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TUGの評価方法と評価理由-なぜ必要?使用物品やカットオフ値は?-

評価,TUG,転倒 |2022.10.05|最終更新:2023.12.21|理学療法士が監修・執筆しています

臨床現場で歩行や転倒のリスクを評価する方法として、
簡便なTimed Up & Go Test(以下TUG)を行ったことがある方は多いかと思います。

ただ私自身もTUGって転倒と関連があるらしい、カットオフ値と比べてどうかな?新患杖レベルらしいのでとりあえずTUG計測しておこう!程度しか考えていませんでした。

今回はそんなTUGについて深堀りしていけたらと思います。

本記事のポイント
  • 椅子、コーン、ストップウォッチ、メジャーが必要
  • カットオフ値は10~13.5秒、20秒以上は屋内ADL自立は難しい。
  • 評価方法は統一して実施すること。
3分で読めるよ

TUGとは

まずTUGについて基本的なところから紹介します。

TUGは動的バランスを評価する指標としてPodsiadloら1)によって提唱されました。
方法は、
高さ約46cm椅子座位から起立→3m歩行→180°方向転換→再度3m歩行→着座動作を被験者各自の安全で快適な速度で行い、その所要時間をストップウォッチを用いて計測するというものです。

椅子、コーン、ストップウォッチ、メジャー(3mの距離を測定するため)、4~5mの距離が確保できる場所さえあれば評価可能なので、準備に時間がかからないのもTUGのいいところです。

TUGで評価できること

TUGは歩行だけでなく起立、着座や方向転換を含んだ動作であるため,歩行能力の評価のみならず,実際の日常生活場面に近い条件での動的バランス評価指標としても用いられている2)と言われています。

また下肢筋力、バランス、歩行能力、日常生活機能との関連も高く、検査の信頼性、妥当性が報告されています1)3)4)。また、転倒予測の検査としても用いることが可能ともいわれており5)、上記の通り準備が簡単で計測時間も少ないのにも関わらず、いろいろな指標として使うことができます。なぜよくTUGが使われているのかもわかりますね。

TUGの使用物品・計測方法・注意点

 使用物品

・椅子
・コーン
・ストップウォッチ
・メジャー    

計測方法

TUGの計測方法については文献によって少しずつ違いがありますが

至適速度と最速速度の2回、できるのなら右回りと左回りの合計4回を計測します。

また計測者はストップウォッチを使用し、スタートと合図してから、患者さんの臀部が椅子につくまでを計測します。

下記のように、評価者の評価方法を統一して行いましょう。

評価時の注意点(椅子の高さ・立ち上がり方)

原法では椅子の高さは約46cm、肘掛け付きの椅子で行うとされています。しかし必ず肘掛け付きの椅子、また46cmのものを準備できるかと言われると難しい場面もあるかと思います。

Siggeirsdottirら6)によると椅子の種類によってTUGの結果が変わることが報告されており、また椅子の高さは44~47cmが望ましいと述べられています。しかし原法も含め、海外での研究であるため、欧米人に比べ平均身長が低い日本人では日本人に合ったデータで行うのがよいと述べられています7)

腰かけた際に足がつく高さで行いましょう。

松本ら8)はTUGを行う際の立ち上がりを①膝を押す立ち上がり②座面を押す立ち上がり③肘掛けを押す立ち上がりの3つの方法を行わせ、膝を押す立ち上がりは座面を押す立ち上がり・肘掛けを押す立ち上がりに対し有意に遅く、座面を押す立ち上がりでと肘掛けを押す立ち上がりには有意差を認めなかったことを報告しています。

つまり、TUGの結果に改善が見られたとしても、初期評価で膝を押す立ち上がり、次の評価で座面を押す立ち上がりを行っていればそれはセラピストの介入によって良くなったとは言えない可能性があるわけです。
再評価する際は、椅子や立ち方を考慮し、1回目の評価とそれ以降行う際にできる限り統一する必要があります。

TUGのカットオフ値

TUGのカットオフ値は文献によって様々ですが10~13.5秒1)9)10)となっています。
また20秒以上となると屋内ADL自立は難しいとされています1)

しかし島田ら11)はTUGが7秒以内であっても転倒率が約10%であったことを報告しており、カットオフ値だけを重要視しすぎないように気を付けましょう。

最後に

TUG計測の際は秒数の結果だけを見るのではなく、立ち上がり、歩行、方向転換、着座の動作を評価することも大切です。歩行速度やどこでふらついているか、方向転換時の軌跡、歩幅はどれぐらいか等も確認していきましょう。

立ち上がりが苦手なのなら、立ち上がりの動作を評価し、何が原因で立ち上がりの動作がしにくくなっているのかとつなげていくことができます。

最近はTUGにさらに課題を加えた評価も使用されてきています。荷物を持つ、誰かと話しながら歩く等、歩きながら何かを行うということも普段の生活ではたくさんあると思います。これらの評価となるのがTUG manualTUG Cognitiveです。TUG manualは水を持ちながら、TUG CognitiveはTUGを実施中に引き算をしていくという課題です。日常生活では二重課題を行いながら歩行を行うことが多いため、より日常生活に沿った評価となります。単一課題と二重課題の際の違い等も評価できるといいと思います。

今回は臨床でもよく使うTUGについて深堀りさせていただきました。この記事を読んでみなさんも是非TUGについて再考いただけたら幸いです。

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参考文献

1)Podsiadlo, D., and Richardson, S. (1991) The timed “Up and Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. Journal of the AmericanGeriatrics Society 39(2): 142-148.

2) 對馬 均,松島美正:TUG Test・BBS.リハビリテーション における評価法ハンドブック─障害や健康の測り方.赤居正 美(編),医歯薬出版,東京,2009, pp168-173.

3)Bischoff HA,Conzelmann M,et al ; Self−reported exer −cise before age 40; influence on quantitative skeletal ultrasound and fall risk in the elderly .Arch Phys Med Rehabil 82;801−806 ,2001.

4)between physical performance  measures,age,height and body weight in healthy adults.Age Ageing 29: 235−242,2000

5)Shumway-Cook A,Brauer S.et al.: Predicting the prob-ability for falls in community.dwelling older adults using the Timed Up & Go Test.Phys Ther 80:896−903,2000.

6)Siggeirsdottir K,Jonson BY,et al; The timed ‘Up & Go’ is dependent on chair type.Clin Rehabil.2002;16:609-616.

7)北地 雄, 原 辰成,他:回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳血管疾患後片麻痺を対象とした歩行自立判断のためのパフォ ーマンステストのカットオフ値.理学療法学,2011,38,7,p481-488.

8) 松本 和久, 木村 篤史,他:  Timed“Up and Go”testにおける上肢使用法に関する考察.理学療法科学,2008,23:1,p7-10.

9) 石川朗, 河村 廣幸, 他: 運動器障害理学療法学Ⅰ 東京: 株式会社中山書店; 2011. p.64.

10)日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mads.html

11)島田裕之,古名丈人,大渕修一・他:高齢者を対象とした 地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性.理学療法学,2006, 33: p105-111.