TKA術後の症例を担当させて頂いた経験からの学び・悩み・疑問 Part3 新人セラピスト成長記録(回復期)#09

(公開日:2021年7月14日)

前回は画像所見から分かること、膝関節内側の疼痛について述べさせて頂きました。今回は引き続き膝関節内側の疼痛について述べたいと思います。

膝関節内側に疼痛が生じる要因

 

①下腿の回旋異常

 

膝関節内側に存在するMCL・鵞足・半膜様筋・腓腹筋内側頭などは、下腿外旋制動作用を有しています。そのため、下腿過外旋のアライメントを呈することで、これらの組織への伸張ストレスが増大します。

・原因(例)

下腿の内旋に作用する鵞足筋群や腓腹筋内側頭、半膜様筋の収縮不全により下腿を内旋させることができず、下腿の外旋を誘発してしまう。
下腿の外旋に作用する大腿二頭筋や腓腹筋外側頭の伸張性の低下により下腿を後外側に引き、過外旋位となりやすい。

・評価

私は主にQ-angleによる評価を実施します。方法は上前腸骨棘から膝蓋骨中央を結ぶ線と脛骨粗面から膝蓋骨中央を結ぶ線のなす角を測定します。正常値は男性が11.2±3.0°、女性が15.8±4.5°です。下腿外旋位となるとQ-angleが増加します。しかし、検者内信頼性・検者間信頼性が低いとの報告があり、私はその他の評価(回旋不安定性テスト、ダイアルテストなど)も実施し、判断する必要があると考えています。

荒井ら¹⁾は下腿外旋が大きいほどknee in toe outが大きくなるという運動連関があると報告しています。

山内²⁾は内側広筋の機能について、下腿外旋を制動する筋であると報告しています。Part1の術式(アプローチ)についての話でも内側広筋を切開することで膝関節伸展機能が低下すると述べました。その他にもTKAと内側広筋についての文献は数多くみられます。これらのことから内側広筋の評価や筋力強化はTKAのリハにて重要性が高いと考えられます。

 

 

②膝関節の外反不安定性

 

詳しくは前回の内容に執筆しています。

 

 

③膝関節の屈曲拘縮

 

膝関節の屈曲拘縮などにより伸展角度が減少した場合、膝関節の主要な静的安定化機構である靭帯は弛緩し、不安定性が増大します。

 

 

④股関節外転筋の筋力低下

 

歩行など単脚支持期となる動作では、股関節の回転中心である大腿骨頭に対して、身体重心が内側に位置します。そのため、股関節では外転・外旋モーメントが必要となります。これらの筋群の筋力低下により股関節外転・外旋位保持が困難になると、股関節は内転・内旋位を呈します。この股関節のアライメント異常によりメディアル・コラプスが出現し、膝関節内側に伸張ストレスが加わります。

メディアル・コラプスとは股関節の内転・内旋を伴う膝関節外反、下腿外旋が生じる現象のことをいいます。

 

本症例でもこの現象がみられ、股関節内転・内旋、膝関節外反、下腿外旋、足関節内反(下腿の内側傾斜)を呈していました。そのため、TKA術後だからといって、膝関節の機能ばかりに着目せず、その上下にある股関節や足関節も着目し、評価に基づき介入する必要があると学びました。

 

小林ら³⁾はknee in toe outに関係する筋力低下の代表的なものが股関節外転・外旋筋力であると報告しています。

 

 

まとめ

 

今回の内容でも膝関節内側の疼痛について執筆しました。また、股関節、足関節の機能評価も重要であると述べさせて頂きました。
そのため、次回は足関節・足部の機能障害について述べたいと思います。

 

【引用文献】

  1. 荒井 貴裕, 三秋 泰一:膝静的アライメントの違いによる片脚降下着地動作の運動学的分析, 理学療法学, 2012, 27: 657-660
  2. 山内 仁:内側広筋の筋収縮が膝蓋骨と下腿の運動に及ぼす影響. 近畿理学療法学術集会誌, 2005, 35: 27-28
  3. 小林 寛和, 宮下 浩二, 藤堂 庫治:スポーツ動作と安定性ー外傷発生に関係するスーツ動作の特徴からー, 関西理学, 2003, 3: 49-57

この記事は理学療法士が執筆・監修しています。