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理学療法で用いる評価の方法と結果の妥当性 バランス⑥ Four Square Step Test

Four Square Step Test、バランス、MDC|2023.10.13|最終更新:2023.10.13|理学療法士が執筆・監修しています

序文

 前回は片脚立ち時間についてまとめました。今回はFour Square Step Test(FSST)について見ていきます。FSTTは、バランス能力を客観的かつ効果的に評価し、個別のバランス障害を特定するのに役立つ新たなツールです。このテストは、患者の足元に配置された4つの正方形を移動する過程で、患者の動作能力とバランスを評価するものです。FSSTは省資源かつ短い時間で測定できるツールであるため、使用しやすい検査方法ではないかと思います。

本記事でわかること

✅ FSSTは転倒や身体機能と関連している

✅ 測定は省スペースかつ短時間で行える

✅ MCID。MDCは疾患によってばらつきがある

FSSTと予後

 FSSTはバランスや足の柔軟性、反応能力といった転倒の原因となる要因を評価できます。そのため、転倒リスクの評価の有用性が報告されています。リハビリテーション施設を退院した患者を対象とした調査では、退院後6か月間の転倒の有無を判別するカットオフ値を24秒で、感度92%、特異度93%だったことが報告されています[1]。地域在住高齢者を対象とした調査では、転倒の有無を判別するカットオフ値を15秒で、感度85%、特異度88%だったことが報告されています[2]。生活期の脳卒中患者さんを対象とした調査では、健常成人との差を示すカットオフ値は11秒で、感度73.3%、特異度93.3%だったことが報告されています[3]。パーキンソン病患者さんを対象とした調査では、転倒歴のある群とない群を判別するカットオフ値は9.68秒で、感度73%、特異度57%だったことが報告されています[4]。

 他の指標とFSSTとの関連性では、地域在住高齢者を対象とした調査で、フレイル高齢者とプレフレイル高齢者は健常高齢者よりもFSSTに要する時間が長いことが報告されています[5]。地域在住のパーキンソン病患者さんを対象とした調査では、FSSTは歩行速度を予測する因子だったことが報告されています[6]。

 以上のように、FSSTは転倒やフレイル、歩行機能との関連性が報告されており、臨床での有用性が認められています。

FSSTの測定方法

準備物

  • ストップウォッチ
  • 杖×4本

測定方法

  • 杖を「+」の形になるように並べ、4つの区画をつくる。
  • 左手前の区画から開始する。
  • 杖をまたいで区画を移動する。
  • 各区画では必ず両足をつくようにする。
  • 時計回りと反時計回りで、それぞれ1周する時間を測定する。
  • 各2回ずつ実施し、良い方の時間を採用する。

注意点

  • 転倒リスクが高い被験者では、転倒に注意する。
  • 測定方法を理解できていない場合があるため、検査者によるデモンストレーションと試行を行い、理解度を確認する。

FSSTのMCID、MDC

運動器疾患

 脊椎変性疾患を有する患者さんを対象とした調査では、自己申告の評価であるActivities-specific Balance Confidence(ABC)スケールをアンカーとした時のMCIDは3.6秒だったことが報告されています[7]。

 変形性股関節症患者さんを対象とした調査では、FSSTのMDCは2秒であることが報告されています[8]。

中枢神経疾患

 歩行が自立している脳卒中患者さんを対象とした調査では、区画を分ける杖をテープに変更した修正版のFSSTのMDCは6.73秒だったことが報告されています[9]。

 歩行可能な多発性硬化症患者さんを対象とした調査では、FSSTのMDCは4.6秒だったことが報告されています[10]。

 歩行可能な成人脳性麻痺患者さんを対象とした調査では、FSSTのMDCは3.7秒だったことが報告されています[11]。

 ハンチントン病患者さんを対象とした調査では、FSSTのMDCは3秒だったことが報告されています[12]。

おわりに

 今回はFSSTの評価方法とMCID、MDCについてまとめました。FSSTは海外では多く利用されている評価ですが、日本の研究報告はまだあまりありませんでした。FSSTは場所を取らず、少ない物品で短時間に測定できるため、今後調査が進み、より利用しやすい評価になることを期待しています。

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参考文献

[1] Dite, et al. Clinical identification of multiple fall risk early after unilateral transtibial amputation. Arch Phys Med Rehabil. 2007 Jan;88(1):109-14.

[2] Dite, et al. A clinical test of stepping and change of direction to identify multiple falling older adults. Arch Phys Med Rehabil. 2002 Nov;83(11):1566-71.

[3] Goh, et al. Reliability and concurrent validity of Four Square Step Test scores in subjects with chronic stroke: a pilot study. Arch Phys Med Rehabil. 2013 Jul;94(7):1306-11. 

[4] Duncan, et al. Four square step test performance in people with Parkinson disease. J Neurol Phys Ther. 2013 Mar;37(1):2-8.

[5] Aquino, et al. The Four Square Step Test is a useful mobility tool for discriminating older persons with frailty syndrome. Exp Gerontol. 2022 May;161:111699.

[6] Shearin, et al. Differences in predictors for gait speed and gait endurance in Parkinson’s disease. Gait Posture. 2021 Jun;87:49-53.

[7] Batting, et al. Minimal clinically important difference of the Four Square Step Test in people with degenerative spinal conditions. Physiotherapy. 2022 Jun;115:58-60.

[8] Choi, et al. Interrater and intrarater reliability of common clinical standing balance tests for people with hip osteoarthritis. Phys Ther. 2014 May;94(5):696-704.

[9] Roos, et al. Development of the Modified Four Square Step Test and its reliability and validity in people with stroke. J Rehabil Res Dev. 2016;53(3):403-12.

[10] Wagner, et al. Four Square Step Test in ambulant persons with multiple sclerosis: validity, reliability, and responsiveness. Int J Rehabil Res. 2013 Sep;36(3):253-9.

[11] Levin, et al. Test-retest reliability and minimal detectable change for measures of balance and gait in adults with cerebral palsy. Gait Posture. 2019 Jul;72:96-101.

[12] Kloos, et al. Clinimetric properties of the Tinetti Mobility Test, Four Square Step Test, Activities-specific Balance Confidence Scale, and spatiotemporal gait measures in individuals with Huntington’s disease. Gait Posture. 2014 Sep;40(4):647-51.