はじめに
・高齢者では水分摂取量が不足しやすく、生理学的、認知的、心理学的な状態の短期的または長期的な変化のリスクが高まり、様々な有害事象の発生やQOLが低下することが明らかになっています[1]。
・高齢者は、喉の渇きの感覚低下や腎機能低下など加齢に伴う生理的変化により、脱水のリスクが高くなります[2]。
高齢者の脱水状態を改善することは、
予後の改善や医療コストの削減など社会的に有益であることが考えられますが、
脱水状態に対する有効な介入方法については明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「高齢者の脱水状態に対して有効な介入方法は?」という疑問に応えてくれる論文です[3]。
研究概要
2021年にオーストラリアのBrunoらの研究チームは、2020年5月までに登録されている19本の論文を解析しています。
対象者
人数:978名。
調査国:アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、アイルランド、日本、台湾。
対象施設:老人ホーム、長期介護施設、急性期病院、リハビリテーション施設、亜急性期施設、脳卒中病棟
介入カテゴリー
- 行動的介入:
提供する容器を変える。飲料の種類の制限をなくす。1日に複数回、複数の飲料の選択肢を提供する。飲水するように何回も促す、など。 - 環境的介入:
食器を変える。飲水時の姿勢を変える。飲料環境を調整する。飲水量の目標を掲示する、など。 - 多面的介入:
投薬時間での飲水促し+ノンアルコールカクテルを選択肢に加える。匂いのついた飲料+大きい容器で提供+飲水促し、など。 - 栄養的介入:
トロミ水を食感の良いものに変える。嚥下障害者に対する水分摂取プロトコルの使用。食事パターンの変更、など
介入期間:3日~12か月。
結果
効果あり | 効果不明 |
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ただし、水分摂取量の評価方法や介入内容にバラつきがあるため、更なる調査が必要と述べられています。
まとめ
高齢者の飲水量を確保するためには、飲水するための容器を変えたり、飲料の種類を増やしたり、介助者が促したりすることなど、行動として関わることが有効なようです。
一方で、介入方法の個別性が高く複雑になると、介入の効果がわかりにくくなることも指摘されております。
ご高齢の方では、飲水を含めた食嗜好の個別性が高い印象がありますので、対象の方にどんな介入方法が有効なのか、try & errorを繰り返しながら探るのが良いかもしれません。
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参考文献
[1] Wotton, et al. Contemp Nurse. 2008 Dec;31(1):44-56.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19117500/
[2] Mentes, et al. J Gerontol Nurs. 2020 Feb 1;46(2):19-30.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31978236/
[3] Bruno, et al. Nutrients. 2021 Oct 18;13(10):3640.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34684642/