TKA術後の症例を担当させて頂いた経験からの学び・悩み・疑問 Part4 新人セラピスト成長記録(回復期)#10

(公開日:2021年8月14日)

前回は膝関節内側の疼痛について述べさせて頂きました。今回は足関節・足部の機能障害について述べたいと思います。

足底腱膜炎

足底腱膜は足部に体重が加わった際に足部に存在する3つのアーチを保持する作用を有しています。また、歩行の立脚期後半で踵が離床すると、足趾が伸展するため(MTP関節の伸展)、足底腱膜が巻き上げられ、前足部の剛性が高まります(windlass機構)。歩行や走行により足底腱膜は強いストレスを受けることになり、疼痛が惹起される状態を足底腱膜炎と呼びます。足底腱膜炎発症の危険因子として最も強く関与しているのは、①長時間の立ち仕事②肥満(BMI>30)③足関節の背屈制限、と報告されています。内側縦アーチの低下した偏平足では、足底腱膜が伸張されます。そのため、足底腱膜への伸張ストレスが増強し、疼痛が生じます。足関節の背屈制限が生じると、下腿を前傾させるために、代償的に足部のアーチを低下させて下腿を前傾させます。そのため、アーチの低下により足底腱膜に伸張ストレスが増強します。これらから足底腱膜炎⇔偏平足⇔足関節の背屈制限と捉えることが出来ます。

本症例の足関節・足部の問題点

視診・触診にて内側縦アーチの保持が低下しており(偏平足)、足底腱膜に圧痛があり、windlassテスト(足底腱膜の疼痛誘発テスト)も陽性でした。また、足関節背屈可動域制限もありました。本症例の歩行では内側縦アーチの保持低下から、舟状骨の沈降に伴う下腿の内側傾斜が生じていました。これは立脚期において下腿が内側傾斜することで膝関節の外反(knee in)を誘発していたとも考えました。また、Lafortuneら¹⁾は偏平足によりknee in toe outとなり、膝関節にも影響し鵞足炎や膝蓋靭帯炎などを引き起こすと報告しています。

Part1で少しお話しさせて頂いた、神経障害の話をここでもう少し詳しくお話させて頂きます。本症例では下腿から足部にかけて浮腫があり、痺れ、感覚障害、下腿から足部の筋力低下などが生じていたことから外側、浅後方、深後方区画のコンパートメント症候群も疑われました。機能低下していた領域から浅腓骨神経(長・短腓骨筋)、脛骨神経(下腿三頭筋、後脛骨筋、長母趾屈筋)、内側足底神経(短母趾屈筋、短趾屈筋、母趾外転筋)が関与していると考えました。

本症例において足趾屈筋群、下腿後面の筋群の筋力低下は著明であり、前足部での制御は著明に不良でした。足趾屈筋群、腓骨筋群の筋力低下は内外側縦アーチの保持低下の原因であると考えられます。また、腓腹筋の筋力低下が生じていると鵞足構成筋の過剰な収縮により下腿筋膜の緊張を増強させて、腓腹筋の筋力低下を代償します。そのため、鵞足構成筋の機能低下や鵞足付着部への伸張ストレスが増強し、鵞足炎を惹起すると考えられます。ちなみに鵞足部の圧痛は女性でBMIの高い症例に多いと報告されています。

 

まとめ

 

Part1から4にかけて術式(アプローチ)の特徴、画像所見、理学療法評価(機能障害)について執筆させて頂きました。そのため、ひとまずこれまでの問題点の要約を下記の画像で示したいと思います。

膝関節外反による膝関節内側裂隙の開大(谷埜²⁾は、膝関節内側裂隙の開大に対して半膜様筋は強力な安定作用を提供すると報告しています。については詳しくお話できていませんが、ひとまず一区切りとし、次回からはこれらの問題点の改善に向けた理学療法アプローチの話をさせて頂きたいと思います。

 

【引用文献】

  1. Lafortune MA, Cavanagh PR, Sommer III HJ, et al.:Foot inver- sion-eversion and knee kinematics during walking. J Orthop Res, 1994, 12: 412-420.
  2. 谷埜 予士次:膝関節不安定性に対する理学療法を考える. 関西理学, 2006, 6: 27-30

この記事は理学療法士が執筆・監修しています。