりの重み付けを用いて,体幹を垂直にします.また、傾いたりするような姿勢運動の際に頭部を安定させます.
前庭感覚と視覚が相互に調整されることで,寝返りや起き上がりなど,複雑な頭頚部と体幹,四肢の協調運動が成立します.
我々PTが重きを置きがちな座位・立位・歩行だけでなく,寝返りや起き上がり動作においても,これらのような姿勢定位に関わる感覚系が十分に働く必要があります.
pusher現象の評価のSCP(Scale for Contraversive Pushing)は座位と立位を評価する為,これらのような視点を忘れやすくなるかもしれませんね.
③体性感覚
体性感覚は,感覚ニューロンと経路からなる複雑なシステムで,身体の表面や内部の変化に反応します.また,身体の位置に関する情報を脳に伝え,脳が適切な運動反応や動作を起こすことで,姿勢のバランスを保つことにも関与しています.
機械受容器(メカノレセプター)は,筋紡錘にある特定の感覚受容器です.筋紡錘は,筋肉の長さや収縮速度などの情報を神経系に提供し,個人の関節運動や位置感覚の識別に貢献しています.
また,筋紡錘は,適切な反射や随意運動に変換可能な求心性フィードバックを提供します.
筋紡錘の伸張刺激を伝達する感覚入力系の脊髄小脳路は治療戦略として重要です.これについては後のPartでお話できたらと考えています.
感覚の重みづけ
姿勢制御を行う上では,上記の視覚・前庭感覚・体性感覚の3つが中枢神経系で統合されることになります.
それぞれの感覚には割合があり,これが「感覚の重みづけ」とされています.
Horak³⁾によると姿勢制御に必要な感覚情報は、
主に視覚(10%),前庭感覚(20%),固有受容感覚(70%)であり,
健常者であれば安定した立位には視覚や前庭感覚はほとんど必要とされず,主に固有受容感覚情報をもとにした姿勢制御が行われると言われています.
脳卒中患者の場合,視覚や前庭感覚に依存しやすく,
床面を見ながらの歩行(視覚依存),頭頚部や眼球を過剰に固定した姿勢(前庭依存),下肢の支持を過剰に強め,緩められない歩行(前庭依存)などのパターンになりやすいと言われています⁴⁾.
おわりに
Part2からは「姿勢定位」について執筆させて頂きます.
今回のPart2は感覚系の中でもポイントとしている話だけで思ったよりも長くなりました笑.
ちょっと物足りないですが,続きに行くとボリュームが多くなりますので,ここらでPartを区切らせて頂きます.次回に続きますので,どうぞ宜しくお願い致します.
次回の記事はこちら
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最後の森岡先生の言葉は本当にそうで
もし、自分が脳卒中になった場合
担当して欲しいと思うリハスタッフって限られてくると思うんですそして、自分をもし自分が担当すると考えた時
正直、まだ嫌だなあって思うんですこれが自己研鑽を本気で継続する理由の1つにはなると思うんです
— Goto🦎特徴が無いのが特徴です (@pt_reha) October 31, 2021
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参考文献
1) Shumway-Cook A, Woollacott M (著) , 田中 繁, 高橋 明:モーターコントロール 原著第3版―運動制御の理論から臨床実践へ―. 医歯薬出版, 東京, 2009.
4)金子 唯史 : 脳卒中の動作分析―臨床推論から治療アプローチまで―, 第1版, 医学書院, 2018.