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腰部コルセットの必要性-着用継続期間は?筋力低下する?効果ある?-

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運動器, 装具, 腰部|2022.04.19|最終更新日:2022.04.19|理学療法士が監修・執筆しています

コルセット着用における疑問と回答

これからコルセットを着用する患者さん、またそれを処方する医療者の方はいろいろな不安があるかと思います。

・本当にコルセットを着用すべき?意味あるの?
・どのくらいの期間つけていればいいの?
・ずっと巻いてると筋力がよわってしまうんじゃ、、?

今回は腰部コルセットを焦点に、関連する論文や明日の臨床で使える知識を探してまとめました。

 

本記事の結論

  • 腰仙部に対するコルセットの着用期間が長くなっても体幹筋力の低下は生じにくい。
  • 装具の使用で骨折の悪化を防げるが、3ヵ月以降の固定期間には個別性が必要。
  • 体幹装具+筋力訓練の併用は腰部の安定性を高める。

腰仙装具・コルセットの種類

腰椎圧迫骨折をした際は、保存療法(コルセットを着用し安静、経過を見る)か手術療法のいずれかが選択されますが、臨床でも前者の方が多いかと思います。
そこで、今一度保存療法で使用されるコルセットの種類を復習します。

 

軟性装具
一般的にコルセット(軟性コルセット)と呼ばれるものです。

さまざまな腰椎の疾患に使用されています。軟部組織(骨ではない部分)に圧迫を加え、腹圧を高めて脊柱運動を制限します。

硬性・ウィリアム型・フレクション型・ナイト型装具
腰部の屈曲、伸展、側屈、回旋、前彎などを制限する目的のための装具です。

〇硬性
プラスチックで型採りされたタイプで軽量、固定力にも優れ、着脱が容易な工夫がされたもの。

〇ウィリアム型
金属フレームまたはプラスチックフレームでつくられた固定力の強いもの。側方の支柱には継手が付いており、後方の金属枠フレームは可動するようになっています。前方の腹部前当てを締めつけると後方のフレームが前方に引き寄せられ腰仙椎を屈曲位に矯正し、伸展は制限されます。

〇フレクション型
胸骨や恥骨のパッドをフレームで連結した3点支持タイプ。側方支柱にクレンザック継手が付いており、バネによって腰仙椎の屈曲方向に矯正が働き、伸展を制限します。

〇ナイト型
後部を金属で前部は軟性素材でつくられたタイプ

腰椎装具|フクイ株式会社HPより抜粋

腰仙装具・コルセットは着用する意味があるのか。

まず、コルセット着用の効果についてです。

保存療法→コルセットの着用の流れが主だとは思いますが、果たしてそれは本当に効果的でしょうか?
コルセット着用が何に利点があるのかを含めて、下記の論文を見ていきます。

 

・圧迫骨折の治療において、装具を使用しない場合のオスウェストリー障害指数のスコアは、軟性装具や硬性装具を使用した場合のスコアと比較して劣ることはなかった。さらに,腰痛の改善度や前躯体圧迫の進行度は3群間で同様であった.

Ho-Joong Kim, et al:Comparative study of the treatment outcomes of osteoporotic compression fractures without neurologic injury using a rigid brace, a soft brace, and no brace: a prospective randomized controlled non-inferiority trial

・Th10~L2までの骨折レベルの患者において、急性脊椎圧迫骨折に対する12週間の硬性装具治療は、48週間の軟性装具治療よりも、脊椎変形の予防、QOLの向上、または腰痛の軽減に統計的に優れていないことがわかった。したがって、急性脊椎圧迫骨折のためのオーダーメイドの硬性装具の日常的な使用は効果的ではない。

Tsuyoshi Kato,et al:Comparison of Rigid and Soft-Brace Treatments for Acute Osteoporotic Vertebral Compression Fracture: A Prospective, Randomized, Multicenter Study

 

これらの論文を見る限り、コルセット着用によってもたらされる効果は大きくはないようですね。。

 

患者個人によって着用期間は異なるが、3か月は着用すべき

 

 

一方で、上記研究では以下のことも考察・報告しています。

その他の研究にて
S Takahashiらが行った多施設コホート研究では、患者の19.6%が6か月で骨癒合を達成しなかったと報告されている。
安田浩幸らの前向き研究では、新鮮な圧迫骨折の13.6%が、6か月のフォローアップで結合の遅延をもたらしたことが示された。


創外固定を解除すると、特に遅発性癒合患者では前椎体圧迫率(AVBCP)が悪化する。実際、この研究ではAVBCPが12週間から24週間に大幅に減少し、12週間の均一な装着期間では不十分である可能性があることを示唆している。

この結果に基づいて、さらなる脊椎変形を防ぐために、装具治療期間は、12週間未満ではなく、骨癒合が確認されるまで個別に決定することを勧める。

ただし、さらなる脊椎変形を防ぐための適切な装具期間はまだ特定されておらず、これに関しては今後も研究が必要。

この点において、
コルセットは椎体のさらなる悪化を予防する上で、一定の役割を果たしてくれそうです。

ただし、その装着期間は個人差があるため、変更が必要です。

上記記事にでてきたODIとは何かご存知ですか?知っている方は読み飛ばしてください。

オウェストリー障害指数(Oswestry Disability Index:ODI) 日本語版について

詳細はこちら

・腰痛疾患に対する疾患特異的評価法のひとつ。
・ODIは10のセクションから満点合計50点で割り、%表現で評価。

・重症度が増すほどODIスコアは高くなる。

腰仙装具・コルセットは体幹筋力を低下・弱化させるか。

ここが理学療法士にとって、患者さんにとって気になる部分です。

コルセットで固定していると、体幹の動きが抑制され、筋萎縮や筋力低下が進んでしまうのではないか。
そう思うと思います。

では実際、その分野での研究論文の結論を見ていきます。

 

・1〜6ヶ月の着用期間でも筋出力の低下させる決定的な因子は認めていない。しかし、研究の質は低いため、より研究が必要。

Hiroshi Takasaki,et al : The impact of continuous use of lumbosacral orthoses on trunk motor performance: a systematic review with meta-analysis

・腰仙装具を着用した状態で、体幹筋の筋電図に対するパラーメータの減少や変化を認めなかった。

Fatemeh Azadinia , et al : Can lumbosacral orthoses cause trunk muscle weakness? A systematic review of literature

これらの論文を見る限りでは、体幹筋への影響は少ない印象です。

患者さんにはコルセット着用を勧めましょう。

では、理学療法で実施する体幹筋力訓練は圧迫骨折に対して効果をもたらすんでしょうか?
これも装具着用と同時に気になるところです。

腰仙装具・コルセットと体幹筋力訓練の併用は効果があるか。

・装具+筋力訓練によって腰部の安定性が相加的に増す可能性がある。

Christian Larivière, et al : Maintaining Lumbar Spine Stability: A Study of the Specific and Combined Effects of Abdominal Activation and Lumbosacral Orthosis on Lumbar Intrinsic Stiffness

・研究の信頼性は低いが、骨粗鬆症性椎体骨折患者の管理として、運動と硬性装具の使用は、害のリスクを増加させることなく、痛みに対してわずかな効果をもたらす可能性がある。
また、運動群と運動なし群とを比較して有害性に差はなかった。

Karen Bolton, et al : Benefits and harms of non-surgical and non-pharmacological management of osteoporotic vertebral fractures: A systematic review and meta-analysis

 

これらの論文をみると、体幹筋を鍛える運動することは圧迫骨折患者さんに有効なようです。
装具+運動療法の実施は保存療法においてポイントになりますね。

結論

今回の論文から、腰仙装具を着用するメリットは明確になっているとは言い難いですが、
デメリットは少ないと感じたのではないでしょうか。

高齢者は、骨折以前から体幹筋は弱化しており、疼痛のある腰部を支えることは難しいです。
その点、コルセットは脊柱起立筋や多裂筋の筋緊張を緩和し、疼痛の誘発を防いでくれます。

 

体幹筋が弱化する影響もないことからも、
無理にコルセット使用期間を短くする必要性はなく、

患者さんの椎体の状況をみながら医師と理学療法士が連携をとり、
着脱時期を判断できたら患者さんの再骨折や椎体の変形を防ぐことができそうです。

 

今回は書けませんでしたが、
圧迫骨折をしている患者さんに対する体幹筋へのアプローチに関しては、

順次公開を予定しています。

ドローイングやブレーシング等、何気なく使いがちですが、メリットや注意点を含めてお伝えしますね。

 

 

 本記事の執筆・監修・編集

✅記事執筆・編集(てろろぐ

✅記事監修(幸代表

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参考文献

 腰仙装具・コルセットの着用意義に関する論文

Ho-Joong Kim, et al:Comparative study of the treatment outcomes of osteoporotic compression fractures without neurologic injury using a rigid brace, a soft brace, and no brace: a prospective randomized controlled non-inferiority trial

Tsuyoshi Kato,et al:Comparison of Rigid and Soft-Brace Treatments for Acute Osteoporotic Vertebral Compression Fracture: A Prospective, Randomized, Multicenter Study

 腰仙装具と体幹筋力弱化との因果関係に関する論文

Hiroshi Takasaki,et al : The impact of continuous use of lumbosacral orthoses on trunk motor performance: a systematic review with meta-analysis

Fatemeh Azadinia , et al : Can lumbosacral orthoses cause trunk muscle weakness? A systematic review of literature

 腰仙装具と体幹筋力訓練の併用に関する論文

Christian Larivière, et al : Maintaining Lumbar Spine Stability: A Study of the Specific and Combined Effects of Abdominal Activation and Lumbosacral Orthosis on Lumbar Intrinsic Stiffness

Karen Bolton, et al : Benefits and harms of non-surgical and non-pharmacological management of osteoporotic vertebral fractures: A systematic review and meta-analysis