股関節疾患でよくみられる前額面での跛行に、トレンデレンブルグ跛行とデュシャンヌ跛行があります。一般に、股関節外転筋力低下により患側立脚相で健側の骨盤が下制する現象をトレンデレンブルグ跛行、股関節外転筋力低下により患側立脚相で健側の骨盤が下制するのを防ぐために代償性に体幹を患側に傾けて平衡を保とうとする現象をデュシャンヌ跛行と理解されています。しかし、股関節外転筋力に問題が無くてもこれらのような跛行がみられる場合があります。今回は、MMTの結果と実際の現象との不一致から、「トレンデレンブルグ跛行とデュシャンヌ跛行の原因は本当に股関節外転筋力低下だけなのか?」という疑問について調べてみました。
考えられる他の原因
股関節内転可動域制限
股関節外転筋力は正常歩行群とデュシャンヌ跛行群において有意差は認めなれなかった¹⁾。
股関節内転角度は正常歩行群で有意に内転域が大きかった¹⁾。
股関節内転可動域の増大とともに跛行出現率が有意に低下した¹⁾。
また、デュシャンヌ跛行の原因を筋力の観点からみると、体幹を患側に傾けることは骨頭から重心線までの距離を短くし、弱い筋力で歩行する代償運動といえますが、股関節内転制限の場合は、骨盤が外方移動できない状態を体幹の側屈で相殺しているという反応と解釈されます。